魔獣の姫に黒の騎士

鈴紐屋 小説:恋川春撒 絵・漫画:せつ

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サナリア・アルテミナとリリィ・ブラック1

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サナリアは眠りにつく前、目覚める時はきっと一人ぼっちになっているだろうと思っていた。
何せ、自分が今夜作った悪夢は史上最低の魔法だ。
毎日文字通り死物狂いで戦って、必死に生きている者達に戦争に関する悪夢を見せるなんて、酷いにも程がる。グイネバルドに今夜眠る全ての大人に繰り返し自分の犯して来た罪の記憶を場所を変え、品を変え本人に見せ続けたのだ。
悪趣味もここに極まれりと言われても何も言い返せない。
しかし、これはリリィが魔導士になった時から決めていた事でもあったのだ。
もしも毎年行われるパレードに引っ張りだされる様な事があって、もし、あげく魔道部代表なんかさせられて、もしラストのイリュージョンまで担当させられる様な事が起きたら、この、無駄な争いばかりに夢中になって、互いの幸せの足を引っ張る所か自ら不幸のぬるま湯にどっぷり浸かって、戦争にばかり夢中になっているグイネバルド全国民にとっておきのナイトメアを見てもらう。自分も含め、例外は作らない、魔王死んでからのこの三百年余り、自分達のメンツばかり気にして碌々国土の回復も行わなわず、戦争に明け暮れている国なんて世界広しと云えどもこのグイネバルドだけだ。
国民の視野は狭まり、自分達以外の全てを駆逐する事が己がなすべき事だと勘違いしている。一度、他の世界を見てみれば良いのだ。
権力の強い者の思惑に踊らされ、本当は必要の無い戦いをしている事に気が着いた方が良い。
思想が違う他者を殺す以外に他にも道は有る事を、上意に従いながらも誰かを殺さずに済む方法は有るのだという事を、思いつける視野を持つ切っ掛けを与えたかった。
サナリアの作った悪夢は、本人の経験や心理状態に連動して多少内容が変わる様に作ってある。
リリィはウロボロスの武闘部門、しかも最も過酷な作戦を担う事の多い第一騎士団団長だ。
きっと今夜みた悪夢は相当のものだっただろう。『もしかしたら愛想尽かされるかもしれないな。』とも思っていた。
しかし、予想に反して、目覚めた時サナリアはガルゴリリィの腕の中で身が覚めた。
まるで西北の国の百年眠った姫君のおとぎ話みたいに、目が覚めたら目の前に黒豹の、茶金の瞳と目が合った。
とたんに勢い良く抱き込まれる。
見ると大人四人は軽く寝転がれそうな位大きなベットに沈められていた。
眠る前はリリィの執務室に居た筈だが・・・。
・・・おゃ?と周辺を見まわそうとした顔を両手で包まれ貪る様な口づけをされた。
唇と何度も食まれ、大きな舌が口内を余す所なく舐めまわす。上顎は殊更丹念に嬲られた。
「んっ、んっ、リリィ・・・ちょっ激し。」
抗おうと両腕を上げようとして、思う様に体が動かない事を自覚し首を傾げた。
理由は直ぐに判明した。
「こっの!一月ひとつき以上も眠りこけやがって!」
サナリアは何の作用か、一人悪夢から目覚める事は無く、昏々と一月以上も眠り続け、体が萎えてしまっていたのだ。
リリィの手が、サナリアの全てを確かめる様に体中を張っていく、萎えた四肢では第一騎士団の剛腕に叶うハズも無く、全身を撫でさすり、おかしな所は無いか確かめるリリィの手を受け入れるしか無かった。
サナリアの体を確かめる腕は繰り返し撫で、サナリアの無事を確かめる度に次第に色味を増し始め、その内すっかり愛撫に変わった。
「リリィ、私はどの位眠って?」
「一体どんな悪夢を見ていたんだ、約一月半だぞ。日に何度もうなされて、見てる俺は気が気じゃ無かった。」
キスと愛撫で高まった体の胸の尖りを大きな指が周囲をクルクルと撫でて焦らしてから優しく摘まんで硬くなった粒の先を撫でる。
サナリアの下腹部に期待と熱がわだかまって下枝に力が籠り始めた。
「ここ・・・どこ?」
「俺の部屋。どこか痛みの有る所は無いか?床ずれ等起きない様に気を付けた筈だが・・・。自身で寝返りは打ってたしな。」
太腿を跨ぐリリィの中心も又、熱を持ち始めていた。
「とくには、・・・・しかし、私、寝起きなんですけど・・・しかも悪夢から覚めたばかりで・・・。」
「だから、だろ。男なら、あんなやべぇ夢見た後なんて、たっぷり可愛がって欲しいだろ?。」
否定はしない、しかし
「体が思う様に動きません。」
「任せろ、この一月半アンタの全ての面倒を見たのは俺だ。むしろ一月半分の頑張りのご褒美を強請りたい位だな。」
サナリアは真っ赤になって形ばかりの抗いを捨て観念した。


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