74 / 124
サナリアの悪夢12
しおりを挟む
短く刈り上げた頭に、ヘルムをかぶり直して隠れていた所から出て行った。
物心つく前から一際しっかりと教え込まれた幻術を使い、通路の奥に身を隠す。しかし、どのくらい身を隠せば良いのだろう。持っている食料はそう多くない、自分を連れ出したと言う事は、城はもう落ちたも同然なのだろう、今回無事命が助かったとして、自分に帰る国は有るのだろうか?不安と恐怖の中一晩過ごした次の日の昼頃の事だった。
通路の入り口が開いた。
入り口に見えたのはやけに大きな影だった。
右手に大きな大剣を下げ、左手には何か円い物を下げている。ちょうど人の頭くらいの大きさだなと思った。
瞬間的にあの出て行った兵士ではないし、自国の兵士でもないと思った。
理由は分からない、自国民にしてはやけに大きすぎる体格のせいなのか、この国の王子を迎えに来た癖に大剣を剥き出しにして握り締めていた所か、出口に佇んでいるのに自分の名前を呼ばないせいなのか・・・。
左手にぶら下がる不吉な円い影のせいなのか・・・・。
とにかく、見方と断定出きるまで隠れている事にした。
ガチャリ、と音を立てて影が又一歩近付いてくる。
確信した、アレは敵兵だ。
自国の兵は足首までは金物の防具は着けない習慣なのだ。
隣国と比較して華奢な体格のこの国の民は、体格のがっしりした兵士達ですら、隣国に比べると力で負ける、防御力よりも少しでも身軽になって俊敏さを活かした方が肉弾戦になった時の勝率が高いからだ。
では、あの左手にぶら下げられている物は・・・。
悪い予感で自分の体が充ちた。
間違っても叫んだりしない様に自分の声を封じた。
大きな影はガチャリガチャリと音を立てながら段々近づいて来る、その内左手に持っていた物をランタンで前を照らす時の様に前方に突き出し始めた。
必死に気配を消した。
見ない方が良い、見ない方が良いと分かっていながらも視線はその左手の持つ物の方に行ってしまう。
逃げ隠れしている時に一番の下手だと分かっていながらも、とうとう目を瞑ってしまった。
どうせ、気付かれていたらもう自分の足じゃ逃げ切れないという思いも有ったかも知れない。
しかし、入ってきた大きな影が自分の前でピタリと止まり、
「厳重に隠しているからてっきり隠し通路かと思ったが、唯の猟師の洞窟を利用した山小屋代わりだったか。」
っと言った時、つい目を開けた。
開けた先には、予感通り、短く狩り上げたあの兵士の生首が釣る下がっていた。
首と、目が合った。
ここで見つかったら確実に殺される。必死に声も息すらも殺したが、涙だけは止められなかった。
影が出て行った後もその場に固まったまま、日が沈むまで身動き一つ出来なかった。
夜空が満点の星で満杯になりなる頃には、通路の中には一点の光も無くなり、自分の心と一緒に闇で満たされた。
殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる。
母を、自分を助けてくれた兵士を殺したあの男を絶対自分の手で殺してやる。そう決めて子供は丸二年、そのままその通路に隠れ住んだ。
物心つく前から一際しっかりと教え込まれた幻術を使い、通路の奥に身を隠す。しかし、どのくらい身を隠せば良いのだろう。持っている食料はそう多くない、自分を連れ出したと言う事は、城はもう落ちたも同然なのだろう、今回無事命が助かったとして、自分に帰る国は有るのだろうか?不安と恐怖の中一晩過ごした次の日の昼頃の事だった。
通路の入り口が開いた。
入り口に見えたのはやけに大きな影だった。
右手に大きな大剣を下げ、左手には何か円い物を下げている。ちょうど人の頭くらいの大きさだなと思った。
瞬間的にあの出て行った兵士ではないし、自国の兵士でもないと思った。
理由は分からない、自国民にしてはやけに大きすぎる体格のせいなのか、この国の王子を迎えに来た癖に大剣を剥き出しにして握り締めていた所か、出口に佇んでいるのに自分の名前を呼ばないせいなのか・・・。
左手にぶら下がる不吉な円い影のせいなのか・・・・。
とにかく、見方と断定出きるまで隠れている事にした。
ガチャリ、と音を立てて影が又一歩近付いてくる。
確信した、アレは敵兵だ。
自国の兵は足首までは金物の防具は着けない習慣なのだ。
隣国と比較して華奢な体格のこの国の民は、体格のがっしりした兵士達ですら、隣国に比べると力で負ける、防御力よりも少しでも身軽になって俊敏さを活かした方が肉弾戦になった時の勝率が高いからだ。
では、あの左手にぶら下げられている物は・・・。
悪い予感で自分の体が充ちた。
間違っても叫んだりしない様に自分の声を封じた。
大きな影はガチャリガチャリと音を立てながら段々近づいて来る、その内左手に持っていた物をランタンで前を照らす時の様に前方に突き出し始めた。
必死に気配を消した。
見ない方が良い、見ない方が良いと分かっていながらも視線はその左手の持つ物の方に行ってしまう。
逃げ隠れしている時に一番の下手だと分かっていながらも、とうとう目を瞑ってしまった。
どうせ、気付かれていたらもう自分の足じゃ逃げ切れないという思いも有ったかも知れない。
しかし、入ってきた大きな影が自分の前でピタリと止まり、
「厳重に隠しているからてっきり隠し通路かと思ったが、唯の猟師の洞窟を利用した山小屋代わりだったか。」
っと言った時、つい目を開けた。
開けた先には、予感通り、短く狩り上げたあの兵士の生首が釣る下がっていた。
首と、目が合った。
ここで見つかったら確実に殺される。必死に声も息すらも殺したが、涙だけは止められなかった。
影が出て行った後もその場に固まったまま、日が沈むまで身動き一つ出来なかった。
夜空が満点の星で満杯になりなる頃には、通路の中には一点の光も無くなり、自分の心と一緒に闇で満たされた。
殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる。
母を、自分を助けてくれた兵士を殺したあの男を絶対自分の手で殺してやる。そう決めて子供は丸二年、そのままその通路に隠れ住んだ。
10
お気に入りに追加
323
あなたにおすすめの小説
【完結】帝国滅亡の『大災厄』、飼い始めました
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
大陸を制覇し、全盛を極めたアティン帝国を一夜にして滅ぼした『大災厄』―――正体のわからぬ大災害の話は、御伽噺として世に広まっていた。
うっかり『大災厄』の正体を知った魔術師――ルリアージェ――は、大陸9つの国のうち、3つの国から追われることになる。逃亡生活の邪魔にしかならない絶世の美形を連れた彼女は、徐々に覇権争いに巻き込まれていく。
まさか『大災厄』を飼うことになるなんて―――。
真面目なようで、不真面目なファンタジーが今始まる!
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
※2022/05/13 第10回ネット小説大賞、一次選考通過
※2019年春、エブリスタ長編ファンタジー特集に選ばれました(o´-ω-)o)ペコッ

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
召喚勇者はにげだした
大島Q太
BL
俺は幼馴染との事件をきっかけにひきこもっていた。そこを腐った女神に拾われて強制的にBLゲームの世界に飛ばされた。現代っ子の俺が勇者なんて聞いてない。すぐさま逃げるを選択して、チートと加護でまったりひきこもりスローライフ。オッケー魔導書《グリモワール》異世界の生き抜き方! 聖剣でインフラを整えつつ。扶養家族ドラゴンを拾ったり。聖騎士がヒモになったり。落ち込んだりもするけれど、俺は元気です。

【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる