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パレード12
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その名を、その名を呼ぶのは世界に一人だけしかいない。
だってあの人は人前では殆ど自分が与えた名を呼ばなかった。
呼ぶ必要が無かったから。
小さなリリィは決してサナリアの傍を離れる事が無かったから。聞こえて来た声は、忘れもしない、ガルゴが探している魔道士の声、
「魔道士・・・」
震える指を子供に伸ばす。揺れる紅の髪が、伸ばされたガルゴの指先に触れた様に見えたが、髪はガルゴの指先を通り抜けてしまった。
「映像魔法・・・」
よく見ると子供の姿はほんの少し、端々が透けていた。
これは映像魔術の一種だ。
相当、高度な術ではあるが。
通常、映像魔術、総じてイリュージョンと呼ばれているが、映像を映し出す物が必要になる、一番簡易的な物は白いカベや床で、白い布等の時もある。平面に映し出すタイプの物だ。
その一段階上になるのが水晶球や桶に張った水等に立体的に映し出す映像魔法。
完全に無の空間に立体映像を映し出すのは非常に難しいと言われている。
ガルゴは専門家では無いので分からないが。
目の前に生み出された立体映像を作った者は相当な凄腕なのだろう。
しかし、ガルゴにはそんな事どうでも良かった。
命を掛けて、探していた人物の姿をガルゴは初めて見た。
見つからない筈だ。
ずっと自分よりも十以上も年上の女性か、余程線の細い男性なのだと思っていた。
こんな小さな子供だったのか。
高く澄んだボーイソプラノはプリプリと怒ったフリをして辺りを睨みつけている。
「全く、誰だい?!そんな酷い事をするのは!?許さないよ!この子は僕の宝物なんだから!イジメちゃダメだよ!」
その、子供には大きめの、黒いローブがガルゴの記憶の理由を語る。
全て、この人の記憶だったのか、と。
子供はちょっと前かがみになり辺りをもう一度見まわしたあと。
くるりと振り返った。
腰まで有る長い紅の髪がサラリと揺れた。
ガルゴの瞳がドクリと高鳴り、息が詰まった。
見覚えの有る顔だった。
白い陶器の様な肌、血液が染み出て来たかの様な薄紅の唇、将来さぞや色っぽい美人になるであろう事が、簡単に予想出来る切れ長の二重の目、深紅のまつ毛、気の強そうなキラキラと光る深緑の瞳、その特徴は、ここグイネバルドではそうそう居る特徴ではない、何より面影が有る。この子供の将来をガルゴは知っている。見ている。イヤ、愛している。喉が詰まる。上手く息が出来ない。震える声で、それでも絞り出す様にその名を呼んだ。
「――――――サナリア。」
小さな魔道士は一歩ガルゴに歩み寄った。
「元気だったかい?僕のリリィ。リリィ・ブラック」
「お前だったのか・・・・サナリア!!」
小さなサナリアは、今までガルゴが見たことも無い、人懐っこい笑みを浮かべてニコリと笑った。
だってあの人は人前では殆ど自分が与えた名を呼ばなかった。
呼ぶ必要が無かったから。
小さなリリィは決してサナリアの傍を離れる事が無かったから。聞こえて来た声は、忘れもしない、ガルゴが探している魔道士の声、
「魔道士・・・」
震える指を子供に伸ばす。揺れる紅の髪が、伸ばされたガルゴの指先に触れた様に見えたが、髪はガルゴの指先を通り抜けてしまった。
「映像魔法・・・」
よく見ると子供の姿はほんの少し、端々が透けていた。
これは映像魔術の一種だ。
相当、高度な術ではあるが。
通常、映像魔術、総じてイリュージョンと呼ばれているが、映像を映し出す物が必要になる、一番簡易的な物は白いカベや床で、白い布等の時もある。平面に映し出すタイプの物だ。
その一段階上になるのが水晶球や桶に張った水等に立体的に映し出す映像魔法。
完全に無の空間に立体映像を映し出すのは非常に難しいと言われている。
ガルゴは専門家では無いので分からないが。
目の前に生み出された立体映像を作った者は相当な凄腕なのだろう。
しかし、ガルゴにはそんな事どうでも良かった。
命を掛けて、探していた人物の姿をガルゴは初めて見た。
見つからない筈だ。
ずっと自分よりも十以上も年上の女性か、余程線の細い男性なのだと思っていた。
こんな小さな子供だったのか。
高く澄んだボーイソプラノはプリプリと怒ったフリをして辺りを睨みつけている。
「全く、誰だい?!そんな酷い事をするのは!?許さないよ!この子は僕の宝物なんだから!イジメちゃダメだよ!」
その、子供には大きめの、黒いローブがガルゴの記憶の理由を語る。
全て、この人の記憶だったのか、と。
子供はちょっと前かがみになり辺りをもう一度見まわしたあと。
くるりと振り返った。
腰まで有る長い紅の髪がサラリと揺れた。
ガルゴの瞳がドクリと高鳴り、息が詰まった。
見覚えの有る顔だった。
白い陶器の様な肌、血液が染み出て来たかの様な薄紅の唇、将来さぞや色っぽい美人になるであろう事が、簡単に予想出来る切れ長の二重の目、深紅のまつ毛、気の強そうなキラキラと光る深緑の瞳、その特徴は、ここグイネバルドではそうそう居る特徴ではない、何より面影が有る。この子供の将来をガルゴは知っている。見ている。イヤ、愛している。喉が詰まる。上手く息が出来ない。震える声で、それでも絞り出す様にその名を呼んだ。
「――――――サナリア。」
小さな魔道士は一歩ガルゴに歩み寄った。
「元気だったかい?僕のリリィ。リリィ・ブラック」
「お前だったのか・・・・サナリア!!」
小さなサナリアは、今までガルゴが見たことも無い、人懐っこい笑みを浮かべてニコリと笑った。
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