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サナリアの現在の研究魔獣7
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サナリアは自分が相手にとって好ましいくない態度をとっている自覚がある、間違っても、猫科の獣人にこうも気安くポンポン腹を触らせてくれる様な、親しみを持たれる態度では無かったはずだ。
一体どんな魂胆があるのかと勘繰った。
「見返りに、何を要求するつもりですか?。」
「そんなモノ要求しねぇよ。」
「・・・・信用できませんね。遠慮しておきます。」
『タダより恐い物は無い』とは世界の常識であるとサナリアは知っていた。
「疑り深いな、悪い事じゃねぇが、アレか?アルテミナ研究員はかなり戦闘も出来そうだし、ウチの者と一緒で撃ち合いとかの方がストレス発散になるか?良いぞ?組手位ならテーブル寄せりゃ出来るだろ。」
是が被でも何かしたいらしいガルゴの様子に観念して、サナリアは
「お腹の毛を触る方で良いです。」
と言って、ガルゴの横に腰を掛け、腹に手を伸ばした。
やはり、ガルゴの毛並みは本当に極上の手触りだった。
「借りを作るのは好みません、その内お礼はいたします。」
そういうと。
「別にいらねぇって言ってるのに・・・・そうだな、その内、アレだ、その内で良んだけどよ。もし嫌で無かったら、その・・・ゴーグルの下の素顔を見てみてぇ。」
「素顔?。」
「元カレは見てるんだろ?、何か妬けるじゃねぇか。」
「意味がわかりません。」
「俺ァ、アンタともっと仲良くなりてぇんだよ。」
「?、余計、意味が分かりません。」
サナリアは嫌そうに顔を顰めたが、ゴーグルに関しては別に隠している訳でもないので、取って見せた。
露わになるのは紅のまつ毛に縁どられた、深く艶やかな深緑の瞳。
轟く雷鳴と共に走る稲光に照らされて、キラリ、キラリと宝石の様に輝く瞳がヒタとガルゴを見つめ返した。
紅のまつ毛がゆっくりと上下して、瞬きを一度する。
ガルゴの両目が見開かれ、口が驚いた様に緩く開閉する。
ガルゴは一言、絞り出す様な声で
「おぅ・・・・。」
とだけ、声を漏らした。
「何ですかソレ。」
「あぁ・・・うん。満足した。ホラ、お前疲れてるぞ、俺が見張っといてやるから少し寝とけ。」
疲れているだろうと言って引き寄せられても抗わず、そのままその柔らかい毛皮に身を埋める。
祭りの為に戦が止まってる上に、ウロボロスの守るこの町で、ガーゴイルすら一人で狩れる自分に一体どんな危険が?と思ったが言わずにおいた。
温もりに、何故かほっとした。
一つ深呼吸すると、微かに干し藁の様な良い匂いがした。
ふと、ガルゴの首飾りに目が行く、出会った時からガルゴが肌身離さず着けている唯一つのアクセサリーだ。
しかしそれは、よく見ると体を売ってる者達が内臓破裂等から身を守る為の、昔サナリアが作った腰飾り型の魔道具だった。
鎖の輪に両足をそれぞれ通して、腰で金具を止めると、魔法陣のメダルが丁度下腹辺りに来る様に作ってある。
いわゆる『ネコ』、受け入れる側の為の魔道具だ。
ガルゴはどう見ても『ネコ』には見えないし、第一ガルゴの体じゃサイズが合わない。
という事は、自分の相手に使わせる為に付けている、という事だろうとサナリアは予想した。
「貴方、物騒な物を着けていらっしゃいますね。何ですか?発情期用ですか?」
ガルゴの発情期時の酷い噂はサナリアの耳にも届いていた。
「何だ、お前も知ってたのかその噂。最初はその時のお守りのつもりで買ったんだが、その目的では使った事がねぇな。その代わり、コレには戦場で何人もの部下の命を救われたよ。アンタすげぇな。」
そう礼を言われて、そんな使い方も有ったのかと、逆にサナリアが驚いた。
「アンタの魔法は優しいな。」
ガルゴの腕がサナリアの背中に回りそっと宥める様に撫でている。
「それは魔法じゃなくて魔道具です。魔道具は唯の道具です。持ち主次第でしょう。」
サナリアは、何故か自分の背中を撫でるガルゴの手を嫌だとは思わなかった。
むしろ心地良いとさえ感じていた。
「それでもさ、作者の色というか癖みないなモンは出るだろ、この魔法陣を組んだのはアルテミナ研究員、アンタだ。この魔法陣が発動する度に感じたよ。優しいヤツが作った魔法だなって。」
ガルゴの体温に温められて、サナリアがウツラウツラとし始めた。
「サナリア?」
優しく響く低い声が眠気を誘う。
「しりま・・・・せん・・・・そんなの・・ただの・・・てなぐ・・さみ」
ガルゴがそっと自分のローブでサナリアを包む頃には、もうサナリアは夢の中に居て気が着かなかった。
『黒い悪魔』とまで言われる男の両目にどれだけ優しい光がその時宿っていたかを・・・・・。
◆
一体どんな魂胆があるのかと勘繰った。
「見返りに、何を要求するつもりですか?。」
「そんなモノ要求しねぇよ。」
「・・・・信用できませんね。遠慮しておきます。」
『タダより恐い物は無い』とは世界の常識であるとサナリアは知っていた。
「疑り深いな、悪い事じゃねぇが、アレか?アルテミナ研究員はかなり戦闘も出来そうだし、ウチの者と一緒で撃ち合いとかの方がストレス発散になるか?良いぞ?組手位ならテーブル寄せりゃ出来るだろ。」
是が被でも何かしたいらしいガルゴの様子に観念して、サナリアは
「お腹の毛を触る方で良いです。」
と言って、ガルゴの横に腰を掛け、腹に手を伸ばした。
やはり、ガルゴの毛並みは本当に極上の手触りだった。
「借りを作るのは好みません、その内お礼はいたします。」
そういうと。
「別にいらねぇって言ってるのに・・・・そうだな、その内、アレだ、その内で良んだけどよ。もし嫌で無かったら、その・・・ゴーグルの下の素顔を見てみてぇ。」
「素顔?。」
「元カレは見てるんだろ?、何か妬けるじゃねぇか。」
「意味がわかりません。」
「俺ァ、アンタともっと仲良くなりてぇんだよ。」
「?、余計、意味が分かりません。」
サナリアは嫌そうに顔を顰めたが、ゴーグルに関しては別に隠している訳でもないので、取って見せた。
露わになるのは紅のまつ毛に縁どられた、深く艶やかな深緑の瞳。
轟く雷鳴と共に走る稲光に照らされて、キラリ、キラリと宝石の様に輝く瞳がヒタとガルゴを見つめ返した。
紅のまつ毛がゆっくりと上下して、瞬きを一度する。
ガルゴの両目が見開かれ、口が驚いた様に緩く開閉する。
ガルゴは一言、絞り出す様な声で
「おぅ・・・・。」
とだけ、声を漏らした。
「何ですかソレ。」
「あぁ・・・うん。満足した。ホラ、お前疲れてるぞ、俺が見張っといてやるから少し寝とけ。」
疲れているだろうと言って引き寄せられても抗わず、そのままその柔らかい毛皮に身を埋める。
祭りの為に戦が止まってる上に、ウロボロスの守るこの町で、ガーゴイルすら一人で狩れる自分に一体どんな危険が?と思ったが言わずにおいた。
温もりに、何故かほっとした。
一つ深呼吸すると、微かに干し藁の様な良い匂いがした。
ふと、ガルゴの首飾りに目が行く、出会った時からガルゴが肌身離さず着けている唯一つのアクセサリーだ。
しかしそれは、よく見ると体を売ってる者達が内臓破裂等から身を守る為の、昔サナリアが作った腰飾り型の魔道具だった。
鎖の輪に両足をそれぞれ通して、腰で金具を止めると、魔法陣のメダルが丁度下腹辺りに来る様に作ってある。
いわゆる『ネコ』、受け入れる側の為の魔道具だ。
ガルゴはどう見ても『ネコ』には見えないし、第一ガルゴの体じゃサイズが合わない。
という事は、自分の相手に使わせる為に付けている、という事だろうとサナリアは予想した。
「貴方、物騒な物を着けていらっしゃいますね。何ですか?発情期用ですか?」
ガルゴの発情期時の酷い噂はサナリアの耳にも届いていた。
「何だ、お前も知ってたのかその噂。最初はその時のお守りのつもりで買ったんだが、その目的では使った事がねぇな。その代わり、コレには戦場で何人もの部下の命を救われたよ。アンタすげぇな。」
そう礼を言われて、そんな使い方も有ったのかと、逆にサナリアが驚いた。
「アンタの魔法は優しいな。」
ガルゴの腕がサナリアの背中に回りそっと宥める様に撫でている。
「それは魔法じゃなくて魔道具です。魔道具は唯の道具です。持ち主次第でしょう。」
サナリアは、何故か自分の背中を撫でるガルゴの手を嫌だとは思わなかった。
むしろ心地良いとさえ感じていた。
「それでもさ、作者の色というか癖みないなモンは出るだろ、この魔法陣を組んだのはアルテミナ研究員、アンタだ。この魔法陣が発動する度に感じたよ。優しいヤツが作った魔法だなって。」
ガルゴの体温に温められて、サナリアがウツラウツラとし始めた。
「サナリア?」
優しく響く低い声が眠気を誘う。
「しりま・・・・せん・・・・そんなの・・ただの・・・てなぐ・・さみ」
ガルゴがそっと自分のローブでサナリアを包む頃には、もうサナリアは夢の中に居て気が着かなかった。
『黒い悪魔』とまで言われる男の両目にどれだけ優しい光がその時宿っていたかを・・・・・。
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