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黒豹の腹の毛は6
しおりを挟むガルゴの腹に顔を埋めたまま喋るサナリアの声がガルゴの体に直接響く。
「なんでもっ、ねぇ!」
こみ上げる何かを必死に抑えながら、何故かサナリアがこの行為を止めない様にと必死でガルゴは身じろぎすらせず耐えていた。
苦しい体制でガルゴの背骨の数を数えていたサナリアが『ふーっ』っと一つ大きなため息を着いた。
ジワリ、とサナリアのついた溜息がガルゴの腹筋を温める。
ガルゴの頭の中はサナリアの朱い髪とサナリアの匂いとサナリアから与えられる感触でグルグルになっていた。
「・・・・っ」
ついに我慢できずにガルゴの体がピクリと跳ねてしまった。
振動で唇から血が一つポタリとサナリアの肩に落ちる。
それに気が着いたサナリアが『ん?』っと上を見た。
「何だ団長殿、怪我をしているなら言って下さい。まったく・・・あの程度の蹴りで・・・・」
あの程度の蹴りとか言っているが、先ほどのサナリアの蹴りは相当の物だった。
流石は普段単独で森に出入りしているだけの事は有る。
ガルゴの触診を中断して、血が出ている口に手を添える。
「噛みしめていないで口を開けてくれませんか?」
「ん?あぁ・・・」
ガパリと大きな口を開けると割と大きな傷があってドロリと結構な量の血が垂れて来た。
それを平然と自分の衣服で受け止める。
「おぁっ!?すっ、すまん。服が」
「別にこの服に執着は無い、この血はサンプルとして頂くが。」
「・・・・・・。」
そう言いながら、何やらサナリアがモゴモゴと唱えるとガルゴの口の周りに小さな光る魔法陣が浮かび上がった。
むず痒い様な感覚がして、五秒後くらいには痛みも無くなっていた。
ガルゴが己の舌で口内を確かめると、傷は全く無くなっていった。
「今日じゃ無くても良いが唾液交じりではなくてちゃんとした採血もさせていただけると有難い。」
そう言って、サナリアは、起ち上がり佇まいを直すと、
「では今日は失礼する。」
「検分はもう良いのか?」
「さすがに、下半身をはここでは無理でしょう。」
「・・・・まぁ・・・・・。」
下半身とはどこまでの部分を指すのだろうか。
「ナカナカに貴重な、検体を拝見させて頂いた。まぁ先ほどの無礼はこれで流そう。検分した事を資料として早く書き起こしたいので何か用が有るなら明日以降にしてください。・・・・・言って置きますが。研究室のソファーの使用料は負けませんからね。」
そう言って、さっさと着乱れたガルゴを置いて食堂を出て行ってしまった。
「出禁にはしないんだ・・・・・。」
ガルゴが呆気にとられてサナリアの出て行った方向を見つめていると。
「凄い見世物になっていましたよ。」
人垣をかき分け、やっとライジとイスタがガルゴの所にやってきた。
「ガルゴ団長?どこか悪い所でも?」
イリアが蹲るガルゴを覗き込むとガルゴが一応小さな声で今自分が何故起ち上がらないのか端的に説明する。
「 」
「はぁ!?」
うはははははははっはっっと一頻り笑った後、納まらない自身の一物を膝をたててごま化しながらそれでも言った。
「俺は今日生まれて初めて雑種に生まれて良かったと思ったよ!」
雑種とは、混血を表す侮蔑用語の一つだ。実験や軍隊強化の為に無理やり掛け合わせて作られた獣人の事を言い限りなく差別に近い、学術呼称は『多重混種』とか『混血』と言っている、内戦ばかりでまともな教育がされていないこの国では、そういった気遣いはあまり気にされてない。
ライジとイスタはワケも分からず見合わせながら肩を竦め合ったが、後で飛行隊総隊長のベイブリッドがその話を聞いて
「やっぱり重症じゃないですか・・・」
っと宣いその後、『第一騎士団内はガルゴ団長が変人に懸想している』という噂があっと言う間に広がった。
「なんでもっ、ねぇ!」
こみ上げる何かを必死に抑えながら、何故かサナリアがこの行為を止めない様にと必死でガルゴは身じろぎすらせず耐えていた。
苦しい体制でガルゴの背骨の数を数えていたサナリアが『ふーっ』っと一つ大きなため息を着いた。
ジワリ、とサナリアのついた溜息がガルゴの腹筋を温める。
ガルゴの頭の中はサナリアの朱い髪とサナリアの匂いとサナリアから与えられる感触でグルグルになっていた。
「・・・・っ」
ついに我慢できずにガルゴの体がピクリと跳ねてしまった。
振動で唇から血が一つポタリとサナリアの肩に落ちる。
それに気が着いたサナリアが『ん?』っと上を見た。
「何だ団長殿、怪我をしているなら言って下さい。まったく・・・あの程度の蹴りで・・・・」
あの程度の蹴りとか言っているが、先ほどのサナリアの蹴りは相当の物だった。
流石は普段単独で森に出入りしているだけの事は有る。
ガルゴの触診を中断して、血が出ている口に手を添える。
「噛みしめていないで口を開けてくれませんか?」
「ん?あぁ・・・」
ガパリと大きな口を開けると割と大きな傷があってドロリと結構な量の血が垂れて来た。
それを平然と自分の衣服で受け止める。
「おぁっ!?すっ、すまん。服が」
「別にこの服に執着は無い、この血はサンプルとして頂くが。」
「・・・・・・。」
そう言いながら、何やらサナリアがモゴモゴと唱えるとガルゴの口の周りに小さな光る魔法陣が浮かび上がった。
むず痒い様な感覚がして、五秒後くらいには痛みも無くなっていた。
ガルゴが己の舌で口内を確かめると、傷は全く無くなっていった。
「今日じゃ無くても良いが唾液交じりではなくてちゃんとした採血もさせていただけると有難い。」
そう言って、サナリアは、起ち上がり佇まいを直すと、
「では今日は失礼する。」
「検分はもう良いのか?」
「さすがに、下半身をはここでは無理でしょう。」
「・・・・まぁ・・・・・。」
下半身とはどこまでの部分を指すのだろうか。
「ナカナカに貴重な、検体を拝見させて頂いた。まぁ先ほどの無礼はこれで流そう。検分した事を資料として早く書き起こしたいので何か用が有るなら明日以降にしてください。・・・・・言って置きますが。研究室のソファーの使用料は負けませんからね。」
そう言って、さっさと着乱れたガルゴを置いて食堂を出て行ってしまった。
「出禁にはしないんだ・・・・・。」
ガルゴが呆気にとられてサナリアの出て行った方向を見つめていると。
「凄い見世物になっていましたよ。」
人垣をかき分け、やっとライジとイスタがガルゴの所にやってきた。
「ガルゴ団長?どこか悪い所でも?」
イリアが蹲るガルゴを覗き込むとガルゴが一応小さな声で今自分が何故起ち上がらないのか端的に説明する。
「 」
「はぁ!?」
うはははははははっはっっと一頻り笑った後、納まらない自身の一物を膝をたててごま化しながらそれでも言った。
「俺は今日生まれて初めて雑種に生まれて良かったと思ったよ!」
雑種とは、混血を表す侮蔑用語の一つだ。実験や軍隊強化の為に無理やり掛け合わせて作られた獣人の事を言い限りなく差別に近い、学術呼称は『多重混種』とか『混血』と言っている、内戦ばかりでまともな教育がされていないこの国では、そういった気遣いはあまり気にされてない。
ライジとイスタはワケも分からず見合わせながら肩を竦め合ったが、後で飛行隊総隊長のベイブリッドがその話を聞いて
「やっぱり重症じゃないですか・・・」
っと宣いその後、『第一騎士団内はガルゴ団長が変人に懸想している』という噂があっと言う間に広がった。
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