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黒豹の腹の毛は1
しおりを挟むサナリア達が今いるウロボロスの拠点はグイネバルドという所に有る。
一応世界的な認識は国となっているが、我こそは正当な政府であるとか国王であるとか名乗る団体が複数あって、魔王討伐後300年余り、内戦を繰り返している。
治世も治安も落ち着く様子が無い所だ。
お陰で、非人道的な団体の発足も後を絶たず、ウロボロスの中でもかなり激務が多い支部になる。
そんな、グイネバルドでも年に一回約三週間程国を挙げて春を祝う一大行事が有る。
魔王討伐記を記念した祝いの祭りだ。
勇者ガレイアから名を取り『ガレイアの春』と言われている。
この時ばかりは戦は止み、普段戦火に怯える一般市民も大いに羽を伸ばすのだ。
基本的に時期が春なだけあってこの行事の主役は恋人達や夫婦、家族等で、皆で厳しい冬を魔王と戦った辛い時代に譬え、生き抜いた喜びを愛する者同士で分かち合えば悪い瘴気も消えていくという教えである。
この祭りをきっかけにカップルになる者達も多く、自然と年に一度愛の告白やお互いの愛を確かめ合う切っ掛けの行事になって行った。
行事中には神官たちによる剣舞や奉納舞も催され、盛大な祭りとなる。
ウロボロスのグイネバルト支部もその例外でなく、施設の中も祭りに向けて浮足立っていた。
そう言った事が苦手なサナリアにとっては、憂鬱な季節である。
いつもなら休暇期間中だろうが研究室に入り浸っていれば煩わしい事はおおよそ避けられるが、今年はガルゴが入り浸っている。この季節のガルゴは毎年ガルゴ狙い(?)の者達に告白されまくっているので研究室では乱入される恐れがある。
大事な研究機材を壊されでもしたら大変なので今年は祭りの期間中は研究室を閉めておきたい。
(面倒くさい・・・・もう森の中にでもしばらく籠ってしまおうか・・・)
サナリア・アルテミナは早々に引きこもる算段をした。
一方、ガルゴにとっても、今年は憂鬱な『ガレイアの春』になりそうであった。
不規則に年一回から5回位起きるガルゴの発情期、その発情期が『ガレイアの春』期間に重なりそうなのだ。
毎回お決まりの、発情期が近い証拠であるそわそわザワザワした何とも言えない感覚が、ここの所ガルゴの体内で渦巻いていた。
パズルのピースがうまくハマらず思い悩む時の感じに少し似ている。
発情期のガルゴの酷さはウロボロスでは有名なので、もはや施設内にその時期のガルゴの相手をしてくれる者は居ない。
発情期じゃない時は鶏を小屋に戻すがごとく追い回す輩も、ガルフがそうなったとたん逃げ出すのだ。
ガルゴから見れば、彼らの行動は、踊り子や楽士に熱を上げるのと同じに見える。
皆で同じ人間に恋をして、皆で失恋をして、慰め合って連帯感を味わっているのだ。
怒ってはいないが、中々にバカバカしい話だとは思う。
娼館もこの時ばかりは書き入れ時で、思うように娼夫も娼婦も捕まらないだろう。というか労せずして客が絶えないこの季節、わざわざ発情期のガルゴなんて採算が悪くて相手をしてくれる娼婦なんて先ず見つからないだろう。
自宅に引きこもって耐えるという手段が無いワケでは無いが・・・多分団員達が祭りに誘いに来たりと落ち着かない事請け合いだ。
悪くして、いつものガルフの取り巻きが強引に入って来ないとも限らない、トラブルにでもなったら断罪級の大ごとである。
いちいち『自分、今発情期で辛くて出歩けません』とか、弄りのネタになる様な事絶対に言えない。
騎士団総団長の耳にでも入ったら十年はイジられるだろう。
(・・・・森に隠れるか・・・・。)
ガルゴは逃げを打つ計画を立て始めた。
一応世界的な認識は国となっているが、我こそは正当な政府であるとか国王であるとか名乗る団体が複数あって、魔王討伐後300年余り、内戦を繰り返している。
治世も治安も落ち着く様子が無い所だ。
お陰で、非人道的な団体の発足も後を絶たず、ウロボロスの中でもかなり激務が多い支部になる。
そんな、グイネバルドでも年に一回約三週間程国を挙げて春を祝う一大行事が有る。
魔王討伐記を記念した祝いの祭りだ。
勇者ガレイアから名を取り『ガレイアの春』と言われている。
この時ばかりは戦は止み、普段戦火に怯える一般市民も大いに羽を伸ばすのだ。
基本的に時期が春なだけあってこの行事の主役は恋人達や夫婦、家族等で、皆で厳しい冬を魔王と戦った辛い時代に譬え、生き抜いた喜びを愛する者同士で分かち合えば悪い瘴気も消えていくという教えである。
この祭りをきっかけにカップルになる者達も多く、自然と年に一度愛の告白やお互いの愛を確かめ合う切っ掛けの行事になって行った。
行事中には神官たちによる剣舞や奉納舞も催され、盛大な祭りとなる。
ウロボロスのグイネバルト支部もその例外でなく、施設の中も祭りに向けて浮足立っていた。
そう言った事が苦手なサナリアにとっては、憂鬱な季節である。
いつもなら休暇期間中だろうが研究室に入り浸っていれば煩わしい事はおおよそ避けられるが、今年はガルゴが入り浸っている。この季節のガルゴは毎年ガルゴ狙い(?)の者達に告白されまくっているので研究室では乱入される恐れがある。
大事な研究機材を壊されでもしたら大変なので今年は祭りの期間中は研究室を閉めておきたい。
(面倒くさい・・・・もう森の中にでもしばらく籠ってしまおうか・・・)
サナリア・アルテミナは早々に引きこもる算段をした。
一方、ガルゴにとっても、今年は憂鬱な『ガレイアの春』になりそうであった。
不規則に年一回から5回位起きるガルゴの発情期、その発情期が『ガレイアの春』期間に重なりそうなのだ。
毎回お決まりの、発情期が近い証拠であるそわそわザワザワした何とも言えない感覚が、ここの所ガルゴの体内で渦巻いていた。
パズルのピースがうまくハマらず思い悩む時の感じに少し似ている。
発情期のガルゴの酷さはウロボロスでは有名なので、もはや施設内にその時期のガルゴの相手をしてくれる者は居ない。
発情期じゃない時は鶏を小屋に戻すがごとく追い回す輩も、ガルフがそうなったとたん逃げ出すのだ。
ガルゴから見れば、彼らの行動は、踊り子や楽士に熱を上げるのと同じに見える。
皆で同じ人間に恋をして、皆で失恋をして、慰め合って連帯感を味わっているのだ。
怒ってはいないが、中々にバカバカしい話だとは思う。
娼館もこの時ばかりは書き入れ時で、思うように娼夫も娼婦も捕まらないだろう。というか労せずして客が絶えないこの季節、わざわざ発情期のガルゴなんて採算が悪くて相手をしてくれる娼婦なんて先ず見つからないだろう。
自宅に引きこもって耐えるという手段が無いワケでは無いが・・・多分団員達が祭りに誘いに来たりと落ち着かない事請け合いだ。
悪くして、いつものガルフの取り巻きが強引に入って来ないとも限らない、トラブルにでもなったら断罪級の大ごとである。
いちいち『自分、今発情期で辛くて出歩けません』とか、弄りのネタになる様な事絶対に言えない。
騎士団総団長の耳にでも入ったら十年はイジられるだろう。
(・・・・森に隠れるか・・・・。)
ガルゴは逃げを打つ計画を立て始めた。
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