壊れた玩具と伝説の狼

壊れた玩具と伝説の狼 フィナーレ８

セイラの身に何か大変な事が起きない限り、アヤが帰ってくるまで大概半日はかかる。
体がボロボロだった時は寝床で横になっていれば良かったが、本調子には程遠いとは言え、かなり快復した今となってはただ横になっているには辛い時間の長さだ。
洞窟の中は、アヤがセイラの自殺防止の為に、最初に全ての物を捨ててしまったので何もない。
あるのは寝床と、アヤが居ない間にセイラが発情してしまった時に使う為の、アヤのツタで作ったハリボテだけだ。
掃除するにもこの洞窟には掃除道具もない。
アヤが山の王の力で洞窟を清潔に保っているので必要ないのだ。
（魔術の練習でもしてようかな）
ふと、セイラは自分が再び魔術が使える様になったのだった、と思い出して魔術の練習をしようと思い立った。
ならば交尾をするのに楽なシャツ１枚の恰好ではなく、久しぶりにちゃんと外出もできる様に服を着る事にした。
着ていたシャツを脱ぐと、アヤがセイラの腰に巻き付けていった蔦つたがセイラの視界に映った。
アヤの蔦には、セイラの体や周囲に悪い事が起こると、アヤに知らせる検知魔法みたいな力が込められている。
（たぶん、浮気とかも検知するんだろうな）
セイラはは蔦を撫でながら、思った。
「どうせなら、アヤが不在中に僕が発情しだしたら、自己処理手伝ってくれる魔法とかも着いたら良いのに。
　なんちゃって、そんな魔法聞いた事ないけど、あはは」
冗談を言って自分で笑いながら、セイラは服を着て洞窟の奥の何もない所に向かった。
（久しぶりに使う魔術、何が良いだろうか、洞窟の中だから炎系は止めといた方が良いよね、洞窟の中の喚起力がどのくらい強いのか僕知らないし）