203 / 218
壊れた玩具と伝説の狼2-5
しおりを挟む
アヤの声を聴きながら、セイラは自分みたいに逃げられなくなった場合はどうしたら良いのかしらなんて意地悪な事を考えていた。
口には出さなかったけれど、だって答えなんて見つからない。
仮にセイラみたいな千載一遇のチャンスを見計らって現状に耐えるとしたって、どれだけの人間が耐えられるだろうか・・・。
だから、他の事を言った。
「アヤは強いのに戦えって言わないんだね」
「逃げるのだって立派な戦いだ。生き残る為なら、狼だって飼い犬のフリもする」
アヤは真面目に、でも自分が犬のフリをした事をちょっと茶化しながら言った。
だからセイラも真面目に、でも、茶目っ気も入れて
「気持ちよかったよ。僕の愛しいバター犬」
と言ったら、アヤは尻尾を振って『ウォフ!』と犬の鳴きまねをしてセイラを笑わせた。
セイラは笑いながら、初めて山の王となったアヤに出会ったあの日の事を思い出していた。
確かに、あれは戦いだった。
逃げていたけれど、戦いだった。
何の偶然だったのか、動かなくなった筈の体が動いて、一瞬の隙をついて馬車の扉を開けて転げ出して。
必死で逃げた、こんな体が残るのが嫌で、死ぬために逃げた。
だから馬車から落ちた時、それで死んでも良いと思っていた。
あの時セイラは死ぬために逃げたけど、同時に自分を守る為に戦ってもいたと、今なら分かる。
自分の尊厳を守る為に戦っていた。
このまま自分の全てを踏みにじられたまま、都合の良い様に片付けられて堪るかと必死だった。
多分、今まで生きて来た中で一番一心不乱に戦っていた。
そしてセイラは勝ち取ったのだ、アヤという自分を大事にしてくれる最良の生涯の相手を。
口には出さなかったけれど、だって答えなんて見つからない。
仮にセイラみたいな千載一遇のチャンスを見計らって現状に耐えるとしたって、どれだけの人間が耐えられるだろうか・・・。
だから、他の事を言った。
「アヤは強いのに戦えって言わないんだね」
「逃げるのだって立派な戦いだ。生き残る為なら、狼だって飼い犬のフリもする」
アヤは真面目に、でも自分が犬のフリをした事をちょっと茶化しながら言った。
だからセイラも真面目に、でも、茶目っ気も入れて
「気持ちよかったよ。僕の愛しいバター犬」
と言ったら、アヤは尻尾を振って『ウォフ!』と犬の鳴きまねをしてセイラを笑わせた。
セイラは笑いながら、初めて山の王となったアヤに出会ったあの日の事を思い出していた。
確かに、あれは戦いだった。
逃げていたけれど、戦いだった。
何の偶然だったのか、動かなくなった筈の体が動いて、一瞬の隙をついて馬車の扉を開けて転げ出して。
必死で逃げた、こんな体が残るのが嫌で、死ぬために逃げた。
だから馬車から落ちた時、それで死んでも良いと思っていた。
あの時セイラは死ぬために逃げたけど、同時に自分を守る為に戦ってもいたと、今なら分かる。
自分の尊厳を守る為に戦っていた。
このまま自分の全てを踏みにじられたまま、都合の良い様に片付けられて堪るかと必死だった。
多分、今まで生きて来た中で一番一心不乱に戦っていた。
そしてセイラは勝ち取ったのだ、アヤという自分を大事にしてくれる最良の生涯の相手を。
0
お気に入りに追加
85
あなたにおすすめの小説
変態高校生♂〜俺、親友やめます!〜
ゆきみまんじゅう
BL
学校中の男子たちから、俺、狙われちゃいます!?
※この小説は『変態村♂〜俺、やられます!〜』の続編です。
いろいろあって、何とか村から脱出できた翔馬。
しかしまだ問題が残っていた。
その問題を解決しようとした結果、学校中の男子たちに身体を狙われてしまう事に。
果たして翔馬は、無事、平穏を取り戻せるのか?
また、恋の行方は如何に。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
最強の一族は自由気ままに生きていく
夜月
ファンタジー
全ての世界で最強と言われている一族 ──月華──。
『 神族 』とも言われている。
月華の仕事は世界を監視すること。
無自覚主人公 月華 月とその双子の兄、月華 輝夜が男しかいない世界で自由気ままに生きていきながら世界を監視する話。
もふもふ好きな学生です!
語彙力ないです!
学生なんで、投稿めっちゃ少ないですがよろしくお願いします!
ひとつ言い忘れてました。
読むときの注意点
※この作品は1番最初がめっちゃ長いので、ご注意ください。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる