上 下
160 / 218

春のススキと白い息4-2

しおりを挟む
最初から期待しないのは、とても楽だった。
そんな感じだったので、大人になってからセイラに親しい友達が居ないのは、当然と言えば当然な事だった。
だから、まさか送別会を開いてもらえるなんて思ってもいなかった。
訝しみつつも、節目を祝ってもらえるなんて初めての事だったので、嬉しくて、浮かれて飲みすぎてベロベロに酔っぱらって、その夜の事は正直本当にあまり覚えていない。
飲みすぎたセイラはその送別会で残った刺身と生肉等つまみを合わせて一抱えも持って、柄にも無く酒瓶をラッパ飲みしながら今日が最後だから、なんて変な哀愁に駆られて例の山にフラフラと一人挨拶に行ったのだった。
居もしない山の王に、幼少期の孤独を慰めてくれたお礼に、ただの一人あそびだった。
「まじょがぁ~かかとぉをぉ~」
誰も聞いていないのを良い事に、唯一つソラで歌えるわらべ歌を鼻歌で歌いながら、それはもう見事な千鳥足で、歩き慣れた道を歩いた。
言っておくが、この歌はご機嫌な時にこんな鼻歌で歌うような歌ではない。
その日はとても大きな満月で、町灯りが届かなくなっても魔法で灯りを灯さなくても、獣道までよく見えた。
セイラは昔から月明りが好きだった。
特に満月の夜は良い、極彩色の昼間の景色から、絶妙な匙加減で全ての色を奪って世界をグレーと暗黒に染め上げる。
こんなにくっきり全てが見えるのに、色彩だけ無くなるなんて、なんて不思議なんだろうか。
ご機嫌なセイラはそう心の中で月を讃えながら、酒をラッパ飲みしつつ山深くに足を進めた。
もう少し歩けば、セイラ御用達の清水の湧き所があるはずだ。
喉が渇いていたのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

変態高校生♂〜俺、親友やめます!〜

ゆきみまんじゅう
BL
学校中の男子たちから、俺、狙われちゃいます!? ※この小説は『変態村♂〜俺、やられます!〜』の続編です。 いろいろあって、何とか村から脱出できた翔馬。 しかしまだ問題が残っていた。 その問題を解決しようとした結果、学校中の男子たちに身体を狙われてしまう事に。 果たして翔馬は、無事、平穏を取り戻せるのか? また、恋の行方は如何に。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

最強の一族は自由気ままに生きていく

夜月
ファンタジー
全ての世界で最強と言われている一族 ──月華──。 『 神族 』とも言われている。 月華の仕事は世界を監視すること。 無自覚主人公 月華 月とその双子の兄、月華 輝夜が男しかいない世界で自由気ままに生きていきながら世界を監視する話。 もふもふ好きな学生です! 語彙力ないです! 学生なんで、投稿めっちゃ少ないですがよろしくお願いします! ひとつ言い忘れてました。 読むときの注意点 ※この作品は1番最初がめっちゃ長いので、ご注意ください。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

熱のせい

yoyo
BL
体調不良で漏らしてしまう、サラリーマンカップルの話です。

処理中です...