壊れた玩具と伝説の狼

鈴紐屋 小説:恋川春撒 絵・漫画:せつ

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春のススキと白い息2ー14

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「強くはなっていないな。
 多少丈夫にはなった。
 例えば、毒薬で死ななくなった。
 寿命が俺と同じになって、体の時が止まった」
「寿命が同じ?」
「お前は、俺が生きてる限り死なない」
「それ不老不死になったって事!?」
そんな大事だとは思って無かったセイラは思わず声を裏返して叫んだ。
「不老ではあるが不死では無いな、俺が死ねばお前も死ぬ」
「はー」
アヤの説明を聞いて、セイラはため息みたいな相づちをついた。
理解しきれていない、というのもあったが、話が突飛すぎて実感しきれていないというのが正直な所でもあった。
二言目を何て言おうか迷っていると、
「ザマァミロ」
と、ちょっと拗ねた口調でアヤが言った。
「ん?」
『ザマァミロ』何故そんな事言われたのか分からなくて、セイラは自分を見つめるアヤを見つめ返した。
アヤは、やっぱり口調と同じ、拗ねた表情をしていた。
「もうお前は、ソッコらチョイとは死ねねぇからな!」
涙目にすら、なっている様に見えた。
あぁ、この狼は、本当に自分に死んで欲しくないのだと、セイラは改めて思った。
「そう簡単に、死なれて堪るか!やっと見つけたんだ。
 十三年も山中しらみ潰しに探し回って、家族を捨てて、群れを抜け、普通の狼としての一生を諦め、全てを捨てて、一度死を通過して山の王になってまで、探して待って、やっと見つけたんだ。
ただお前という番を見つける為に、俺は全てを捨てたんだ。
 死なれて堪るか!
 死なれて堪るか!」
その拗ね具合に呆気にとられつつも、『変な狼だな』とセイラは呑気に思った。
獣は強い者、大きな者が基本的にモテる。
アヤはさぞかし雌狼達にモテるだろう、わざわざセイラ一人に固執しなくたって、番相手には困らない筈だ。
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