壊れた玩具と伝説の狼

すずひも屋 小説:恋川春撒 その他:せつ

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春のススキと白い息1-2

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セイラは膝まで浸かった両足をゆらゆらと動かしながら、暫くアヤに寄りかかってぼんやり景色を眺めた。
「ふふふ、くらくらする」
温泉で温まったセイラの体内では、いつにも増して溜まり込んだ薬物が溶けだしていた。
服の下のセイラの胸の尖りは既にプクリと硬く尖って、しっかりとした刺激を待ちわびている。
「ふぅ」
セイラはアヤにもたれたまま、甘い吐息を吐き出した。
ぼんやりと前を見ると、洞窟の入り口にはアヤの群れの狼達が休んでいるのが湯気の隙間から見えた。
体の大きさはアヤの半分も無いが、鋼色の毛皮にススキ色のアンダーファーはアヤと同じだ。
(この景色、何だかどこかで見た事有る気がする)
強かに薬に酔ったセイラの脳裏に、うっすらと揺れるススキが思い描かれた。
あれは、いつの事だったか。
(こんなに湯気は無かった、それから)
寒かった。それに、『あはっ、ぁっ。お前、どこの・・・・なの?』誰か自分以外に居た。
「セイラ?」
セイラが記憶をたどるのに夢中になっていると、突然大人しくなったセイラを心配して、アヤがセイラの顔を覗き込んで来た。
薬で酔ったセイラの頭では上手い説明が思い付けず、ヘラリと笑ってごまかした。
集中が途切れれば意識は現実に戻り、慣れた薬物による酩酊がセイラの心に悪夢を蘇らせる。暗い湯の中に自分の足首を掴み上げて、無理やり割開く男達の姿が見えた。
(分かってる。これは記憶の見せる幻だ)
他の事を思い起こして幻影を消そうと目をつぶっても、六年もの間ダイヤスの屋敷に囚われていたセイラの記憶には、凌辱と虐待の日々の記憶しか無くて、悪夢が増えるだけだ。
「セイラ」
鳩尾に響く様な低音で、アヤがセイラをもう一度呼んだ。

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