壊れた玩具と伝説の狼

人食い湖の住人３－７

　ガザは暫く海月の肩に噛みついて、荒い息を繰り返していたが、何とか少しずつ落ち着いて行った。
血走っていた目が次第に虚ろになり、力いっぱい噛みついていた口が離れた。
「くらげ？」
ガザが呂律の回らない言い方で海月を呼ぶと、
「そうだよ。海月だよ」
海月が優しく答えてもう一度抱きしめた。
「海月、海月、助けて。怖いい。やだ、もうヤダァ」
ガザは海月に泣き縋り、海月は恐慌状態のガザが何とか落ち着いたのを確認してそっと溜息をついた。
「そうだな、ガザはずっと私の腕の中に居ると良い、他に行く必要なんかないよ」
海月は泣いて自分に縋るガザをウットリと見つめて頬や髪を撫でながら、あちこちに優しくキスをした。
海月とガザがそのまま濃厚なキスやら何やらを初めてしまったので、アヤとセイラはそのままそっと海月の宮殿の外へ出た。
岸では狼達が白い息を吐きながら待っていた。湖の岸辺はいつでも寒いらしい。
アヤに連れられて岸辺を歩きながらセイラが話し出した。
「びっくりした。悪い事をしてしまったみたいだね。
　気を使うべきだった。
　ここに居るって事はダイヤスの名前なんか聞きたくないのなんか当然なのに」
「まぁ、あんなになるとは誰も思わねぇだろ。
　明日改めて海月に詫びでも入れると良い。
　俺はむしろお前の口からソイツの名前が躊躇いも無く出た事に驚いているよ。」
「あ、うん。そうだね」
昼間の悪夢を振り払った時の事を思い出して、セイラの頬がほんのり色付いた。
「寒いか？もう少しなんだが」
「違う、ちょっと当てられちゃって」
セイラが照れくさくてそう言うと、アヤはフフフと笑って髭でセイラの首回りをくすぐった。