壊れた玩具と伝説の狼

鈴紐屋 小説:恋川春撒 絵・漫画:せつ

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人食い湖の住人1-15

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セイラの視界のダイヤスの屋敷の壁が、ゆらゆらと不確かに揺れた。
(僕はちゃんと逃げ切ったんだ!)
セイラにの首に嵌っていた首輪が音も無く消えた。
(アヤは夢じゃない、こっちが)
「ダイヤス!お前が幻覚だ!」
セイラがそうダイヤスに怒鳴りつけると、まるで黒い霧が一陣の風で流されて晴れる様に、さぁっと、ダイヤスも厩舎の男もシャンデリアも豪華な装飾の天井も消えて、元のアヤの洞窟に戻った。
惨めに痩せこけた体も、ちゃんと治った体になっていた。
静まり返った洞窟の中で、セイラは一人呟いた。
「戻って来れた・・・」
大きな声では無かったけれど、ここはアヤの洞窟の中だから壁は岩で出来ている、声が少し反響した。
それにしても
「なんて馬鹿馬鹿しい・・ふっふふ!」
よりにもよって性器の根元を締め付ける蔓草で悪夢を振り払ったなんて!
「くくくっ。ダイヤスがコックリングに負けた!ふふふふっあのダイヤスが!」
余りにも滑稽な目の覚まし方で、自分の事なのに可笑しくて笑い出してしまって止まらなかった。
(だめ。外には確かアヤの群れの狼がいるって・・・)
変な笑い声を上げては、心配されてしまう、セイラはベッドに突っ伏して必死に息を殺して笑った。

しきり笑って顔を上げると、アヤが目の前に立っていた。
珍しく息を切らしてセイラを見つめていた。
「だ、大事だいじねぇか?」
注意深くセイラの様子を観察しながら開口一番そう聞いて来た。
「お帰り」
セイラがそういうと、息を切らしたままゴニョゴニョと『お、ぉう。ただいま』とか何とか言いながらそうっとセイラの隣に伏せた。
アヤの荒い息使いを傍で聞いて、セイラの躰が、疼いた。
セイラが欲望のままに未だ息を切らしているアヤの唇に舌を這わせると、アヤは嬉しそうに目を細めてセイラの動きに合わせて頭の位置を調整してくれた。
そんな小さな気遣いが、セイラを安心させてくれた。
「ねぇ、アヤ」
「ん?」
「アヤの番いになるにはどうしたら良いの?」
不思議と、するりと言葉が出て来た。
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