壊れた玩具と伝説の狼

すずひも屋 小説:恋川春撒 その他:せつ

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呪い1ー16

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「僕は狼に出会ったのなんて昨日が生まれて初めてだよ」
山には言い伝えが有ったけど、セイラがよく山に来ていた頃、この山で狼と出会った事なんて一度も無かった。
『そもそも体を開いたとはどういう事だ?』とは怖くて聞けなかった。
虫や蛇すら見た事が無かったのは、あまりにも不可解で、流石は言い伝えのある山だと思っていた位だ。
セイラはぎこちなく笑うと、アヤのお腹に埋もれ直した。
セイラの心も体も余りにもボロボロで、生きるのならば今は絶対に助けが必要だ。
別に死んだって良いとは思っていたけれど、セイラを番と思い込んでいるアヤはそれを許してくれそうにない、ならば、今はこの夢の様な待遇を享受 してしまおうと思った。
もう、何もかもどうでも良いという思いも少しあった。
明日本物が出て来て、アヤにその日の内に見限られても、少し死ぬ日が延びだだけの事だ。
どうって事は無い。
それまで、それまでは、この今だかつて味わった事の無い幸せな気持ちをもう少し味わっていたい。
(間違えたのはアヤだ)
アヤの体温はセイラよりも少し高くて、アヤの体温で心地よい眠気に包まれた。
(本当に、僕だったら良かったのに・・・)
「ねぇ、アヤ」
実はセイラの記憶が飛んでるだけで、本当にアヤの番がセイラだったら良かったのに、でも、そんな旨い話、運が良いとは言えないセイラの人生においてある筈がない、だからいつか来る終わりの時の為に最低限自分を慰めるための布石を置いておく事にする。
「ん?」
「いつか本物のアヤの番が来たら、ちゃんと責任もって殺して諦めさせてね」
そうして言うだけ言って、コトリと眠りについた。
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