壊れた玩具と伝説の狼

鈴紐屋 小説:恋川春撒 絵・漫画:せつ

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呪い1-13

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 だって僕メチャクチャ頑張ったんだよ。一人で学んで、一人で傷を癒して、犯罪者にもならず一応ちゃんとした大人になったんだ。
 ただ、幸せになりたかった。
 父親や母親みたいになりたくなかった。
 それだけだった。
 あいつらに出来なかった幸せな家庭を築いて証明したかった。
 死神と悪魔の間に生まれ育ったって、ちゃんとまともになれるんだって。
 何度も転んで、失敗して、ボロボロになったって諦めなかった。
 別に誰かを見下したかった訳じゃない。
 強いて言うなら世界を見返してやりたかった。
 僕をあんな悪魔たちの元に誕生させた世界を見返してやりたかった。
 誰にも大切にされなかった子供だって、悪魔の子供だって幸せな家庭を築けるんだって証明してやりたかった。
 正解の分からない僕は、間違って傷ついたら一人で泣いて、自分で傷を舐めて癒して、そして又転ぶのを覚悟で自分の正解を求めて挑むしかなかった。
 笑えるだろ、それがこのザマさ」
セイラは一気に話し終えるとゆらりとやせこけた両手を上げて見せた。
「ちょっとした判断間違えで、親より酷い悪魔に捕まった」
アヤがクィンと叱られた犬みたいな声で鳴いた。
余りに可愛い鳴き声だったので、セイラは思わずアヤを見つめてほほ笑んだ。
そしてもう一回、自分の骨と皮ばかりになった、とても二十八歳とは思えない傷跡とシミだらけの自分の両手を見つめて言った。
「きっともう元には戻らないね」
「セイラ」
「やめておけば良かった。さっさと諦めて一人で生きてく心を決めればきっとこんなにボロボロにまではならずに済んだのに。ごめんね、せっかく探し当てた僕がこんなにお粗末な体になっちゃってて、食べるにしても筋皮しかないし、性処理にするにしたって脆くて突っ込めないんじゃがっかりだろう?」
そう言ってパサリと両手を下ろして自嘲気味に笑った。
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