壊れた玩具と伝説の狼

呪い１ー１２

断るととたんに機嫌が悪くなってまた殴られる。母親は止めてなんかくれなかった。
　全部終わった後で寄って来て言うのさ『全部お前がわるいのよ』ってね。
　質が悪いのはそれが周囲に違和感を感じさせない程度にコントロールされていた所さ、母親によってね。
　火中の僕ですら思春期を過ぎるまで気が着かなかった。
　子供の僕にとってはまるで悪魔と死神さ。
　あんな家庭、幸せなもんか、幸せであって堪るもんか。」
セイラの話を、アヤは黙って聞いた。
「子供の頃の僕は常識が分からなくて混乱しっぱなしさ、辛うじて暴力や窃盗がダメな事が分かっている位で、細かい遠慮や気遣いとか慮りとかそう言う人付き合いの暗黙の了解みたいな物や手加減がまるで分からなかった。
　きちんと教えてくれる人が居なかったからね。
　その内僕はそういう法律の内側にある世間の常識を大衆向けの読み物で学ぶようになった、でもさ、読み物を作っているのは大人だろう？そこに有るのは大人に成ってからの常識で、子供の常識とは大きな違いが沢山あったんだ。
　小さな頃はよく『先生みたい』って言って笑われたよ。でも、そう言って僕を嘲笑ったヤツは一週間後位に僕のその時の言葉と全く同じ言葉を声高らかに皆の中心で宣言しているんだ。
　流石に悔しかったな。
　・・・そういう様な事は周囲が大人になるまで続いた。
　普通の家の子達はさ、簡単に幸せになっていくんだ。ちゃんと自分に合った相手を見つけて。
　最初から正解を持っているから辿り着くのも早い。
　でも、僕は分からないんだ。まるで壊れたコンパスさ、どんな人が僕の正解なのかまるで分からないんだ。
　ダメなタイプだけは分かるから、それだけは避けて来れてたけど、捕まるまでは。
僕はね、証明したかったんだ、子供の存在を踏みにじる様なあんなヤツ等に育てられた欠陥品だって、幸せになれるって