壊れた玩具と伝説の狼

鈴紐屋 小説:恋川春撒 絵・漫画:せつ

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伝説の狼1-2

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本当にこんな優しい声の獣が、人間を食うのだろうか?
「言葉が分かるのに人を食うの?」
「生きている人間は食わない」
では、やはり死ねば食うのか。
「僕、もう直ぐ死ぬんだ。僕も死んだら食べてくれる?」
ドキドキしながらそう聞いた。
返って来た答えは予想だにしなかった答えだった。
「俺は自分のつがいをみすみす死なせるつもりはネェんだが?」
狼は、ちょっと拗ねた様な声ではっきりとそう言った。
セイラは呆気にとられて、今この狼が口にした言葉の意味を問い質そうと口を開いた。
番とは、番いなのだろう。つまり結婚相手、伴侶という事だ。
何故自分が?
今しがた出会ったばかりだというのに、人の言葉が分かるとはいえ、やはり四つ足の獣、考え方が違うのだろうか?
しかし、セイラが何か言葉にする前に、セイラの体に起きていた奇跡は終わってしまった。
ぐらりとセイラの体が揺れて、なんの受け身も取れずにセイラの体が土に沈んだ。
口の中にまで土塊が入った。
「おっと。不味いな。時間が無い、悪いが求愛は後にさせてもらう。先ずはお前の体を何とかしなければ」
そう言って、動かなくなったセイラをバクリと一口で咥えると、その場を後にした。
セイラは体のほとんどを狼の口の中に咥えられていたけれど、狼はセイラを咥えている間中、セイラが窒息しない様になのだろう、口を少し開けていてくれたので、隙間から少し外の景色を見る事が出来た。
狼は馬車よりも、馬よりも早く山の中を疾走した。
セイラが連れて来られたのは、妙に暖かい洞窟の中だった。
「やっと再会出来たんだ。死なないでくれよ」
狼は確かにそう言って、セイラを自分の寝床と思しき大きなベッドの様な所へ、そっと下ろした。
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