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伝説の狼1ー1
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一瞬の間の後、
「う、うわぁぁぁぁぁ!化物ぉ!」
「ひいいいぃっ」
使用人二人はそう叫んで崖を駆けあがって逃げて行ってしまった。
「遠吠え・・・狼?」
でも、それにしては余りに大きい。
影の中にいる暗さに目が慣れ、目の前に見えたその大きな獣の足は、形は犬の様な形をしているのだが、セイラの頭よりも大きかった。
セイラは恐ろしいと思う事も忘れて、ただ茫然と目の前の大きな獣の体を見つめた。
そよりと風が吹いて、風に揺れた獣の腹の毛がセイラの頬を優しく撫でた。
馬車の音が遠ざかってゆく、蹄の音が全く聞こえなくなった頃、大きな影が重い足音をたてて数歩セイラから身を離した。
木漏れ日がセイラの視界に戻って来て、現れた獣の姿を照らし出した。
「・・・おおかみ。おおきな・・」
木漏れ日が照らし出したのは、ありえない程大きな狼だった。
思い出すのは、故郷に伝わっていた伝説の狼。
もしそうなら、ここは故郷のセイラが子供の頃散々遊んだあの山という事になる。
見覚えは無いから、恐らくセイラが遊んでいた場所の裏側なのだろう。
「クマよりも大きいじゃないか」
「山の主だからな」
しかも狼は、人間の言葉を話した。
「喋った」
「喋るさ、山の主だからな」
もし、ここがセイラの故郷の山ならば、そしてもし、この目の前の大きな狼が故郷の言い伝えに有る伝説狼ならば、山で死んだ人間は、この狼が食べてしまうはずだ。
「貴方は、狼?」
「他の何に見えると言うんだ?」
言葉はぶっきらぼうだが、随分と優しい声だった。
「う、うわぁぁぁぁぁ!化物ぉ!」
「ひいいいぃっ」
使用人二人はそう叫んで崖を駆けあがって逃げて行ってしまった。
「遠吠え・・・狼?」
でも、それにしては余りに大きい。
影の中にいる暗さに目が慣れ、目の前に見えたその大きな獣の足は、形は犬の様な形をしているのだが、セイラの頭よりも大きかった。
セイラは恐ろしいと思う事も忘れて、ただ茫然と目の前の大きな獣の体を見つめた。
そよりと風が吹いて、風に揺れた獣の腹の毛がセイラの頬を優しく撫でた。
馬車の音が遠ざかってゆく、蹄の音が全く聞こえなくなった頃、大きな影が重い足音をたてて数歩セイラから身を離した。
木漏れ日がセイラの視界に戻って来て、現れた獣の姿を照らし出した。
「・・・おおかみ。おおきな・・」
木漏れ日が照らし出したのは、ありえない程大きな狼だった。
思い出すのは、故郷に伝わっていた伝説の狼。
もしそうなら、ここは故郷のセイラが子供の頃散々遊んだあの山という事になる。
見覚えは無いから、恐らくセイラが遊んでいた場所の裏側なのだろう。
「クマよりも大きいじゃないか」
「山の主だからな」
しかも狼は、人間の言葉を話した。
「喋った」
「喋るさ、山の主だからな」
もし、ここがセイラの故郷の山ならば、そしてもし、この目の前の大きな狼が故郷の言い伝えに有る伝説狼ならば、山で死んだ人間は、この狼が食べてしまうはずだ。
「貴方は、狼?」
「他の何に見えると言うんだ?」
言葉はぶっきらぼうだが、随分と優しい声だった。
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