壊れた玩具と伝説の狼

悪夢１－５

男性が殆どの幹部候補の中で、男同士のタブーをやたらと犯してしまっていたヤシダは、幹部候補の男性陣達の攻撃対象になってしまっていた。
それで仲間内で意地悪された鬱憤を立場の弱いセイラ達で解消していたのだ。
危うく集中的に八つ当たりの矛先になりそうだったのを助けてくれたのは事務の女性だった。
ハンナと呼ばれている少しふんわりとした体つきの、メイクの派手な人だった。
機嫌が悪いと直ぐヒステリックな声を上げるが、デリケートな分気の利くハンナは上司のお気に入りで、ハンナと仲良くしてると意地悪なそいつはセイラをイビるのを止めた。

そうして職場での身の安全を確保したセイラは、真面目にコツコツ働きながら子供の頃から密かに思っていた目標を実現させるべく、動き出していた。
他愛もない夢だった。
あまりにも子供っぽすぎて誰にも言ったことの無い夢だ。

愛し合える人を見つけて家族になって、ずっと一緒に過ごすこと。

それがセイラがいつしか自分の中でだけ暖めていた目標であり、夢だった。
今までの男は酷かった。やたらとセイラを玩具にする様な男だったり、別れを切り出してはセイラを思い通りに動かそうとしたり。今度の男は違うと思っていたのに、結果はさんざんセイラを振り回したあげくポイ捨て。
ずっと、生い立ちなんか関係ない、ちゃんと素敵な恋人を見つけるんだと思って来たけれど、流石に人生４度目の失敗となると弱音を吐きたくなる。その夜強かに酔ったセイラは発泡酒の瓶を抱えてテーブルに突っ伏して寝落ちした。