壊れた玩具と伝説の狼

悪夢１－４

セイラの住む街は、造船産業を中心とした様々な魔道機械部品産業が活発な地方都市で、工場と夜の店がが非常に多い。
セイラはこの街の一角に支社兼主力工場を構える魔道具部品工場の作業員として働いていた。
今年で五年になる。
本当は、船艦の製造の仕事に着きたかったのだが、セイラが仕事を探してる時に丁度空きが無くて面接も受けられなかったのだ。
もっとも、身長が男性の平均以下のセイラの体格では、船の製造なんて殆どの工程で作業不可能だから空きが有ったとしても採用しては貰え無かったであろうが。
船艦の製造工場に入れたら、セイラ好みの体の大きな男性が沢山いるのに。
というのは半分本気で半分冗談な気持ち──。
小さな部品の製造工場じゃ、女性ばっかりだ、一人、ヤシネという名の男性メンバーがいるが、自分と同じくらいの背丈の男子で、しかも将来幹部候補の貴族様だ。親しくなるには生きている世界が違いすぎた。
そして悪い事に、ヤシネは凄く性格が悪かった。
ヤシネはつぶらな瞳のやせ形で、一見大人しそうなルックスなのだが、まるで少年漫画の悪役二代目社長みたいな態度で、目下のセイラ達を奴隷みたいに見下していた。
同格の幹部候補同士の付き合いのストレスの捌け口にしているのだ。
三つ上の姉がいる末っ子のヤシダは男同士のつきあい方に酷く疎い男だった。
姉の影響なのだろうか、セイラにはヤシダは男同士暗黙のルールをまるで分かっていない様に見えた。
部外者のセイラにそう思える位だ、当人同士の間ではもっと酷かったのだろう。