壊れた玩具と伝説の狼

鈴紐屋 小説:恋川春撒 絵・漫画:せつ

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悪夢1-3

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父親は、地雷みたいな人だった。
その日の気分次第で爆発的に激昂して幼いセイラでも殴り、引きずり、蹴飛ばした。
激昂する理由は本当に気分次第だったので、いつ暴力を振るい出すかわからない所も幼いセイラを怯えさせた。
昨日笑顔の理由だった事が、今日は暴力を振るわれる原因になる。
セイラの中の常識は混乱し、何が正しい事で何が悪い事なのか覚えるのは困難を極めた。

セイラの社会常識の先生は無数に読んだ大衆小説だけだった。

本を読んで学習し、こうなのかと理解したつもりで行動し、失敗してはこれは違ったのかと理解の上書をする。周りの子供達が両親からきちんと教わっていとも簡単に出来る事をセイラはそうやって一つ一つ心や体を痛め、独りで泣きながら覚えて行かなければならなかった。
セイラがやっと社会に適合出来る常識を身につけた頃には、セイラの回りには殆ど人が居なくなっていた。
その頃にはセイラは一人で野山に行って遊ぶようになっていた。
セイラが一人で遊んでいた山は、セイラが育った町で子供の成長を祝う祭りの時にだけ開かれる、地元では有名な山だった。
不思議な言い伝えのある山だった。

その山には熊ほども丈のある大きな人食い狼が住んでいて、山で死んだ者は全てその狼に食べられてしまう。

そんな言い伝えだった。
その言い伝えは、普通はセイラの国で働く事を許される十二才のお祝いの年に山に入り、言い伝えが嘘であった事を知るのだが、セイラは物心着いた頃には知っていた。
いつもその山で一人で遊んでいたから──────。
だから、セイラにとって十二歳のお祝いのお祭りは殆ど意味を成さなかった。

セイラは現在二十二歳、今は実家を出て独り暮らし。
実家から馬車で二時間程離れた街に建つ魔道大型船艦の部品を作る工場で働いている。
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