スイート・スパイシースイート

finale１－１

時は少し進んで十一月の最初の日曜日、俺達は成田空港でドイツのミュンヘン行きの飛行機を待っていた。
出張の多い琢美は旅慣れていて、いつの間にか色々身支度を整えていて、行きたくないとボヤキながらも落ち着いて飛行機の時間を待っていた。何故か俺の方がソワソワしていた。
飛行機って、行ってすぐ乗れるってワケじゃないのな、搭乗手続きとから有るから何時間も前に行って手続きしないといけないんだぜ、チケットも昔のドラマみたいに紙じゃなくてスマホなの。
店を始めてから遠方に旅行する事が無かった俺は、すっかり浦島太郎状態になっていて、琢美の見送りに来て色々驚きの連続だった。
出張には他部門の人が数人一緒に行くとかで、俺達は態と搭乗口から遠い所で待ち合わせの時間を待っていた。
「それにしてもコバがあんなだったとは驚きだな」
「そうね」
話題はまぁ、ハロウィンの騒動の話になった。
高岡が『ドM』だとは言ってはいたけれど、まさかあそこまでとは驚きだった。
あれから、あんなに足しげく俺の店に来ていたコバは、パタリと来なくなった。
俺もかなりキツイ事言ったしな。
俺もあえて誘わない事にしている、良い親分離れになっただろう、流石にいかに長年の付き合いとは言え、俺と琢美の間を引き裂こうとした事は俺も許すつもりはない。
離れていくならそれまでだ。
「あそこまでやられたんだ、暫く俺達には近づいてこないだろう。高岡がいるからたまに一緒に飯食いに来るくらいはするかも知れねぇケドな」
「・・そうね」
「心配してくれんの？いいよ、いつでもカメラでもＧＰＳでもチェックしてよ」
ちょっと妬いてる声がした気がして、俺は嬉しくなって琢美の腰に手を回してすりよった。