上 下
196 / 410

candied apples 4-3

しおりを挟む
俺があの時高岡刑事を頼らなければ、きっとコイツは、琢美の父親は一生児相に気付かれる事は無かっただろう。
日常会話や世間話なんかすると、その異常性に気が着く事が有るのだが、児相が行う様な形式的な確認の会話では回数をこなして旨い誤魔化し方を覚えてしまっているから、殊更気が着きにくかっただろうと思う。
高岡刑事ですら、実態を知るまで、すこしヒステリー気味の父親位にしか考えていなかった。
琢美の父親は、相変わらずあの頃と同じ、いかにも人の良さそうな笑顔をこっちに向けている。
「息子?」
何だそれ?
変だ。琢美に兄がいるなんて、俺、聞いた事ねぇぞ。
思わず、俺より詳しい事を知ってるであろう高岡刑事に視線を送ったが、高岡まで鳩が豆鉄砲を食った様な顔をしたままブルブルと顔を横に振って『何も知らない』と身振りで返事をよこした。
どんなに昔の記憶を思い出しても、兄がいるなんてそんな素振り、一度もしてなかった。琢美もこの琢美の父親も。
「息子って、何?琢美に兄貴がいるなんて、見た事も聞いた事もねぇぞ」
俺が言うと、琢美の父親はちょっとびっくりしてから、琢をみてから、悪戯が成功した子供みたいにアハハと無邪気に笑って言った。
「えへぇ?!『琢美に兄貴』って、まさか君、未だこんな大きな男を女性だなんて思って無いだろう?」
琢美の父親は琢を指さして笑った。
「は?」
俺が再び間抜けな声を上げると、琢美の父親は
「なぁ」
琢を見てにっこり笑って言った。
「琢美」
俺はきっと、この瞬間の琢の、言葉に言い表せないほどの絶望に染まった様な表情を一生忘れないと思う。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性的イジメ

ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。 作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。 全二話 毎週日曜日正午にUPされます。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

いろいろ疲れちゃった高校生の話

こじらせた処女
BL
父親が逮捕されて親が居なくなった高校生がとあるゲイカップルの養子に入るけれど、複雑な感情が渦巻いて、うまくできない話

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

おしっこ8分目を守りましょう

こじらせた処女
BL
 海里(24)がルームシェアをしている新(24)のおしっこ我慢癖を矯正させるためにとあるルールを設ける話。

ドSな義兄ちゃんは、ドMな僕を調教する

天災
BL
 ドSな義兄ちゃんは僕を調教する。

エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしているので

こじらせた処女
BL
 大学生になり、一人暮らしを始めた荒井は、今日も今日とて買い物を済ませて、下宿先のエレベーターを待っていた。そこに偶然居合わせた中学生になりたての男の子。やけにソワソワしていて、我慢しているというのは明白だった。  とてつもなく短いエレベーターの移動時間に繰り広げられる、激しいおしっこダンス。果たして彼は間に合うのだろうか…

処理中です...