スイート・スパイシースイート

candied apples ３－１

candied apples　３－１
メイン会場で陣取った座敷で、山車のお囃子合戦を見物している時の事だった。
それまで一番キャッキャとはしゃいでいたコバが急に黙りこくって俯き始めた。
顔色が真っ青だった。
高岡刑事の袖を握り占めてカタカタと少し震えている。
「まさか急性アルコール中毒じゃ・・・」
と琢が水を差しだした。
コバは水を受け取ったものの、飲まずにペットボトルを開いている方の手で握ってやっぱり固まったままだ。
高岡刑事だけが訳知り顔で
「オイ、まさか・・・」
と聞くと、コバが高岡の腕にしがみついて小さく頷いた。
そこで思い出した。コバは昔、十数人の不良に袋だたきにあった事が有るのだ。
相当ひどくやられたらしく暫らく入院してた、何回か過呼吸やフラッシュバックでパニックを起こした事がある位。
コバはこの時の事だけはあまり話さない。よほど嫌な思い出なんだろう。
相手は性質（タチ）の悪い連中で、危うく殺されそうだったという話を噂でだけ聞いた事が有った。
詳しく知っているのは、最初に現場に駆けつけてコバを保護した高岡だけだ。
「ホテルに戻るか？」
高岡が聞く
「ヤダ、今日はもうココいたくない・・・気持ち悪い」
つぶやく様に返事してまた俯いてしまった。
「いったん俺の店に移らねぇ？。お前らの家より近いだろ。店のロゴ入りの車で良ければ送ってやるよ。」
「あぁ。助かる、頼むよ。」
二人の住処は俺たちと違って高岡の職場の近くにあるため駅から遠い。
遅くなった時バスが無くなったら送っていってやろうと思って酒を飲んでいなかったのが思わぬ所で役に立つことになった。