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vanilla essence 1―17

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あまりにトッピ突拍子も無いな思い付きに、一人「くっ」っと笑った俺を指輪が貰えずショボクレた琢が不思議そうな顔をして見つめる。
まさか説明するワケにも行かず、
「・・・この指輪は琢美の居所を知ってる人に頼んで琢美に渡すか捨てて貰うよ」
と考えていた事とは別の事を言って誤魔化した。
そう言うと、琢は納得したのかただぎこちなく笑った。
「きっと喜びますよ」
まるで今の琢美を俺より知ってる様な口振りに、やっぱりコイツ琢美と何らかの繋がりが有るんじゃないかと思えてくる。今は、それだけ判っていれば良いと思う事にした。
その内分かる時が来るかも知れねえし、謎のまま終わるのかも知れねえケド。
今はこのままで良い、このままが良い・・・。
琢美の偽物に遭遇しちまったおかげで、昔琢美を手放さした時の絶望にも似た喪失感が俺の中で少し蘇っていた。
意味も無い不安に駆られて、つい、琢の胸に顔を埋めると琢は何も言わずそっと背中に腕をまわしてくれた。
俺は弱さを見せたのが気恥ずかしくて、眠気でウツラウツラしながらもボソボソと思いつくままにクッチャベっる事にした。
「琢さ・・・お前いつになったら俺の事完食セックス本番するつもりなんだよ」
「さぁ、いつでしょう」
「なんだよ、最近生意気。これじゃ俺の方が惚れ込んでるみたいじゃねぇか」
「すみません」
全然すまないなんて思ってなさそうな琢の嬉しそうな声が穏やかに形だけの謝罪の言葉を紡ぐ。
「じゃぁ、せめてその氏で呼ぶのだけはいい加減何とかしろ」
「・・・何て呼んだら良いですか」
「別に・・・好きな呼び方で・・・名前なら」
その辺りの会話で俺の意識は途切れ途切れになってくる。
『・・・裕ちゃん』
その優しい声を最後に、俺は夢の中に吸い込まれて行った。呼ばれたのも夢かうつつだったのか・・・。
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