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vanilla essence 1―15

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「やっぱり、琢美さんの所に戻りたいですか?」
「・・・アホ!」
ふにっと頬を軽くつまんで不安げな琢の心配を一言で蹴散らしてやる。
「コレを取り返して来ただけだよ」
ベッドの下に他の服と一緒になって散らばってるジャケットから
「くそ、脱がすのまで上手くなりやがって」
と本気じゃねぇ悪態をつきながら、例の指輪を出して見せる。
「指輪・・・」
「これな、昔俺が琢美に作ってやった物なんだよ」
「・・・琢美は偽物だったのに、指輪だけ本物だった・・・」
つまりこの指輪は何らかの形で琢美が手放した事になる。
要らないから捨てたのか、忘れる為に手放したのか、それとも何かの拍子で落としたのか、盗まれたのか・・・。
お前も要らないって言われちまったのか?
と指輪に心の中で問いかける。
答えが見つかる訳が無いんだけど。
ただ、どうしてその指輪を使ってまで、俺の前に琢美の偽物が現れたのかが解らなかった。
何のために?
「きっと、手放したくて手放したんじゃ無いと思います!」
黙ってる俺が落ち込んでるのかと思ったのか、何故か琢が意気込んで琢美が指輪を捨てたわけじゃねぇと援護して俺を元気つけようてした。
俺の懸念を話した所で琢には関係の無え事だ。余計な心配事を増やすよりは、琢の慰めに乗ったフリをして笑顔を返す事にした。
「そうだな」
俺の笑顔に吊られて琢が微笑む。
「・・・その指輪、どおするんですか?」
笑顔に納得した琢が今度は指輪の行く末を聞いて来る。
「・・・どうするかな。」
指先で指輪を玩びながら一瞬考える。
相当一生懸命作った物だから自分で捨てるのは忍びない。
かと言って。
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