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vanilla essence 1―14

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「ごめ・・・なさっ・・・」
謝る琢に
「お帰り」
と、冗談めかして言ってもう一度抱きしめた背中に力を込める。
「それにしても変な奴だな。琢美を振り切って帰って来て怒られるとは思わなかったぜ」
笑いながら言うと。
「た。琢美さんは・・・この関係は、最初から・・・琢美さんが帰って来るまでの約束でしたから・・・」
言い訳みたいににモゴモゴと琢が答えた。
そこに、何か秘密の気配を感じた。
ひょっとして、琢美と琢は何か繋がりが有るんじゃねぇか?
時々見せる琢美と同じ癖、垣間見せる面影が重なる程よく似た表情。
何より独占欲は人一倍強い癖に琢美にだけはあまりそれを見せない。
代わりで良いのだとさえ言った。
確かめた方が良いんだろうか?
でも、ひた隠しに隠している事を暴く事に価値は有るのか?
もう、触れる事さえ出来なくなった人と今の恋人の間に何か関係が有ったとして、それを俺が知る事に何か価値が有るんだろうか・・・?
この、不安定な甘い関係を掻き乱してまで、俺を必要としなくなった彼女の何かを知る事に意味は有るんだろうか・・・。
少し考えてみたケド、答えは出なかった。
判っているのは、もはや俺にとって琢はとても大事な存在になっているという事、この関係が俺にとっても掛け替えの無いものになっているという事。
少なくとも、あんなにそっくりな琢美の偽物を振り切って勇んで部屋に向かう程には。
黙っている俺に未だあの女を本物の琢美だと思っている琢が要らねぇ心配をしてきた。
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