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vanilla essence 1―8

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俺と視線が混ざった途端、竹川がまとっていた怒りはかき消え、俺が予想していた泣き顔になると二度何かを言いかけて諦め、慌てて鞄を拾うと
「よ、良かったですね、琢美さんと再開出来て、おめでとう御座います。わた、私、ただカレー食べに来ただけなんですけど、ちょっと用事が有ったの思い出したんで今日はか・・・か、帰ります」
まくし立てる様に言うと引き止める間も与えず脱兎のごとく出て行った。
俺のアドバイス通り、週一で何やら体を鍛えているらしいアイツの足は最近結構早い。
抱きつく琢美の腕を解いてから追いかけたんじゃ絶対に追いつけねえだろう。
「コバ!携帯かせ!」
「え?何で?」
戸惑いながらもとりあえずコバが差し出した携帯を奪い取ると暗記していた竹川の番号を手打ちで入力する。
「決まってんだろ!アイツに電話するんだよ!」
「だって俺竹川さんなんかの番号なんて持っ・・・て、先輩まさか暗記してるんですか?!」
「こういう時の為にな」
そう言って、留守番電話に切り替わるのを承知で携帯を耳に充てて繋がるのを待った。
留守番電話に彼女を部屋まで送ってから今夜必ず帰るからと伝言を残して通話を終了した。
「優ちゃん?」
『琢美』が不安げに腕の中から俺を見上げる。
俺はこみ上げる気持ちを無理矢理抑えて恐がらせねぇ様に優しく笑って頭を撫でてやった。
「こんな夜遅く、一人で出歩いたのか?危ねぇじゃねぇか」
『頭』を撫でられた琢美が気持ちよさ気に目を閉じる。
「終わりまで待てるか?送っていってやる」
琢美は嬉しそうに『ぱっ』と表情を明るくすると
「うん!」
と大きく一回頷いた。
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