スイート・スパイシースイート

first taste ２－１

裕ちゃん。裕ちゃん。
あぁ、琢美が泣いてる。
泣くなよ、キスでも何でも好きなだけしてやるから。
お前の好きな激甘カレーも作ってやるよ。
高校生になったらバイトしてさ、新しいスカートも買ってやるよ。
おふくろさんのお下がりじゃなくて、真さらな新品、サイズがピッタリのヤツ。
たくさん。
だからさ、そんな痛ﾃｪ涙は流してくれるなよ。
大事なんだ。
守りたいのに…
力が足りない。
琢美………


「たく………」

自分の寝言で目が覚めた。
あー…目覚めワリィ。
「昨日のキスのせいだな…。」
いや、あれは断じてキスじゃねぇ。
事故だ。事故。マジで。
「チョコレートの味なんかするから久しぶりに変な夢見見ちまったじゃねぇか。」
結局、周りに気絶させたヤンキー共を転がしたままの場所では、救急車も呼べず、気絶なんかしやがったその情けないもやし系サラリーマンは、店まで担いで帰ってから通報して救急車に突っ込んだ。
おかげで帰りは遅くなるし余計な体力使って疲れたしでマジで最低な夜だった。
「くそぅ～眠みぃ…」
時計をみればまだ起きるには三十分は早い時間。
ケド寝直すにはタイムリミットまでの時間が短か過ぎた。
もう少し寝てたい欲求を無理やりねじ伏せ、店に向かう為にベットから起き上がった。
琢美っていうのは、小学校六年から中三の春まで隣の家に住んでいた俺の幼なじみだ。
藤川琢美。
それがその子の名前。
小六の春、俺達の家の境にある木の茂みの中で、タバコをふかして寛いでた所に親父にボコられて傷だらけの琢美がやってきた。