16 / 17
第一章
第三幕-2
しおりを挟む
「アマデウス、あれ出して」
カイムはアマデウスに持たせていた荷物を指差した。カイムが背負っておきたかった荷物だったが、アマデウスの僕が持つの一点張りに負けたのだった。荷物には麻の袋に入った長細いものがいくつか刺さっていた。
「カエル執事君、君名前有るなら教えてくれてもいいんじゃないか?」
「いやぁ、最近付いたばかりなんですよ。アマデウス・ルーデンドルフっていうんです。カイムに付けてもらったんですよ。」
アルブレヒトの一言にアマデウスは頭を掻きながら照れ臭そうに答えた。
「アマデウスルーデンドルフ?アマデウス=ルーデンドルフかい?貴族婚でもないのに二重名かい?」
アルブレヒトの言葉にアマデウスは固まった。自身がカイムに、姓と名の2つによる疑念や不安について文句を言っていたのに、自分でその状態を作りかけていた。
「南部だとそういう付け方を勝手にしている辺境が有るんです。自分を表す名と、一族を表す姓に分けるんですよ。言いたくないですけど田舎者なんですよ。自己紹介遅れましたね、私はカイム・リイトホーフェンと言います。以後ともよろしく」
カイムのフォローが入ると、アルブレヒトは口をへの字に曲げて頷き
「カイム・リイトホーフェンねぇ」
と呟くとアマデウスの荷物に目を向けた。アマデウスはカイムに目配せすると少し慌てながら荷物に手を付けた。
「あれって言っても…どれにするんだい?僕には決めかねるよ」
アマデウスは袋を掻き分けながら言ったが、カイムの何でも良いという視線に
「これで良いや」
と呟きながら一本取り出した。
「何だねカイム君とやら、それは?音からして中身は紙かい?薬の調合や効能とか書いてあるには大きすぎるね」
アルブレヒトは疑問を投げかけた。アマデウスは袋の口を開きながら中の紙の筒をカイムに渡した。紙を縛る紐を取ろうとしたがその手を止めた。
「アルブレヒトさん、先にいくつか聞いておいてもいいですか?」
彼の言葉に、彼女は目を閉じ俯きながら手を差し向けて話を促した。
「何かな?答えられる範囲では答えるよ。スリーサイズと年齢は絶対に教えないから。女性には知られたくない事がいっぱい有るからねぇ」
彼女は不敵な笑みを浮かべながら顔を上げた。
「あなたは、失礼かもしれないですが敢えて言いますけど小柄ですよね。壁の物とかこの建物とかはあなたが作ったんですか?」
このカイムの疑問に快活に笑いながら彼女は答えた。
「私はご存知錬金術師でね。頭は回るが力は女と言うこともあるが、騎士殿と違って弱くてね。設計とか理論は創るが、作ったのは別だよ」
その言葉を聞いて、カイムは質問を続けた。「その人はどれくらいの事をどれくらいの技術でできるんですか?」
「成る程、君の依頼は薬品ではないが理論と技術のいる…予測だが武器の類いかね?切れ味については研究したことがないが…彼は剣くらいならこの首都で彼の作品以上の品は無いよ。断言できる。少なくとも彼は今までの私の無理難題や要望に付き合ってくれた最高の友だ。この研究所だって動力含めて彼が…」
さながら犬のように尻尾を振りながら話していた彼女だが、そこまで言うと少し止まって苦笑いしながら頭に手を当てた。
「すまない、話しすぎたかな。彼にもよく言われるんだお前は話が長いってね」
猫背になっていた彼女は姿勢を正すと
「とにかく内容はまだ知らないが多分たいていの事、鍛治でも木工でも高度な技術で作れるよ」
その言葉を聞くとカイムは安心した表情を浮かべながら頷いた。
「この事は他言無用でお願いします」
カイムの言葉にアルブレヒトは少し考えたが
「内容による。ヤバい物なら君らを追い出し関わらない。面白そうなら話を聞く。私の信条は人生を楽しくなんだよ」
と返した。
「それなら、きっと楽しいですよ」
カイムは笑いながらテーブルの狭いスペースいっぱいに手に持つ紙を広げた。
「何しろ帝国最大の秘密兵器の概略図ですから」
カイムはアマデウスに持たせていた荷物を指差した。カイムが背負っておきたかった荷物だったが、アマデウスの僕が持つの一点張りに負けたのだった。荷物には麻の袋に入った長細いものがいくつか刺さっていた。
「カエル執事君、君名前有るなら教えてくれてもいいんじゃないか?」
「いやぁ、最近付いたばかりなんですよ。アマデウス・ルーデンドルフっていうんです。カイムに付けてもらったんですよ。」
アルブレヒトの一言にアマデウスは頭を掻きながら照れ臭そうに答えた。
「アマデウスルーデンドルフ?アマデウス=ルーデンドルフかい?貴族婚でもないのに二重名かい?」
アルブレヒトの言葉にアマデウスは固まった。自身がカイムに、姓と名の2つによる疑念や不安について文句を言っていたのに、自分でその状態を作りかけていた。
「南部だとそういう付け方を勝手にしている辺境が有るんです。自分を表す名と、一族を表す姓に分けるんですよ。言いたくないですけど田舎者なんですよ。自己紹介遅れましたね、私はカイム・リイトホーフェンと言います。以後ともよろしく」
カイムのフォローが入ると、アルブレヒトは口をへの字に曲げて頷き
「カイム・リイトホーフェンねぇ」
と呟くとアマデウスの荷物に目を向けた。アマデウスはカイムに目配せすると少し慌てながら荷物に手を付けた。
「あれって言っても…どれにするんだい?僕には決めかねるよ」
アマデウスは袋を掻き分けながら言ったが、カイムの何でも良いという視線に
「これで良いや」
と呟きながら一本取り出した。
「何だねカイム君とやら、それは?音からして中身は紙かい?薬の調合や効能とか書いてあるには大きすぎるね」
アルブレヒトは疑問を投げかけた。アマデウスは袋の口を開きながら中の紙の筒をカイムに渡した。紙を縛る紐を取ろうとしたがその手を止めた。
「アルブレヒトさん、先にいくつか聞いておいてもいいですか?」
彼の言葉に、彼女は目を閉じ俯きながら手を差し向けて話を促した。
「何かな?答えられる範囲では答えるよ。スリーサイズと年齢は絶対に教えないから。女性には知られたくない事がいっぱい有るからねぇ」
彼女は不敵な笑みを浮かべながら顔を上げた。
「あなたは、失礼かもしれないですが敢えて言いますけど小柄ですよね。壁の物とかこの建物とかはあなたが作ったんですか?」
このカイムの疑問に快活に笑いながら彼女は答えた。
「私はご存知錬金術師でね。頭は回るが力は女と言うこともあるが、騎士殿と違って弱くてね。設計とか理論は創るが、作ったのは別だよ」
その言葉を聞いて、カイムは質問を続けた。「その人はどれくらいの事をどれくらいの技術でできるんですか?」
「成る程、君の依頼は薬品ではないが理論と技術のいる…予測だが武器の類いかね?切れ味については研究したことがないが…彼は剣くらいならこの首都で彼の作品以上の品は無いよ。断言できる。少なくとも彼は今までの私の無理難題や要望に付き合ってくれた最高の友だ。この研究所だって動力含めて彼が…」
さながら犬のように尻尾を振りながら話していた彼女だが、そこまで言うと少し止まって苦笑いしながら頭に手を当てた。
「すまない、話しすぎたかな。彼にもよく言われるんだお前は話が長いってね」
猫背になっていた彼女は姿勢を正すと
「とにかく内容はまだ知らないが多分たいていの事、鍛治でも木工でも高度な技術で作れるよ」
その言葉を聞くとカイムは安心した表情を浮かべながら頷いた。
「この事は他言無用でお願いします」
カイムの言葉にアルブレヒトは少し考えたが
「内容による。ヤバい物なら君らを追い出し関わらない。面白そうなら話を聞く。私の信条は人生を楽しくなんだよ」
と返した。
「それなら、きっと楽しいですよ」
カイムは笑いながらテーブルの狭いスペースいっぱいに手に持つ紙を広げた。
「何しろ帝国最大の秘密兵器の概略図ですから」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する
雨香
恋愛
美醜の感覚のズレた異世界に落ちたリリがスパダリイケメン達に溺愛されていく。
ヒーロー大好きな主人公と、どう受け止めていいかわからないヒーローのもだもだ話です。
逆ハーレム風の過保護な溺愛を楽しんで頂ければ。
1日2回 7:00 19:00 に更新します。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

転生テイマー、異世界生活を楽しむ
さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる