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第1話 プロローグ 前門の車と後門の少女
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墓石の掃除を終え、火のついた線香と花屋さんに見繕ってもらったいくつかの花を供える。
「これでよし!今度は気が向いたら来るよ。…あとこの1年考えてみたけど、父さんの言ってた『自由』の意味はよくわかんなかったよ」
一息つき墓参りを終えると僕は報告した。
父の口癖は『自由に生きろ』というものだった。何で父は僕にそれを何度も口走っていたのだろうか。高校一年生までしか生きていない僕に『自由』の意味は理解出来なかった。だから父がどんな思いでそれを口にしていたのかもわからずじまいである。僕の父は僕の理想だから。それがとても残念であった。
歩道へ続く階段を降り、人通りのない交差点の方向へと歩いていく。
両親の墓参りは今日で1年だ。最初の1年だけはいつ誰が来てもいいように、両親の墓参りを積極的に行ってきた。正直言ってめんどくさいと思う日もがある。だが仕方がない。これは見栄だから。せっかく墓参りをしに来てくれた人が、手入れされていない状態の両親の墓を見たらなんと思うのだろうか。それを考えるとやはり行くしかないという気分になる。
だがそれも今日で終わりだ。さすがに両親の知人も1年もあれば来たい人は来るだろう。いつまでも両親のことを引きずってはいられない。だから次回は行けたら行こうと思っている。そう行けたら行くのである。
そう思うとこの何気ない景色がとても感慨深い気がする。なぜならこの景色はしばらく見ることがなくなるからだ。例えるならそれは中学の最後の卒業式で下校するときの気分である。両親の墓をクラスメイトに例え、勝手に悦に浸る。
「なんてね…」
周囲に人気がないため、独り言を呟いた。友達を墓で例えるのは縁起が悪い。ただ僕が言いたいのは、今見ている建物や歩いている道路もいつか懐かしいと思う日が来るということだ。何年後かに墓参りに来るときにきっと正解がわかるだろう。
交差点の歩道で信号が青になるの待っていると、いつも通りの景色を記憶に収めるために周囲を振り返る。夕日に照らされた雲。ぱっとしない町並み。そしていつも渡っている横断歩道…の向こう側にいる体からオーラが迸《ほとばし》る子ども。
「…な!?」
人は理解できないものに出会うと驚き、一瞬体が硬直する。僕もそれには逆らえない。なぜならその子どもは漫画やアニメに出てくるようなオーラを発しているからだ。
なんなんだあれは!横断歩道の向こう側に立っている子どもはローブを着ているため、顔も隠されており全体像が掴めない。わかるのは僕の驚いた顔を見て夕日に照らされた口元がにやついていること。そしてこれから僕が何かをされることである。
横断歩道の信号が青になるとその子供が僕のほうに一歩また一歩と歩みを進める。はっとして体の硬直が解けた僕は、さきほど歩いてきた方向へ逃げようとする。
今まであまりやったことのない全身全霊のダッシュをすると決め、右足のつまさきを後ろへ向けて足のバネを縮める。正直何がなんだか理解しきれず頭の中が沸騰している。無我夢中で足を前に出すことだけしか考えることができないくらいだ。
だが前に出した足が地面についた瞬間、今度は理解できるけれど理解したくない光景が目に入る。それは黒塗りの車が僕に向かって突っ込んでいるものであった。しかもそこそこの速さで迫ってきている。まず間違いなく避けられない。
「あ。…死ぬ」
僕は否が応でも覚悟させられた。だがそのとき後ろから偉そうで鋭い女の子の声が聞こえた。
「甘いわぁ!」
この声からローブの中身は少女のようだ。恐らく走ってきただろう少女は勢いのまま僕に抱きつき、タックルをするように地面に押し倒した。そしてその瞬間、地面に発生したブラックホールに似た何かに呑《の》み込まれ僕の意識が途切れた。
そして目が覚めた。
黒髪黒目、黒いTシャツと足首が少し見えるズボンを着ている僕。そして見知らぬ森。そう異世界である(たぶん)。
ーーーーーーーーーーー
はじめましてinoinoです。
こちらは初めての作品であり、見切り発車で少しずついいものが出来たらいいなと思って進めております。
評価をもらえると励みになり、見切り発車をしている作者の燃料となります。
作者自身もそれに応えられるよう走っていきたいと思っています。
そこそこ努力していきますので、よろしくお願いします!
「これでよし!今度は気が向いたら来るよ。…あとこの1年考えてみたけど、父さんの言ってた『自由』の意味はよくわかんなかったよ」
一息つき墓参りを終えると僕は報告した。
父の口癖は『自由に生きろ』というものだった。何で父は僕にそれを何度も口走っていたのだろうか。高校一年生までしか生きていない僕に『自由』の意味は理解出来なかった。だから父がどんな思いでそれを口にしていたのかもわからずじまいである。僕の父は僕の理想だから。それがとても残念であった。
歩道へ続く階段を降り、人通りのない交差点の方向へと歩いていく。
両親の墓参りは今日で1年だ。最初の1年だけはいつ誰が来てもいいように、両親の墓参りを積極的に行ってきた。正直言ってめんどくさいと思う日もがある。だが仕方がない。これは見栄だから。せっかく墓参りをしに来てくれた人が、手入れされていない状態の両親の墓を見たらなんと思うのだろうか。それを考えるとやはり行くしかないという気分になる。
だがそれも今日で終わりだ。さすがに両親の知人も1年もあれば来たい人は来るだろう。いつまでも両親のことを引きずってはいられない。だから次回は行けたら行こうと思っている。そう行けたら行くのである。
そう思うとこの何気ない景色がとても感慨深い気がする。なぜならこの景色はしばらく見ることがなくなるからだ。例えるならそれは中学の最後の卒業式で下校するときの気分である。両親の墓をクラスメイトに例え、勝手に悦に浸る。
「なんてね…」
周囲に人気がないため、独り言を呟いた。友達を墓で例えるのは縁起が悪い。ただ僕が言いたいのは、今見ている建物や歩いている道路もいつか懐かしいと思う日が来るということだ。何年後かに墓参りに来るときにきっと正解がわかるだろう。
交差点の歩道で信号が青になるの待っていると、いつも通りの景色を記憶に収めるために周囲を振り返る。夕日に照らされた雲。ぱっとしない町並み。そしていつも渡っている横断歩道…の向こう側にいる体からオーラが迸《ほとばし》る子ども。
「…な!?」
人は理解できないものに出会うと驚き、一瞬体が硬直する。僕もそれには逆らえない。なぜならその子どもは漫画やアニメに出てくるようなオーラを発しているからだ。
なんなんだあれは!横断歩道の向こう側に立っている子どもはローブを着ているため、顔も隠されており全体像が掴めない。わかるのは僕の驚いた顔を見て夕日に照らされた口元がにやついていること。そしてこれから僕が何かをされることである。
横断歩道の信号が青になるとその子供が僕のほうに一歩また一歩と歩みを進める。はっとして体の硬直が解けた僕は、さきほど歩いてきた方向へ逃げようとする。
今まであまりやったことのない全身全霊のダッシュをすると決め、右足のつまさきを後ろへ向けて足のバネを縮める。正直何がなんだか理解しきれず頭の中が沸騰している。無我夢中で足を前に出すことだけしか考えることができないくらいだ。
だが前に出した足が地面についた瞬間、今度は理解できるけれど理解したくない光景が目に入る。それは黒塗りの車が僕に向かって突っ込んでいるものであった。しかもそこそこの速さで迫ってきている。まず間違いなく避けられない。
「あ。…死ぬ」
僕は否が応でも覚悟させられた。だがそのとき後ろから偉そうで鋭い女の子の声が聞こえた。
「甘いわぁ!」
この声からローブの中身は少女のようだ。恐らく走ってきただろう少女は勢いのまま僕に抱きつき、タックルをするように地面に押し倒した。そしてその瞬間、地面に発生したブラックホールに似た何かに呑《の》み込まれ僕の意識が途切れた。
そして目が覚めた。
黒髪黒目、黒いTシャツと足首が少し見えるズボンを着ている僕。そして見知らぬ森。そう異世界である(たぶん)。
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はじめましてinoinoです。
こちらは初めての作品であり、見切り発車で少しずついいものが出来たらいいなと思って進めております。
評価をもらえると励みになり、見切り発車をしている作者の燃料となります。
作者自身もそれに応えられるよう走っていきたいと思っています。
そこそこ努力していきますので、よろしくお願いします!
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