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第三章 悩める剣士との出会い
第70話 アドレーヌの決意
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アドレーヌ視点
「ここで間違いないの?ザックス」
「はい。この教会の庭でアリシア様が子供たちに剣術を教えてるはずです」
「これは見つからないはずね・・・」
私はザックスからの報告を受けて、アリシアを連れ戻すべく、目の前のボロボロの教会を訪れていた。
てっきり街の剣術道場にいるとばかり思っていたアリシア。まさかこんな所にいるなんて信じられない。
ワタル様は、今日は商業ギルドに行っており、ユキナちゃんとノーミー様は屋敷にいるはずだ。
ギギギ
ザックスが教会の古ぼけた扉を開ける。
「・・・アリシア」
「ワタ・・・なっ!ザックス様・・・アリシア・・・」
「ようやく見つけたわよアリシア!」
ザックスに続いて教会に入ると、三ヶ月前とはずいぶん違う姿のアリシアがドリュアス様の像の前で佇んでいた。
誰かを待っていたようだが、現れたのが私とザックスだったため驚いている様子だ。
「久しぶりねアリシア。髪を切ったのね・・・それに少しやつれたみたい」
以前は腰まであったきれいな金色の髪は短くなり後ろでまとめてある。
それじゃますます殿方が近づいて来ないだろう。
「無事で何よりだアリシア」
「・・・・・・ザックス様」
バッ!
「急にいなくなるなんて・・・どれだけ心配したと思っているの?」
「すまないアリシア」
思わず抱き締めてしまったアリシアの体は三ヶ月前と同じで引き締まった体をしていた。剣術の修行は続けているのだろう。
「どうして何も言わずに王都から居なくなったの?」
「私はマリアを手に掛けてしまった・・・もう王都には戻れない・・・」
「それは事故でしょ?あなたが故意にマリアを傷つけるはずないわ」
体を離した私はアリシアの顔を見ると、唇を噛んで俯いている。
「アリシア・・・あれは不幸な事故だった。戦場に出る以上マリア様も覚悟していたことだ」
「ザックスの言うとおりだわ!幸いマリアは日常生活には支障ない位に回復してる。そのうち剣術だって・・・」
「そ、そうか・・・マリアは元気なのか・・・良かった」
マリアの事を話すとどこかホッとしたような表情を浮かべる。
「あの子もアリシアの事を許しているわ!だからね!戻りましょ?剣聖の御前試合も近いわ・・・」
「そうだな・・・私もアリシアが居ないと張り合いがないからな・・・」
「すまない・・・アリシア、ザックス様。私は剣聖になる資格はないんだ」
「どうして!?」
(なんでそんな顔をしてるのアリシア。いつもの自信たっぷりな態度はどこへいってしまったのよ!まるで別人じゃない!)
「私は・・・私はあの日以来剣が持てなくなってしまったんだ」
「なんですって!」
「本当なのかアリシア!」
「私だって何度も剣をとろうしたさ・・・でも駄目なんだ・・・どうしてもマリアの顔がうかんでしまう」
「そんな・・・そんなのって・・・」
冗談でこんな事は言わないアリシア。今も手が震えて絞り出すように声を出している。
「夜寝ていると夢の中でマリアが言うんだよ。「姉上どうして私を切ったの?」「なんで敵と間違えたりしたの?」その度に謝りながら飛び起きる」
「・・・アリシア」
「分かっただろアドレーヌ。こんな軟弱な剣士・・・もう剣士じゃないな・・・剣聖の資格があるはずがない」
悲しそうにドリュアス様の像を見上げて呟くアリシア。
試合になれば相手の剣戟を華麗にかわし、目にも止まらぬ一閃を相手に食らわせる剣姫、妖精姫と呼ばれた姿はどこにもいない。
ドリュアス様の像はそんなアリシアを静かに見ているだけだ。
「・・・・・・・・・」
「そんな顔をしないでくれアドレーヌ。今の生活も気に入っているんだ」
「・・・そんなの嘘よ」
「嘘じゃないさ・・・最近やらなくてはいけない事もできたんだ」
「私は諦めないわ・・・あなたは私の親友で将来近衛騎士になるのよ!」
「・・・アドレーヌ」
「今日は帰るけど、絶対にあなたを連れ戻すわ!覚悟しておきなさいアリシア!」
「行きましょうザックス!」
「アドレーヌ様・・・アリシアくれぐれも早まった真似はするなよ!」
「・・・はいザックス様」
ギギギ・・・バタン
「私は諦めないわよ・・・絶対にアリシアを立ち直せるわ!」
「アドレーヌ様。私は急ぎこの事を陛下にご報告したいと思います。アドレーヌ様の警備は部下に任せますが、くれぐれも危険な真似はせぬようにお願いします」
「ええ・・・分かったわ」
今の生活が気に入っている?
やることができた?
冗談じゃない!
それならなんであんな悲しそうに笑うのよ!
私は決意を新たにするも、方法がわからないまま馬車に乗り込んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
面白い、続きが気になるという方はいいねや感想を頂ければ嬉しいです♪
「ここで間違いないの?ザックス」
「はい。この教会の庭でアリシア様が子供たちに剣術を教えてるはずです」
「これは見つからないはずね・・・」
私はザックスからの報告を受けて、アリシアを連れ戻すべく、目の前のボロボロの教会を訪れていた。
てっきり街の剣術道場にいるとばかり思っていたアリシア。まさかこんな所にいるなんて信じられない。
ワタル様は、今日は商業ギルドに行っており、ユキナちゃんとノーミー様は屋敷にいるはずだ。
ギギギ
ザックスが教会の古ぼけた扉を開ける。
「・・・アリシア」
「ワタ・・・なっ!ザックス様・・・アリシア・・・」
「ようやく見つけたわよアリシア!」
ザックスに続いて教会に入ると、三ヶ月前とはずいぶん違う姿のアリシアがドリュアス様の像の前で佇んでいた。
誰かを待っていたようだが、現れたのが私とザックスだったため驚いている様子だ。
「久しぶりねアリシア。髪を切ったのね・・・それに少しやつれたみたい」
以前は腰まであったきれいな金色の髪は短くなり後ろでまとめてある。
それじゃますます殿方が近づいて来ないだろう。
「無事で何よりだアリシア」
「・・・・・・ザックス様」
バッ!
「急にいなくなるなんて・・・どれだけ心配したと思っているの?」
「すまないアリシア」
思わず抱き締めてしまったアリシアの体は三ヶ月前と同じで引き締まった体をしていた。剣術の修行は続けているのだろう。
「どうして何も言わずに王都から居なくなったの?」
「私はマリアを手に掛けてしまった・・・もう王都には戻れない・・・」
「それは事故でしょ?あなたが故意にマリアを傷つけるはずないわ」
体を離した私はアリシアの顔を見ると、唇を噛んで俯いている。
「アリシア・・・あれは不幸な事故だった。戦場に出る以上マリア様も覚悟していたことだ」
「ザックスの言うとおりだわ!幸いマリアは日常生活には支障ない位に回復してる。そのうち剣術だって・・・」
「そ、そうか・・・マリアは元気なのか・・・良かった」
マリアの事を話すとどこかホッとしたような表情を浮かべる。
「あの子もアリシアの事を許しているわ!だからね!戻りましょ?剣聖の御前試合も近いわ・・・」
「そうだな・・・私もアリシアが居ないと張り合いがないからな・・・」
「すまない・・・アリシア、ザックス様。私は剣聖になる資格はないんだ」
「どうして!?」
(なんでそんな顔をしてるのアリシア。いつもの自信たっぷりな態度はどこへいってしまったのよ!まるで別人じゃない!)
「私は・・・私はあの日以来剣が持てなくなってしまったんだ」
「なんですって!」
「本当なのかアリシア!」
「私だって何度も剣をとろうしたさ・・・でも駄目なんだ・・・どうしてもマリアの顔がうかんでしまう」
「そんな・・・そんなのって・・・」
冗談でこんな事は言わないアリシア。今も手が震えて絞り出すように声を出している。
「夜寝ていると夢の中でマリアが言うんだよ。「姉上どうして私を切ったの?」「なんで敵と間違えたりしたの?」その度に謝りながら飛び起きる」
「・・・アリシア」
「分かっただろアドレーヌ。こんな軟弱な剣士・・・もう剣士じゃないな・・・剣聖の資格があるはずがない」
悲しそうにドリュアス様の像を見上げて呟くアリシア。
試合になれば相手の剣戟を華麗にかわし、目にも止まらぬ一閃を相手に食らわせる剣姫、妖精姫と呼ばれた姿はどこにもいない。
ドリュアス様の像はそんなアリシアを静かに見ているだけだ。
「・・・・・・・・・」
「そんな顔をしないでくれアドレーヌ。今の生活も気に入っているんだ」
「・・・そんなの嘘よ」
「嘘じゃないさ・・・最近やらなくてはいけない事もできたんだ」
「私は諦めないわ・・・あなたは私の親友で将来近衛騎士になるのよ!」
「・・・アドレーヌ」
「今日は帰るけど、絶対にあなたを連れ戻すわ!覚悟しておきなさいアリシア!」
「行きましょうザックス!」
「アドレーヌ様・・・アリシアくれぐれも早まった真似はするなよ!」
「・・・はいザックス様」
ギギギ・・・バタン
「私は諦めないわよ・・・絶対にアリシアを立ち直せるわ!」
「アドレーヌ様。私は急ぎこの事を陛下にご報告したいと思います。アドレーヌ様の警備は部下に任せますが、くれぐれも危険な真似はせぬようにお願いします」
「ええ・・・分かったわ」
今の生活が気に入っている?
やることができた?
冗談じゃない!
それならなんであんな悲しそうに笑うのよ!
私は決意を新たにするも、方法がわからないまま馬車に乗り込んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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