79 / 84
第三章 悩める剣士との出会い
第68話 アリシアとのデート②
しおりを挟む
「・・・ワタルは一体何者なんだ?」
アリシアの射抜くような緑色の瞳が俺をじっと見ている。
「・・・・・・・・・」
「なぜ妖精様と一緒にいて、ドリュアス様のお姿を知っている?」
「やっぱりウェンディの姿が見えていたか?」
「ああ。それにその尋常ではない幼霊の数・・・一般人であるはずがない」
ここで誤魔化すのは簡単だ。昔から妖精や精霊に愛される体質だとでも言えばいいかも知れない。
しかし、ドリュアス様がアリシアと話をしろと言った。ある程度誠実に答えるべきだな。
「俺の事を話す前にあなたの事を教えてくれ。迂闊に喋れる内容ではないから、アリシアの事を知っておきたい」
「ふぅーそうだな・・・確かにワタルの言うとおりだ。私の名前はアリシア・ラインハート。妖精が見える理由は王族の血を引いているだからだ」
「王族・・・」
「私は三ヶ月程前にシップブリッジに来た。理由は聞かないでくれ・・・昔のツテを辿ってあの教会に世話になっている」
「そうか・・・妖精が見える理由は分かった。それじゃ俺の番だな」
アリシアはまさかの王族だった。やっぱりただのアリシアではなかった。
「俺は転生者だ・・・地球という場所から来た。精霊はドリュアス様しか会ったことがないが色々助けてくれる。この世界に転生した時に出会った風の妖精ウェンディに俺が妖精や精霊に愛される体質だと聞いた。なんでそうなったか理由は分からない」
「な、なんと・・・そうであったか・・・まるでガンテツ様のようだ・・・」
「ウェンディからも同じことを言われたよ」
「・・・・・・・・・」
「アリシアどうした?」
急に黙り込んだアリシアは、何かを決意したように顔を上げる。
「ワタル。話してくれてありがとう。それに付きまとって申し訳ない。それより腹は減ってないか?美味しい所を知っているんだ。一緒にどうだろうか?」
「俺も秘密にするからアリシアも頼む。そうだな飯にしよう」
「よし!それじゃ行こうか!」
俺は先程よりも積極的に俺の手を握るアリシアに連れられて教会を後にした。
チラリと後ろを振り向いた時に、緑色のドレスが目に入ったが気にしないことにした。
・・・・・・・・・
「・・・なんかすごい見られているな」
「ほらもうすぐだ!」
そりゃこんな美人に手を引かれていれば嫌でも目立つ。
注目を集めながら大通りを急ぎ足で歩いていると少し大きめの宿屋が見えてきた。
その宿屋の看板にはレストランのマークもある。
カランカラン
何の躊躇もなく宿屋の扉を開けるアリシア。
パッと見回すと客の入りは3割ほどだろうか。
「いらっしゃいませ!ってアリシアさん!」
「ああそうだ!二階の個室は空いているか?」
「え、ええ・・・空いてますけど・・・今日はすごい気合入ってますね」
「き、気合など入っていない!普段着だ!」
「そ、そうですか・・・」
「2名だ!案内してくれ!」
チラリ
「ははーん・・・そう言うことですか・・・後でお話を聞きますね・・・」
「早くしてくれ!」
「はいはい・・・2名様ご案内しまーす!」
「アリシアはここには良く来るのか?」
「ま、まぁな」
受付の女性とのやり取りを見るとアリシアは常連のようだ。
案内されるままに二階の個室にいく。一階にいたカップルの男性がアリシアに見とれて、相手の女性に小突かれているのが分かった。
・・・・・・
「それにしてもアリシアは俺なんかと食事をしていいのか?お相手がいるなら変な誤解をされてしまうぞ」
「お相手など生まれてこの方いないから安心してくれ!今は剣が恋人だ」
「そ、そうか。ならいいが・・・たくさんの男性が寄ってきそうだと思ってな」
「何故か周りの男性は遠巻きに見ているだけで近寄ってこない。寄ってくるのは女性だけだ」
「その女性たちにお姉さん様と呼ばれているだろ?」
「なぜわかる!?」
まさに高嶺の花という言葉が似合うアリシア。多分同性に告白されることも多いだろう。
「実はこんな格好は初めてなんだ・・・親友に教えてもらったけれど実践した事はない」
「へぇー似合うのに勿体ないな」
「そ、そうか・・・それはありがとう・・・」
顔を赤くしてモジモジしたアリシア。酒のせいだろうか?
・・・・・・・・・
「ワタルは恋人はいにゃいのか?」
「おい。少し飲み過ぎだぞ!そのへんにしておけ」
始めはビールを飲んでいたアリシアだが、そのうちワインを頼むようになり、グイグイ飲んでいった。
付き合いで飲み会に行っていた俺なら分かるが、これは自分のペース配分が分からない新人の飲み方だ。
「らいじょうぶ!それより恋人はいないのか?答えるまで質問するぞ!」
「分かった!分かった!今まで恋人はいたことはない。これで満足か?」
「へへへ・・・そうか・・・私と同じだな・・・」
「そうだな・・・そろそろお開きにしようっておい!」
「Zzzz・・・」
「まじかよ」
寝てやがる。アリシアはテーブルに突っ伏したスヤスヤと寝息を立てていた。
おいおいどうするんだこれ?
「あのーそろそろラストオーダーなんですけど・・・あらーアリシアさん寝てますね」
「あっ!ちょうどよかった!お会計お願いします」
「はーい!」
「ずいぶんとアリシアと仲が良さそうですけど、どこに住んでいるか分かりますか?」
「あはは!送ってくれんですね?それなら大丈夫ですよ!」
「ん?」
「アリシアさんはこの宿に住んでますから!ちなみに隣の部屋です」
「へ?そうなの?」
「お部屋の鍵持ってきますから、お部屋まで送ってあげてください彼氏さん!」
「彼氏じゃないですけど!」
俺は、受け付けの女性に誤解されたままアリシアを部屋に送り届ける事にした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
面白い、続きが気になるという方はいいねや感想を頂ければ嬉しいです♪
アリシアの射抜くような緑色の瞳が俺をじっと見ている。
「・・・・・・・・・」
「なぜ妖精様と一緒にいて、ドリュアス様のお姿を知っている?」
「やっぱりウェンディの姿が見えていたか?」
「ああ。それにその尋常ではない幼霊の数・・・一般人であるはずがない」
ここで誤魔化すのは簡単だ。昔から妖精や精霊に愛される体質だとでも言えばいいかも知れない。
しかし、ドリュアス様がアリシアと話をしろと言った。ある程度誠実に答えるべきだな。
「俺の事を話す前にあなたの事を教えてくれ。迂闊に喋れる内容ではないから、アリシアの事を知っておきたい」
「ふぅーそうだな・・・確かにワタルの言うとおりだ。私の名前はアリシア・ラインハート。妖精が見える理由は王族の血を引いているだからだ」
「王族・・・」
「私は三ヶ月程前にシップブリッジに来た。理由は聞かないでくれ・・・昔のツテを辿ってあの教会に世話になっている」
「そうか・・・妖精が見える理由は分かった。それじゃ俺の番だな」
アリシアはまさかの王族だった。やっぱりただのアリシアではなかった。
「俺は転生者だ・・・地球という場所から来た。精霊はドリュアス様しか会ったことがないが色々助けてくれる。この世界に転生した時に出会った風の妖精ウェンディに俺が妖精や精霊に愛される体質だと聞いた。なんでそうなったか理由は分からない」
「な、なんと・・・そうであったか・・・まるでガンテツ様のようだ・・・」
「ウェンディからも同じことを言われたよ」
「・・・・・・・・・」
「アリシアどうした?」
急に黙り込んだアリシアは、何かを決意したように顔を上げる。
「ワタル。話してくれてありがとう。それに付きまとって申し訳ない。それより腹は減ってないか?美味しい所を知っているんだ。一緒にどうだろうか?」
「俺も秘密にするからアリシアも頼む。そうだな飯にしよう」
「よし!それじゃ行こうか!」
俺は先程よりも積極的に俺の手を握るアリシアに連れられて教会を後にした。
チラリと後ろを振り向いた時に、緑色のドレスが目に入ったが気にしないことにした。
・・・・・・・・・
「・・・なんかすごい見られているな」
「ほらもうすぐだ!」
そりゃこんな美人に手を引かれていれば嫌でも目立つ。
注目を集めながら大通りを急ぎ足で歩いていると少し大きめの宿屋が見えてきた。
その宿屋の看板にはレストランのマークもある。
カランカラン
何の躊躇もなく宿屋の扉を開けるアリシア。
パッと見回すと客の入りは3割ほどだろうか。
「いらっしゃいませ!ってアリシアさん!」
「ああそうだ!二階の個室は空いているか?」
「え、ええ・・・空いてますけど・・・今日はすごい気合入ってますね」
「き、気合など入っていない!普段着だ!」
「そ、そうですか・・・」
「2名だ!案内してくれ!」
チラリ
「ははーん・・・そう言うことですか・・・後でお話を聞きますね・・・」
「早くしてくれ!」
「はいはい・・・2名様ご案内しまーす!」
「アリシアはここには良く来るのか?」
「ま、まぁな」
受付の女性とのやり取りを見るとアリシアは常連のようだ。
案内されるままに二階の個室にいく。一階にいたカップルの男性がアリシアに見とれて、相手の女性に小突かれているのが分かった。
・・・・・・
「それにしてもアリシアは俺なんかと食事をしていいのか?お相手がいるなら変な誤解をされてしまうぞ」
「お相手など生まれてこの方いないから安心してくれ!今は剣が恋人だ」
「そ、そうか。ならいいが・・・たくさんの男性が寄ってきそうだと思ってな」
「何故か周りの男性は遠巻きに見ているだけで近寄ってこない。寄ってくるのは女性だけだ」
「その女性たちにお姉さん様と呼ばれているだろ?」
「なぜわかる!?」
まさに高嶺の花という言葉が似合うアリシア。多分同性に告白されることも多いだろう。
「実はこんな格好は初めてなんだ・・・親友に教えてもらったけれど実践した事はない」
「へぇー似合うのに勿体ないな」
「そ、そうか・・・それはありがとう・・・」
顔を赤くしてモジモジしたアリシア。酒のせいだろうか?
・・・・・・・・・
「ワタルは恋人はいにゃいのか?」
「おい。少し飲み過ぎだぞ!そのへんにしておけ」
始めはビールを飲んでいたアリシアだが、そのうちワインを頼むようになり、グイグイ飲んでいった。
付き合いで飲み会に行っていた俺なら分かるが、これは自分のペース配分が分からない新人の飲み方だ。
「らいじょうぶ!それより恋人はいないのか?答えるまで質問するぞ!」
「分かった!分かった!今まで恋人はいたことはない。これで満足か?」
「へへへ・・・そうか・・・私と同じだな・・・」
「そうだな・・・そろそろお開きにしようっておい!」
「Zzzz・・・」
「まじかよ」
寝てやがる。アリシアはテーブルに突っ伏したスヤスヤと寝息を立てていた。
おいおいどうするんだこれ?
「あのーそろそろラストオーダーなんですけど・・・あらーアリシアさん寝てますね」
「あっ!ちょうどよかった!お会計お願いします」
「はーい!」
「ずいぶんとアリシアと仲が良さそうですけど、どこに住んでいるか分かりますか?」
「あはは!送ってくれんですね?それなら大丈夫ですよ!」
「ん?」
「アリシアさんはこの宿に住んでますから!ちなみに隣の部屋です」
「へ?そうなの?」
「お部屋の鍵持ってきますから、お部屋まで送ってあげてください彼氏さん!」
「彼氏じゃないですけど!」
俺は、受け付けの女性に誤解されたままアリシアを部屋に送り届ける事にした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
面白い、続きが気になるという方はいいねや感想を頂ければ嬉しいです♪
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説


幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。


平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します
湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。
そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。
しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。
そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。
この死亡は神様の手違いによるものだった!?
神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。
せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!!
※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる