74 / 84
第三章 悩める剣士との出会い
第63話 剣術修行
しおりを挟む
ブン!ブン!ブン!
俺はひたすらトゲバットを素振りしている。実際にはこんなかっこいい音は出ていないがイメージとしては、トゲバットが空を切って音が鳴っている。
「はぁはぁはぁ・・・きつい・・・体力には自信があったんだけどな~・・・」
「おじさんもう疲れちゃったの?」
「全然弱々じゃん」
「変な木刀持ってる~」
さて、何で俺がこんな事をしているかと言うと、剣術修行を始めたからに他ならない。
木の精霊教会で熱烈に俺を勧誘してきた女性(マシューさん)は、現在の剣術師範と司祭を兼ねている一人の初老の男性を連れてきた。
その男性(ケインさん)も俺に付いている幼霊を見て驚いていたが、特に勧誘することもなかった。
どうやらここは剣術を教えてくれる代わりに木の精霊教会に興味を持ってもらう所らしい。
この教会は孤児院も併設されており、マシューさんが子供のお世話をしているそうだ。
子どもたちがマシューさんを見習ったら将来たくましく育ちそうだと思ったが、けして口にしない。
ケインさんは以前ミルフィーユ王国の騎士団にいたそうだが、引退後、ここの修道士の女性と結婚した。
その奥様はずいぶん昔に亡くなったようで、今はケインさんが司祭として教会を運営している。
しかし、教会の運営は建物を見る限り芳しくないようだ。ミルフィーユ王国は木の精霊も信仰の対象だが、やはり風の精霊信仰の方が主流。
それに加えて真剣に剣を志すものは街の由緒ある道場へ行く。
ここはあくまでも教会で、剣を教えるのはオマケみたいなものだ。
だから、必然的に孤児院の子供や成り立て冒険者などしか集まらない。そのような者たちに寄付を期待するほうが無理がある。
とまぁそんな教会兼剣術道場に俺は来たわけだ。
いくらボロ道場でも初めから剣術を教えてくれるわけもなくケインさんは俺に体力づくりから始めるように言った。
小一時間、庭をグルグルとランニングして、今は素振りを繰り返している。
もう剣術というより筋肉をつけるためにスポーツジムに通っている感覚だ。
俺の素人丸出しの素振りに子どもたちが馬鹿にしてるけど、体を動かすのは嫌いじゃない。
師範はやはり歳なのか子どもたちに稽古を付けると言うより見守っている感じで、時々様子を観に来てはすぐに引っ込んでしまう。
こんな剣術道場では流行りはしないだろうと改めて思った。
「マシューさんはすごいですね。一人で孤児院を切り盛りしてるなんて・・・」
「そんな事ないですよ。私もここの孤児院の出身で恩返しのつもりでやってます・・・それよりこんなに頂いてよろしいのですか?」
「これは今日のお礼です。気にしないでください」
一通り稽古?が終わったあと、マシューさんに誘われて昼食を取っている。
誘われたと言っても無償はまずいので、収納ボックスに入っている食材を提供することにした。
じーーー・・・
俺がマシューさんと話していると、一番年長の男の子が俺をじっと見ているのに気づいた。名前は確かラック君だったかな?
「な、何かな?ラック君」
「お前はマシュー姉ちゃんが好きなのか?」
「ちょっとラック!何いってんの!?」
「俺は今日剣術を習いに来ただけだよ。マシューさんは魅力的な女性で尊敬できるけど好きとは違うかな?」
「そ、そんなワタルさん・・・魅力的なんて・・・」
「ふん!マシュー姉ちゃんに手を出したら承知しないからな!」
ダッダッダッ!
「おい!ラック君!」
「ねぇワタルさん・・・ラックはマシューお姉ちゃんが好きだから、とられるかもって思ったのよ」
「いやいやとらないよ」
「そうよミッシュ・・・ワタルさんとはお互いを知る所から始めているのよ」
キャーー!
マシューさんの発言に盛り上がる女子たち。
「ちょっとマシューさん!誤解を招く発言は困ります」
「あらあら?そうかしら?うふふ」
「危険よ!やっぱりこのデカパイは危険よ!」
「ウェンディは黙っててくれ!」
・・・・・・・・・
「ふぅ~まいった・・・」
俺は木の精霊教会で昼食をとったあと、屋敷に帰ることにした。
初日から子どもたちと仲良くなった事はいいが、変な誤解を与えてしまったようだ。
マシューさんは変な勧誘さえしなければ、魅力的な女性だと思う。
あの胸は別として、一人で孤児院を切り盛りしているは尊敬に値する。
昨今の日本では保育士の労働環境が問題になっていたのを思い出す。
何十人といる園児を限られた人数で面倒を見るのは大変だ。子供をゲガをさせないために神経を使い、トラブルがあれば親に気を使いながら解決しなければならないとニュースの特番で見た。
せめてもう少し待遇を改善してあげないと報われないよなぁと思ったものだ。
マシューさんはいくら孤児院の出身で恩があるとはいえ、ほぼ無償でやっているのだから頭が下がる。
「ワタル・・・付けられてるわ・・・」
「ん?・・・ああそうだな」
俺が保育士の将来の事を考えているとウェンディが警戒している声をあげた。
実は教会から出た時からずっと誰かにつけられているいるのは気づいていた。
しかし、不思議と悪い感情は伝わってこない・・・何故なら俺をつけている人物は木の幼霊がワンサカ付いているからだ。
「あの・・・俺になんか用ですか?」
「っ!・・・何故分かった?」
「いやそんなに木の幼霊が付いていれば分かりますよ。一面緑色だし・・・」
「そ、そうか・・・一体君は何者なんだ?」
「それ俺のセリフです」
そう言って柱の陰から金髪の美人剣士が姿を現した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
面白い、続きが気になるという方はいいねや感想を頂ければ嬉しいです♪
俺はひたすらトゲバットを素振りしている。実際にはこんなかっこいい音は出ていないがイメージとしては、トゲバットが空を切って音が鳴っている。
「はぁはぁはぁ・・・きつい・・・体力には自信があったんだけどな~・・・」
「おじさんもう疲れちゃったの?」
「全然弱々じゃん」
「変な木刀持ってる~」
さて、何で俺がこんな事をしているかと言うと、剣術修行を始めたからに他ならない。
木の精霊教会で熱烈に俺を勧誘してきた女性(マシューさん)は、現在の剣術師範と司祭を兼ねている一人の初老の男性を連れてきた。
その男性(ケインさん)も俺に付いている幼霊を見て驚いていたが、特に勧誘することもなかった。
どうやらここは剣術を教えてくれる代わりに木の精霊教会に興味を持ってもらう所らしい。
この教会は孤児院も併設されており、マシューさんが子供のお世話をしているそうだ。
子どもたちがマシューさんを見習ったら将来たくましく育ちそうだと思ったが、けして口にしない。
ケインさんは以前ミルフィーユ王国の騎士団にいたそうだが、引退後、ここの修道士の女性と結婚した。
その奥様はずいぶん昔に亡くなったようで、今はケインさんが司祭として教会を運営している。
しかし、教会の運営は建物を見る限り芳しくないようだ。ミルフィーユ王国は木の精霊も信仰の対象だが、やはり風の精霊信仰の方が主流。
それに加えて真剣に剣を志すものは街の由緒ある道場へ行く。
ここはあくまでも教会で、剣を教えるのはオマケみたいなものだ。
だから、必然的に孤児院の子供や成り立て冒険者などしか集まらない。そのような者たちに寄付を期待するほうが無理がある。
とまぁそんな教会兼剣術道場に俺は来たわけだ。
いくらボロ道場でも初めから剣術を教えてくれるわけもなくケインさんは俺に体力づくりから始めるように言った。
小一時間、庭をグルグルとランニングして、今は素振りを繰り返している。
もう剣術というより筋肉をつけるためにスポーツジムに通っている感覚だ。
俺の素人丸出しの素振りに子どもたちが馬鹿にしてるけど、体を動かすのは嫌いじゃない。
師範はやはり歳なのか子どもたちに稽古を付けると言うより見守っている感じで、時々様子を観に来てはすぐに引っ込んでしまう。
こんな剣術道場では流行りはしないだろうと改めて思った。
「マシューさんはすごいですね。一人で孤児院を切り盛りしてるなんて・・・」
「そんな事ないですよ。私もここの孤児院の出身で恩返しのつもりでやってます・・・それよりこんなに頂いてよろしいのですか?」
「これは今日のお礼です。気にしないでください」
一通り稽古?が終わったあと、マシューさんに誘われて昼食を取っている。
誘われたと言っても無償はまずいので、収納ボックスに入っている食材を提供することにした。
じーーー・・・
俺がマシューさんと話していると、一番年長の男の子が俺をじっと見ているのに気づいた。名前は確かラック君だったかな?
「な、何かな?ラック君」
「お前はマシュー姉ちゃんが好きなのか?」
「ちょっとラック!何いってんの!?」
「俺は今日剣術を習いに来ただけだよ。マシューさんは魅力的な女性で尊敬できるけど好きとは違うかな?」
「そ、そんなワタルさん・・・魅力的なんて・・・」
「ふん!マシュー姉ちゃんに手を出したら承知しないからな!」
ダッダッダッ!
「おい!ラック君!」
「ねぇワタルさん・・・ラックはマシューお姉ちゃんが好きだから、とられるかもって思ったのよ」
「いやいやとらないよ」
「そうよミッシュ・・・ワタルさんとはお互いを知る所から始めているのよ」
キャーー!
マシューさんの発言に盛り上がる女子たち。
「ちょっとマシューさん!誤解を招く発言は困ります」
「あらあら?そうかしら?うふふ」
「危険よ!やっぱりこのデカパイは危険よ!」
「ウェンディは黙っててくれ!」
・・・・・・・・・
「ふぅ~まいった・・・」
俺は木の精霊教会で昼食をとったあと、屋敷に帰ることにした。
初日から子どもたちと仲良くなった事はいいが、変な誤解を与えてしまったようだ。
マシューさんは変な勧誘さえしなければ、魅力的な女性だと思う。
あの胸は別として、一人で孤児院を切り盛りしているは尊敬に値する。
昨今の日本では保育士の労働環境が問題になっていたのを思い出す。
何十人といる園児を限られた人数で面倒を見るのは大変だ。子供をゲガをさせないために神経を使い、トラブルがあれば親に気を使いながら解決しなければならないとニュースの特番で見た。
せめてもう少し待遇を改善してあげないと報われないよなぁと思ったものだ。
マシューさんはいくら孤児院の出身で恩があるとはいえ、ほぼ無償でやっているのだから頭が下がる。
「ワタル・・・付けられてるわ・・・」
「ん?・・・ああそうだな」
俺が保育士の将来の事を考えているとウェンディが警戒している声をあげた。
実は教会から出た時からずっと誰かにつけられているいるのは気づいていた。
しかし、不思議と悪い感情は伝わってこない・・・何故なら俺をつけている人物は木の幼霊がワンサカ付いているからだ。
「あの・・・俺になんか用ですか?」
「っ!・・・何故分かった?」
「いやそんなに木の幼霊が付いていれば分かりますよ。一面緑色だし・・・」
「そ、そうか・・・一体君は何者なんだ?」
「それ俺のセリフです」
そう言って柱の陰から金髪の美人剣士が姿を現した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
面白い、続きが気になるという方はいいねや感想を頂ければ嬉しいです♪
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説


幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します
湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。
そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。
しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。
そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。
この死亡は神様の手違いによるものだった!?
神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。
せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!!
※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*無断転載、無断翻訳を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる