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第三章 悩める剣士との出会い
第55話 商業ギルドからのお誘い
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コンコン
「ん?メイドさんかな?」
最近慣れてきた巨大なベットの中、ノックの音で目を覚ます。
窓の外を見るとすっかり日が昇り、太陽がサンサンと大きな部屋に降り注いでいる。
「ウェンディ・・・また落ちるぞ」
「・・・うーん・・・」
「だめだこりゃ」
俺の上で大の字で寝ているウェンディは起きそうもないので、ゆっくり体を起こし扉に向かった。
「おはようございます。ワタル様。朝早く申し訳ございません」
「おはようございます。セバスさん。どうしたんですか?」
いつものように背筋をピンと伸ばし、キレイなお辞儀をしているのは、アドレーヌ様の執事セバスさん。
まさにテンプレのようなロマンスグレーの老執事を見ると何故か緊張してしまう。
やはり、あの執事服の下には暗器を仕込んでいるのか?
それとも体術の達人だったりして。
「商業ギルドより手紙が届きましたのでお持ちしました」
「商業ギルド?」
「はい。先日ワタル様が商業ギルドへ向かうとお話しておりましたので、私が商業ギルドのギルド長へ手紙を出しておきました。その返答のようです」
「へ?そ、そうですか。ありがとうございます」
この執事セバスさんはやはりできる男だった。
しかし、王家から手紙なんかを出して良かったのか?
俺としてはふらっと行って商業ギルドで身分証を申請するだけで良かったのだが・・・
「では確かにお渡しましたので、私は失礼します」
「あ、はい。あのユキナ共々ご迷惑をおかけしてすみません」
「いえ、ユキナ様はアドレーヌ様にとても懐いておられます。アドレーヌ様は最近とても楽しそうで・・・こちらこそ感謝しております」
「そ、そうですか・・・」
「ユキナ様を見ていると幼い頃のアドレーヌ様を見ているようで・・・ゴホンッ!それでは」
ユキナは執事セバスさんまでメロメロにしたようだ。恐るべしユキナ。
「さて、何が書いてあるのかな?」
俺は商業ギルドの封蝋がされた手紙を、部屋に備え付けられたペーパーナイフで丁寧に開いた。
・・・・・・・・・
「それで手紙にはなんて書いてあったの?」
「今日のお昼時に来てほしいって。一緒に昼食でもどうですかと書いてあった」
「多分王家からの手紙で、よほどのVIPが来ると思われているわよ」
「そうだよな~。別に身分証を貰うだけなんだけど・・・」
「なんか面白いことになりそうね」
俺とウェンディは商業ギルドがある建物を目指してシップブリッジの街を歩いている。
アドレーヌ様にも出かけることを伝えた。
今日はユキナと一緒にお貴族様のお友達とお茶会をするらしい。ノーミーもユキナとアドレーヌ様の護衛として参加するようだ。
ただし、姿を見せることはしないらしい。
伝説の妖精がいると知ったら、大騒ぎになるからとアドレーヌ様が言っていた。
「ワタルが頼りないから私が仕方なくついていくわ!」
上から目線のウェンディは俺についてきた。別に身分証の申請ぐらい一人でできるぞ。
ギギギ
やがてセバスさんから教えてもらった商業ギルドの建物に到着して重厚感のある扉を開けた。
ようやく就職活動の第一歩を踏み出す。別に面接しに来た訳では無いが、まるで応募した会社のエントランスに入る気分だ。
まずは第一印象が大切だ。ハキハキとした挨拶で元気をアピールしよう。
すでに会社に入る時から面接は始まっているのだ。
「失礼致します!商業ギルドで身分証の申請に参りましたワタルと申しましゅ」
・・・しーん・・・
ヤベッ・・・噛んだ・・・恥ずかしい・・・
会社員の最上級のお辞儀である90度のまま固まる俺。きっと顔が真っ赤になっている。
「「「いらっしゃいませワタル様!!」」」
「へ?なに?・・・うおっ!」
恐る恐る顔をあげると、ズラリと並んだ職員らしき人たちが一斉に頭を下げていた。
「なにこれ?ウェンディ」
「やっぱりVIP待遇で間違いないわね」
「あのー皆さんどうしたんですか?」
理由が分からないので一番手前の若く見える女性に声をかけた。
「はい!お、お、お、王家から手紙がと、と、と、届きましてー」
「まずは落ち着きましょう」
声がうわずっている女性を見ていると、こっちが虐めているみたいじゃないか。
「うちの職員が失礼いたしました。副支店長のギルと申します。お話は承っておりますのでご案内致します」
「はじめまして。ワタルと申します。これは一体なんですか?」
「はい。アドレーヌ様直々にお手紙を頂戴しまして、国を左右する重要な人物がお越しになると・・・よって商業ギルド一同ワタル様を歓迎します」
やりやがったあの王女様・・・てっきりセバスさんが俺が行くことを伝えただけかと思ったが、アドレーヌ様が直接手紙を書いていたようだ。
なんだよ国を左右する重要な人物って。
まだこの国に来て1週間くらいだぞ。国なんて左右できるわけないだろ。
「ウェンディ違うんだ。こんな接待プレイは俺が思っている就職活動じゃないんだ」
「アハハ!やっぱり面白いことになってる」
俺はウェンディが妖精であることを忘れて普通に話しかけてしまった。
他の人は俺が独り言を言っていると思うだろう。
「おおやはり妖精様とご一緒なのですな・・・素晴らしい」
「あ・・・・・・やらかした・・・」
「もうこれはVIP待遇受けるしかないわねワタル!」
こんな状況でどうすればいのだろう・・・
俺はヘコヘコしながら、たくさんの職員さんの視線を感じつつ応接室へ案内された。
・・・誰か助けて
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
面白い、続きが気になるという方はいいねや感想を頂ければ嬉しいです♪
「ん?メイドさんかな?」
最近慣れてきた巨大なベットの中、ノックの音で目を覚ます。
窓の外を見るとすっかり日が昇り、太陽がサンサンと大きな部屋に降り注いでいる。
「ウェンディ・・・また落ちるぞ」
「・・・うーん・・・」
「だめだこりゃ」
俺の上で大の字で寝ているウェンディは起きそうもないので、ゆっくり体を起こし扉に向かった。
「おはようございます。ワタル様。朝早く申し訳ございません」
「おはようございます。セバスさん。どうしたんですか?」
いつものように背筋をピンと伸ばし、キレイなお辞儀をしているのは、アドレーヌ様の執事セバスさん。
まさにテンプレのようなロマンスグレーの老執事を見ると何故か緊張してしまう。
やはり、あの執事服の下には暗器を仕込んでいるのか?
それとも体術の達人だったりして。
「商業ギルドより手紙が届きましたのでお持ちしました」
「商業ギルド?」
「はい。先日ワタル様が商業ギルドへ向かうとお話しておりましたので、私が商業ギルドのギルド長へ手紙を出しておきました。その返答のようです」
「へ?そ、そうですか。ありがとうございます」
この執事セバスさんはやはりできる男だった。
しかし、王家から手紙なんかを出して良かったのか?
俺としてはふらっと行って商業ギルドで身分証を申請するだけで良かったのだが・・・
「では確かにお渡しましたので、私は失礼します」
「あ、はい。あのユキナ共々ご迷惑をおかけしてすみません」
「いえ、ユキナ様はアドレーヌ様にとても懐いておられます。アドレーヌ様は最近とても楽しそうで・・・こちらこそ感謝しております」
「そ、そうですか・・・」
「ユキナ様を見ていると幼い頃のアドレーヌ様を見ているようで・・・ゴホンッ!それでは」
ユキナは執事セバスさんまでメロメロにしたようだ。恐るべしユキナ。
「さて、何が書いてあるのかな?」
俺は商業ギルドの封蝋がされた手紙を、部屋に備え付けられたペーパーナイフで丁寧に開いた。
・・・・・・・・・
「それで手紙にはなんて書いてあったの?」
「今日のお昼時に来てほしいって。一緒に昼食でもどうですかと書いてあった」
「多分王家からの手紙で、よほどのVIPが来ると思われているわよ」
「そうだよな~。別に身分証を貰うだけなんだけど・・・」
「なんか面白いことになりそうね」
俺とウェンディは商業ギルドがある建物を目指してシップブリッジの街を歩いている。
アドレーヌ様にも出かけることを伝えた。
今日はユキナと一緒にお貴族様のお友達とお茶会をするらしい。ノーミーもユキナとアドレーヌ様の護衛として参加するようだ。
ただし、姿を見せることはしないらしい。
伝説の妖精がいると知ったら、大騒ぎになるからとアドレーヌ様が言っていた。
「ワタルが頼りないから私が仕方なくついていくわ!」
上から目線のウェンディは俺についてきた。別に身分証の申請ぐらい一人でできるぞ。
ギギギ
やがてセバスさんから教えてもらった商業ギルドの建物に到着して重厚感のある扉を開けた。
ようやく就職活動の第一歩を踏み出す。別に面接しに来た訳では無いが、まるで応募した会社のエントランスに入る気分だ。
まずは第一印象が大切だ。ハキハキとした挨拶で元気をアピールしよう。
すでに会社に入る時から面接は始まっているのだ。
「失礼致します!商業ギルドで身分証の申請に参りましたワタルと申しましゅ」
・・・しーん・・・
ヤベッ・・・噛んだ・・・恥ずかしい・・・
会社員の最上級のお辞儀である90度のまま固まる俺。きっと顔が真っ赤になっている。
「「「いらっしゃいませワタル様!!」」」
「へ?なに?・・・うおっ!」
恐る恐る顔をあげると、ズラリと並んだ職員らしき人たちが一斉に頭を下げていた。
「なにこれ?ウェンディ」
「やっぱりVIP待遇で間違いないわね」
「あのー皆さんどうしたんですか?」
理由が分からないので一番手前の若く見える女性に声をかけた。
「はい!お、お、お、王家から手紙がと、と、と、届きましてー」
「まずは落ち着きましょう」
声がうわずっている女性を見ていると、こっちが虐めているみたいじゃないか。
「うちの職員が失礼いたしました。副支店長のギルと申します。お話は承っておりますのでご案内致します」
「はじめまして。ワタルと申します。これは一体なんですか?」
「はい。アドレーヌ様直々にお手紙を頂戴しまして、国を左右する重要な人物がお越しになると・・・よって商業ギルド一同ワタル様を歓迎します」
やりやがったあの王女様・・・てっきりセバスさんが俺が行くことを伝えただけかと思ったが、アドレーヌ様が直接手紙を書いていたようだ。
なんだよ国を左右する重要な人物って。
まだこの国に来て1週間くらいだぞ。国なんて左右できるわけないだろ。
「ウェンディ違うんだ。こんな接待プレイは俺が思っている就職活動じゃないんだ」
「アハハ!やっぱり面白いことになってる」
俺はウェンディが妖精であることを忘れて普通に話しかけてしまった。
他の人は俺が独り言を言っていると思うだろう。
「おおやはり妖精様とご一緒なのですな・・・素晴らしい」
「あ・・・・・・やらかした・・・」
「もうこれはVIP待遇受けるしかないわねワタル!」
こんな状況でどうすればいのだろう・・・
俺はヘコヘコしながら、たくさんの職員さんの視線を感じつつ応接室へ案内された。
・・・誰か助けて
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