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第三章 悩める剣士との出会い
第46話 ロイヤル仮面
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ガタゴト・・・ガタゴト・・・
「ようやく居場所を掴んだわアリシア!絶対に連れ戻してやるんだから!」
「姫様!絶対に姿を見せぬようにお願い出します」
「わかっているわよ」
アリシアがシップブリッジの街にいることを知った日から今日で三日目。
アドレーヌたち一行が、シップブリッジへ向けてザリオン街道を進んでいる。
直談判をした当日、占い師からアリシアの怪しげな情報を得ていたアドレーヌは、すでに準備を整え、父のマリオンと叔父のギャリオンの元を訪れていた。
そこへ衛兵からアリシアがシップブリッジにいる報告を受けて飛び出した。
慌てたギャリオンは急いで副団長のザックスにアドレーヌを追わせてなんとか止めさせる。
あとから追いついたギャリオンは必死にアドレーヌを説得することに。
「アドレーヌ。何も第一王女が行くことはないだろう」
「叔父様とお父様がアリシアを連れ戻せるとは思いません。いくら話し合っても結局アリシアは姿を消してしまったではないですか」
「それはそうだが・・・しかし・・・」
「それではこうしましょう!私がお忍びでシップブリッジへ視察に行くことにします。そのついでにアリシアを説得する・・・それなら問題でしょう?」
第一王女が地方の街へ視察に訪れるのは珍しいことではない。
しかし、今は怪しげな集団が暗躍しているとの情報があるのでギャリオンは条件をつけることにした。
あくまでお忍びで行く、副団長を護衛に付ける。ギャリオンはその条件をアドレーヌに飲ませて視察を許可したのであった。
・・・・・・・・・
「貴様ら何者だ!!」
ミルフィーユ街道からザリオン街道へ入り、後一日でシップブリッジへ着くという距離まで来た一行。
小さな森を抜けている最中にそれは現れた。
「悪いな・・・ 馬車の中を見させてもらおう」
「ふん!例の妖精を攫う集団か・・・」
「心配するな。中を確かめたらすぐに去るさ」
「そんな事させると思うか?」
アドレーヌ一行が乗る馬車は王族が使う豪華なものではない。
貴族が使うような馬車に違いないが、この黒ずくめの集団はまさか第一王女が乗っているとは思わないはずだ。
馬車の中を見られたらまずいと思ったザックスは、馬から降りて敵と対峙するため剣を抜いた。
相手の数は5人。
こちらは部下を含めて10人、数では勝っている。
「一人は馬車を守れ!他は二人で敵に当たれ!俺は隊長格を相手する」
「ハッ!」
ミルフィーユ王国の騎士団の副団長が率いる第一騎士団は精鋭揃いだ。
いくら数で勝っていようと敵に油断は見せないザックスはリーダー格と思わしき人物に切りかかった。
キンッ!キンッ!
「ナイフ使いか・・・それに腕も立つ」
「騎士様もやるじゃないか・・・」
切りかかったザックスをナイフで捌き、受け流したリーダー格は少し距離を取る。
部下を見ると、やはり他の敵も騎士の剣戟を受け流しながら距離を取っているようだ。
これ以上馬車から離れるのはまずいと感じ始めたザックス。
その時、
「ロックバレッド」
突如、森の中から魔法で作られた石の弾丸が飛び出した。
全部で3つの弾丸は真っ直ぐに馬車を守る騎士に向かって飛んでいく。
キンッ!
ドスッ!
バンッ!
「グッ!」
一発は騎士の剣で弾いたものの、残り二つは騎士の膝と馬車の車輪を貫く。
思わず膝をつく騎士。
「くそっ!新手か!総員馬車を守れ!」
「ふん・・・させると思うか?」
キンッキンッ!
そういったリーダー格がザックスに斬りかかる。
バキャ!
「キャーー!」
「ひ、姫様をお守りしろ!」
魔法を放ったのとは別の敵が馬車の扉を蹴破った。
馬車の中はメイドと侍女が乗っているが戦力にはならない。
パニック状態の車内に向かって黒ずくめの男が呟いた。
「チッ!外れか・・・しかしこいつは・・・」
「姫様お下がりください。私が命に代えてでもお守りします」
「そいつ以外は死んでもらうか・・・」
震えながら短刀を構える侍女にジリジリ忍び寄る黒ずくめの男。
ヌラリとナイフを抜き一歩踏み出した時、
「シッ!」
「ぐはっ!」
突然斬撃を受けた男が馬車から吹っ飛んでいった。
「助太刀する!もう大丈夫だ!」
剣を振り抜き、フードを目深に被った仮面の人物は少し後ろを見ながら言った。
そのまま飛び降りると、吹っ飛んでいった男に向かって駆け出す。
ピーーー!
追撃をしようとしたフードの人物が男に迫った時に、笛が鳴り響いた。
「チッ!撤退だ!命拾いしたな」
散り散りになって撤退をした黒ずくめの集団。
ザックスは逃げ出した集団を確認すると馬車に急いで駆け寄った。
「姫様!ご無事ですか?」
「え、ええ・・・私は平気よ」
「申し訳ありません。私が付いていながら・・・」
「ザックスはよくやってくれました。・・・先程の助太刀してくれた人物はどこかしら?」
「その者ならそこに・・・」
ザックスは馬車から少し離れた所にいるフードの人物を指差す。
「先程は助かりました。お礼をしたいのでお名前を教えてくださると助かります」
「・・・・・・ッ!・・・な、名乗るほどのものではない。礼などいらぬ。それでは!」
少し動揺したように見えたフード姿の人物は、風のように去っていった。
・・・・・・・・・
「ザックス。あの者を知っていますか?」
「推測でよければ・・・」
「構いません。知っていることを教えて」
「街の者が噂をしておりました。ピンチになるとさっそうと現れて、鬼神の如き強さで敵を倒すヒーロー。立ち振る舞いで分かる高貴なオーラ。名乗りもせずに去っていくフード姿の人物・・・その名も」
「その名も・・・」
・・・ゴクリ
息を呑むアドレーヌ
「「ロイヤル仮面」
その人かと思われます。」
「・・・ロイヤル仮面・・・お礼もできなかったわね」
しばらくアドレーヌはロイヤル仮面が去っていった森を見つめていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
面白い、続きが気になるという方はいいねや感想を頂ければ嬉しいです♪
「ようやく居場所を掴んだわアリシア!絶対に連れ戻してやるんだから!」
「姫様!絶対に姿を見せぬようにお願い出します」
「わかっているわよ」
アリシアがシップブリッジの街にいることを知った日から今日で三日目。
アドレーヌたち一行が、シップブリッジへ向けてザリオン街道を進んでいる。
直談判をした当日、占い師からアリシアの怪しげな情報を得ていたアドレーヌは、すでに準備を整え、父のマリオンと叔父のギャリオンの元を訪れていた。
そこへ衛兵からアリシアがシップブリッジにいる報告を受けて飛び出した。
慌てたギャリオンは急いで副団長のザックスにアドレーヌを追わせてなんとか止めさせる。
あとから追いついたギャリオンは必死にアドレーヌを説得することに。
「アドレーヌ。何も第一王女が行くことはないだろう」
「叔父様とお父様がアリシアを連れ戻せるとは思いません。いくら話し合っても結局アリシアは姿を消してしまったではないですか」
「それはそうだが・・・しかし・・・」
「それではこうしましょう!私がお忍びでシップブリッジへ視察に行くことにします。そのついでにアリシアを説得する・・・それなら問題でしょう?」
第一王女が地方の街へ視察に訪れるのは珍しいことではない。
しかし、今は怪しげな集団が暗躍しているとの情報があるのでギャリオンは条件をつけることにした。
あくまでお忍びで行く、副団長を護衛に付ける。ギャリオンはその条件をアドレーヌに飲ませて視察を許可したのであった。
・・・・・・・・・
「貴様ら何者だ!!」
ミルフィーユ街道からザリオン街道へ入り、後一日でシップブリッジへ着くという距離まで来た一行。
小さな森を抜けている最中にそれは現れた。
「悪いな・・・ 馬車の中を見させてもらおう」
「ふん!例の妖精を攫う集団か・・・」
「心配するな。中を確かめたらすぐに去るさ」
「そんな事させると思うか?」
アドレーヌ一行が乗る馬車は王族が使う豪華なものではない。
貴族が使うような馬車に違いないが、この黒ずくめの集団はまさか第一王女が乗っているとは思わないはずだ。
馬車の中を見られたらまずいと思ったザックスは、馬から降りて敵と対峙するため剣を抜いた。
相手の数は5人。
こちらは部下を含めて10人、数では勝っている。
「一人は馬車を守れ!他は二人で敵に当たれ!俺は隊長格を相手する」
「ハッ!」
ミルフィーユ王国の騎士団の副団長が率いる第一騎士団は精鋭揃いだ。
いくら数で勝っていようと敵に油断は見せないザックスはリーダー格と思わしき人物に切りかかった。
キンッ!キンッ!
「ナイフ使いか・・・それに腕も立つ」
「騎士様もやるじゃないか・・・」
切りかかったザックスをナイフで捌き、受け流したリーダー格は少し距離を取る。
部下を見ると、やはり他の敵も騎士の剣戟を受け流しながら距離を取っているようだ。
これ以上馬車から離れるのはまずいと感じ始めたザックス。
その時、
「ロックバレッド」
突如、森の中から魔法で作られた石の弾丸が飛び出した。
全部で3つの弾丸は真っ直ぐに馬車を守る騎士に向かって飛んでいく。
キンッ!
ドスッ!
バンッ!
「グッ!」
一発は騎士の剣で弾いたものの、残り二つは騎士の膝と馬車の車輪を貫く。
思わず膝をつく騎士。
「くそっ!新手か!総員馬車を守れ!」
「ふん・・・させると思うか?」
キンッキンッ!
そういったリーダー格がザックスに斬りかかる。
バキャ!
「キャーー!」
「ひ、姫様をお守りしろ!」
魔法を放ったのとは別の敵が馬車の扉を蹴破った。
馬車の中はメイドと侍女が乗っているが戦力にはならない。
パニック状態の車内に向かって黒ずくめの男が呟いた。
「チッ!外れか・・・しかしこいつは・・・」
「姫様お下がりください。私が命に代えてでもお守りします」
「そいつ以外は死んでもらうか・・・」
震えながら短刀を構える侍女にジリジリ忍び寄る黒ずくめの男。
ヌラリとナイフを抜き一歩踏み出した時、
「シッ!」
「ぐはっ!」
突然斬撃を受けた男が馬車から吹っ飛んでいった。
「助太刀する!もう大丈夫だ!」
剣を振り抜き、フードを目深に被った仮面の人物は少し後ろを見ながら言った。
そのまま飛び降りると、吹っ飛んでいった男に向かって駆け出す。
ピーーー!
追撃をしようとしたフードの人物が男に迫った時に、笛が鳴り響いた。
「チッ!撤退だ!命拾いしたな」
散り散りになって撤退をした黒ずくめの集団。
ザックスは逃げ出した集団を確認すると馬車に急いで駆け寄った。
「姫様!ご無事ですか?」
「え、ええ・・・私は平気よ」
「申し訳ありません。私が付いていながら・・・」
「ザックスはよくやってくれました。・・・先程の助太刀してくれた人物はどこかしら?」
「その者ならそこに・・・」
ザックスは馬車から少し離れた所にいるフードの人物を指差す。
「先程は助かりました。お礼をしたいのでお名前を教えてくださると助かります」
「・・・・・・ッ!・・・な、名乗るほどのものではない。礼などいらぬ。それでは!」
少し動揺したように見えたフード姿の人物は、風のように去っていった。
・・・・・・・・・
「ザックス。あの者を知っていますか?」
「推測でよければ・・・」
「構いません。知っていることを教えて」
「街の者が噂をしておりました。ピンチになるとさっそうと現れて、鬼神の如き強さで敵を倒すヒーロー。立ち振る舞いで分かる高貴なオーラ。名乗りもせずに去っていくフード姿の人物・・・その名も」
「その名も・・・」
・・・ゴクリ
息を呑むアドレーヌ
「「ロイヤル仮面」
その人かと思われます。」
「・・・ロイヤル仮面・・・お礼もできなかったわね」
しばらくアドレーヌはロイヤル仮面が去っていった森を見つめていた。
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