異世界街道爆走中〜転生したのでやりたい仕事を探します。

yuimao

文字の大きさ
上 下
55 / 84
第三章 悩める剣士との出会い

第46話 ロイヤル仮面

しおりを挟む
 ガタゴト・・・ガタゴト・・・

「ようやく居場所を掴んだわアリシア!絶対に連れ戻してやるんだから!」
「姫様!絶対に姿を見せぬようにお願い出します」
「わかっているわよ」

 アリシアがシップブリッジの街にいることを知った日から今日で三日目。
 アドレーヌたち一行が、シップブリッジへ向けてザリオン街道を進んでいる。

 直談判をした当日、占い師からアリシアの怪しげな情報を得ていたアドレーヌは、すでに準備を整え、父のマリオンと叔父のギャリオンの元を訪れていた。

 そこへ衛兵からアリシアがシップブリッジにいる報告を受けて飛び出した。
 慌てたギャリオンは急いで副団長のザックスにアドレーヌを追わせてなんとか止めさせる。

 あとから追いついたギャリオンは必死にアドレーヌを説得することに。

「アドレーヌ。何も第一王女が行くことはないだろう」
「叔父様とお父様がアリシアを連れ戻せるとは思いません。いくら話し合っても結局アリシアは姿を消してしまったではないですか」
「それはそうだが・・・しかし・・・」
「それではこうしましょう!私がお忍びでシップブリッジへ視察に行くことにします。そのついでにアリシアを説得する・・・それなら問題でしょう?」

 第一王女が地方の街へ視察に訪れるのは珍しいことではない。
 しかし、今は怪しげな集団が暗躍しているとの情報があるのでギャリオンは条件をつけることにした。

 あくまでお忍びで行く、副団長を護衛に付ける。ギャリオンはその条件をアドレーヌに飲ませて視察を許可したのであった。

 ・・・・・・・・・

「貴様ら何者だ!!」

 ミルフィーユ街道からザリオン街道へ入り、後一日でシップブリッジへ着くという距離まで来た一行。
 小さな森を抜けている最中にそれは現れた。

「悪いな・・・ 馬車の中を見させてもらおう」
「ふん!例の妖精を攫う集団か・・・」
「心配するな。中を確かめたらすぐに去るさ」
「そんな事させると思うか?」

 アドレーヌ一行が乗る馬車は王族が使う豪華なものではない。
 貴族が使うような馬車に違いないが、この黒ずくめの集団はまさか第一王女が乗っているとは思わないはずだ。

 馬車の中を見られたらまずいと思ったザックスは、馬から降りて敵と対峙するため剣を抜いた。

 相手の数は5人。
 こちらは部下を含めて10人、数では勝っている。

「一人は馬車を守れ!他は二人で敵に当たれ!俺は隊長格を相手する」
「ハッ!」

 ミルフィーユ王国の騎士団の副団長が率いる第一騎士団は精鋭揃いだ。
 いくら数で勝っていようと敵に油断は見せないザックスはリーダー格と思わしき人物に切りかかった。

 キンッ!キンッ!

「ナイフ使いか・・・それに腕も立つ」
「騎士様もやるじゃないか・・・」

 切りかかったザックスをナイフで捌き、受け流したリーダー格は少し距離を取る。

 部下を見ると、やはり他の敵も騎士の剣戟を受け流しながら距離を取っているようだ。
 これ以上馬車から離れるのはまずいと感じ始めたザックス。
 
その時、

「ロックバレッド」

 突如、森の中から魔法で作られた石の弾丸が飛び出した。
 全部で3つの弾丸は真っ直ぐに馬車を守る騎士に向かって飛んでいく。

 キンッ!
 ドスッ!
 バンッ!

「グッ!」

 一発は騎士の剣で弾いたものの、残り二つは騎士の膝と馬車の車輪を貫く。
 思わず膝をつく騎士。

「くそっ!新手か!総員馬車を守れ!」
「ふん・・・させると思うか?」

 キンッキンッ!

 そういったリーダー格がザックスに斬りかかる。

 バキャ!

「キャーー!」
「ひ、姫様をお守りしろ!」

 魔法を放ったのとは別の敵が馬車の扉を蹴破った。
 馬車の中はメイドと侍女が乗っているが戦力にはならない。
 パニック状態の車内に向かって黒ずくめの男が呟いた。

「チッ!外れか・・・しかしこいつは・・・」
「姫様お下がりください。私が命に代えてでもお守りします」
「そいつ以外は死んでもらうか・・・」

 震えながら短刀を構える侍女にジリジリ忍び寄る黒ずくめの男。
 ヌラリとナイフを抜き一歩踏み出した時、

「シッ!」
「ぐはっ!」

 突然斬撃を受けた男が馬車から吹っ飛んでいった。

「助太刀する!もう大丈夫だ!」

 剣を振り抜き、フードを目深に被った仮面の人物は少し後ろを見ながら言った。
 そのまま飛び降りると、吹っ飛んでいった男に向かって駆け出す。

 ピーーー!

 追撃をしようとしたフードの人物が男に迫った時に、笛が鳴り響いた。

「チッ!撤退だ!命拾いしたな」

 散り散りになって撤退をした黒ずくめの集団。
 ザックスは逃げ出した集団を確認すると馬車に急いで駆け寄った。

「姫様!ご無事ですか?」
「え、ええ・・・私は平気よ」
「申し訳ありません。私が付いていながら・・・」
「ザックスはよくやってくれました。・・・先程の助太刀してくれた人物はどこかしら?」
「その者ならそこに・・・」

 ザックスは馬車から少し離れた所にいるフードの人物を指差す。

「先程は助かりました。お礼をしたいのでお名前を教えてくださると助かります」

「・・・・・・ッ!・・・な、名乗るほどのものではない。礼などいらぬ。それでは!」
 少し動揺したように見えたフード姿の人物は、風のように去っていった。

 ・・・・・・・・・

「ザックス。あの者を知っていますか?」
「推測でよければ・・・」
「構いません。知っていることを教えて」

「街の者が噂をしておりました。ピンチになるとさっそうと現れて、鬼神の如き強さで敵を倒すヒーロー。立ち振る舞いで分かる高貴なオーラ。名乗りもせずに去っていくフード姿の人物・・・その名も」
「その名も・・・」

 ・・・ゴクリ
 息を呑むアドレーヌ

「「ロイヤル仮面」
 その人かと思われます。」

「・・・ロイヤル仮面・・・お礼もできなかったわね」
しばらくアドレーヌはロイヤル仮面が去っていった森を見つめていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

面白い、続きが気になるという方はいいねや感想を頂ければ嬉しいです♪
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。

真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆ 【あらすじ】 どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。 神様は言った。 「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」 現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。 神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。 それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。 あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。 そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。 そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。 ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。 この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。 さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。 そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。 チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。 しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。 もちろん、攻略スキルを使って。 もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。 下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。 これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。 【他サイトでの掲載状況】 本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。  そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。  しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。  そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。  この死亡は神様の手違いによるものだった!?  神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。  せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!! ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

処理中です...