51 / 84
第三章 悩める剣士との出会い
第42話 エルザの手紙
しおりを挟む
ゴトゴト・・・ゴトゴト・・・
俺がベアフから仕事の依頼を受けて一日。無事香草を採取したしたまでは良かったが、仲間が一人増えた。
木の妖精ノーミー・ウッド。
ドリュアス様とは全く性格が異なる明るい性格のいたずら好きの妖精だ。
ドリュアス様にノーミーと話をして前向きにしてほしいなんて頼まれたけど、十分前向きなのでないだろうか。
「ユキナ!そろそろトカリ村に着くから隠れてくれ」
「むぅ~つまんない。遊びたい」
「まぁそう言うなよ。なんとか人族の格好で過ごせるようにすらからさ」
聖女騒動から一日しか経ってないので、ユキナを人前に出すのは危険だろう。
なんとかしてあげたいなと思いながら、御者台でプラプラ足を動かしているユキナを見た。
「おーい!ベアフー!今帰ったぞー!」
ベアフの家に着いた俺が声をかける。
バンッ!!
「すぐに家の中に入ってくれ!そこにいると大変だ」
「お、おう。分かった」
勢い良く開いたドアから焦った顔でベアフが飛び出してきた。
何があったんだ?
・・・・・・・・・
「そりゃ確かに大変だ。迷惑かけたなベアフ」
「それは別に大丈夫だ。気にするな。」
「助かるよ」
「ベアフごめんなさい」
「ああ謝らないでください妖精様。事情が事情ですから・・・」
ここはベアフの家のリビング。
テーブルを挟んで向かい合い、俺とユキナの正面には2メートル近い大男のベアフが縮こまって座っている。
ベアフの話ではやはり聖女様が現れて、ベアフの家にいるのではないかと噂になっているらしい。
俺達が出発したあと、リリの母親はもちろん、村の村長やこの村に一つある教会の神父も訪れてきたそうだ。
ベアフは知り合いが訪ねてきたが、すぐに出発したと答えたらしい。
もちろんユキナがリリを治したことを問われたが、それは知らないと誤魔化したそうだ。
「さて、どうするかな?すぐにここを出ていくべきだと思うけど、どのくらい頼んでいた物は揃っているんだベアフ?」
「食料品なんかは備蓄してある物を渡そう。日用品はあと一日あればなんとかなる」
「あれは用意できているか?」
「それなんだか、なぜか家の前に置かれてあったんだ。手紙を添えてあった・・・これがそうだ」
不思議そうにしているベアフから手紙と荷物を受け取り読もうとすると・・・
「待ってワタル・・・この文字はもしかしたら・・・」
「お兄ちゃんまさか・・・」
「ああ間違いない・・・エルザさんだ」
「なになに?誰だって?」
そう、この手紙の文字はエルザさんだ。一体何が書いてあるのだろうか?
「「はじめましてベアフ様。あなたのもとにやたらと幼霊が付いている男性ととんでもない威力の治癒ブレスを使い聖女と疑われている少女が訪れたと思います」」
「どこにいるのエルザ!見ているなら出てきなさい!」
「やっぱり私のブレスは異常なのかな・・・」
「まぁ落ち着け二人共」
慌てるウェンディと不安がるユキナをなだめながら続きを読む。
「「さて、これ以上その少女が聖女様と疑われると、とある王国のとある兄弟にご迷惑をお掛けすることになります。
そこで、こちらが用意した物でなんとか乗り切って下さい。
ベアフ様にはご迷惑をお掛けすることになりますが、何卒よろしくお願いしますとドリュアス様がおしゃっておりました」」
「なるほど・・・それでエルザさんが用意した物がこれか・・・」
俺は布で包まれた物を解く。
そこにはいわゆる町娘風な服の他に大きな三角巾のような物が何枚かがあった。
「つまり、ユキナに町娘風の服を着て、三角巾で白い髪を隠せと言うことだ。良かったなユキナ。村で遊べるぞ!」
「ほんとに!ほんとに!やった!ありがとうエルザさん!」
エルザさんはけして俺達を怖がらせているわけではない。むしろいい人なのだ。
ウェンディは例外として。
「あれ?もう一枚あるな・・・」
「「追伸
ベアフ様には見えないと思いますが、やたらと幼霊が付いている男性と一緒にいる妖精にお伝えください。
深淵を覗く者は、また深淵に見られているのだと・・・ 善意の第三者より」」
「いやーーー!ユ、ユキナ!ホーリーブレスよ!ホーリーブレスで浄化するのよ!」
「ねぇウェンディどうしたの?その手紙の人がそんなに怖いの?」
錯乱状態のウェンディを心配するノーミー。しかし、ウェンディが勝手に誤解しているだけだ。
っていうかエルザさんは絶対面白がっているぞ。
「ノーミー大丈夫だ。いつものことだ」
「エルザさんは優しい人だよ」
「ワタル・・・今・・・ノーミーっていったか?」
・・・・・・・・・
「お姿が見えた時から予想はしておりましたが、あなた様は伝説の妖精ノーミー様ですか?」
ベアフがすぐに跪き、ノーミーに頭を下げた。ノーミーが喋りだした時点で姿が見えてるようになったようだ。
「伝説?私はそんな風に言われているのか・・・頭をあげてベアフ。確かに私はザリオンと契約を結んだ古い妖精よ。」
「お会いできて光栄です。」
「私は頭を下げられるほど立派な妖精じゃないの・・・むしろ国を捨てた裏切り者なのよ」
「いえ、私にとっては国を救った英雄様です」
「国を救ったのはザリオンだけどね・・・今はワタル達と一緒に旅をすることにしたの」
「なんと・・・それではワタルと・・・」
ノーミーの言葉に驚くベアフ。
「違う違う!!契約はしてないよ。理由は知ってるでしょ?ただ面白そうだから一緒に行くだけ」
「そうでしたか・・・ワタルよ・・・ノーミー様をよろしく頼む」
「あ、ああ・・・むしろ俺のほうが助けてもらうと思うけど・・・」
色々あったけど明日はユキナを村に出してみよう・・・そんな事を思いながら夜はふけていった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
面白い、続きが気になるという方はいいねや感想を頂ければ嬉しいです♪
俺がベアフから仕事の依頼を受けて一日。無事香草を採取したしたまでは良かったが、仲間が一人増えた。
木の妖精ノーミー・ウッド。
ドリュアス様とは全く性格が異なる明るい性格のいたずら好きの妖精だ。
ドリュアス様にノーミーと話をして前向きにしてほしいなんて頼まれたけど、十分前向きなのでないだろうか。
「ユキナ!そろそろトカリ村に着くから隠れてくれ」
「むぅ~つまんない。遊びたい」
「まぁそう言うなよ。なんとか人族の格好で過ごせるようにすらからさ」
聖女騒動から一日しか経ってないので、ユキナを人前に出すのは危険だろう。
なんとかしてあげたいなと思いながら、御者台でプラプラ足を動かしているユキナを見た。
「おーい!ベアフー!今帰ったぞー!」
ベアフの家に着いた俺が声をかける。
バンッ!!
「すぐに家の中に入ってくれ!そこにいると大変だ」
「お、おう。分かった」
勢い良く開いたドアから焦った顔でベアフが飛び出してきた。
何があったんだ?
・・・・・・・・・
「そりゃ確かに大変だ。迷惑かけたなベアフ」
「それは別に大丈夫だ。気にするな。」
「助かるよ」
「ベアフごめんなさい」
「ああ謝らないでください妖精様。事情が事情ですから・・・」
ここはベアフの家のリビング。
テーブルを挟んで向かい合い、俺とユキナの正面には2メートル近い大男のベアフが縮こまって座っている。
ベアフの話ではやはり聖女様が現れて、ベアフの家にいるのではないかと噂になっているらしい。
俺達が出発したあと、リリの母親はもちろん、村の村長やこの村に一つある教会の神父も訪れてきたそうだ。
ベアフは知り合いが訪ねてきたが、すぐに出発したと答えたらしい。
もちろんユキナがリリを治したことを問われたが、それは知らないと誤魔化したそうだ。
「さて、どうするかな?すぐにここを出ていくべきだと思うけど、どのくらい頼んでいた物は揃っているんだベアフ?」
「食料品なんかは備蓄してある物を渡そう。日用品はあと一日あればなんとかなる」
「あれは用意できているか?」
「それなんだか、なぜか家の前に置かれてあったんだ。手紙を添えてあった・・・これがそうだ」
不思議そうにしているベアフから手紙と荷物を受け取り読もうとすると・・・
「待ってワタル・・・この文字はもしかしたら・・・」
「お兄ちゃんまさか・・・」
「ああ間違いない・・・エルザさんだ」
「なになに?誰だって?」
そう、この手紙の文字はエルザさんだ。一体何が書いてあるのだろうか?
「「はじめましてベアフ様。あなたのもとにやたらと幼霊が付いている男性ととんでもない威力の治癒ブレスを使い聖女と疑われている少女が訪れたと思います」」
「どこにいるのエルザ!見ているなら出てきなさい!」
「やっぱり私のブレスは異常なのかな・・・」
「まぁ落ち着け二人共」
慌てるウェンディと不安がるユキナをなだめながら続きを読む。
「「さて、これ以上その少女が聖女様と疑われると、とある王国のとある兄弟にご迷惑をお掛けすることになります。
そこで、こちらが用意した物でなんとか乗り切って下さい。
ベアフ様にはご迷惑をお掛けすることになりますが、何卒よろしくお願いしますとドリュアス様がおしゃっておりました」」
「なるほど・・・それでエルザさんが用意した物がこれか・・・」
俺は布で包まれた物を解く。
そこにはいわゆる町娘風な服の他に大きな三角巾のような物が何枚かがあった。
「つまり、ユキナに町娘風の服を着て、三角巾で白い髪を隠せと言うことだ。良かったなユキナ。村で遊べるぞ!」
「ほんとに!ほんとに!やった!ありがとうエルザさん!」
エルザさんはけして俺達を怖がらせているわけではない。むしろいい人なのだ。
ウェンディは例外として。
「あれ?もう一枚あるな・・・」
「「追伸
ベアフ様には見えないと思いますが、やたらと幼霊が付いている男性と一緒にいる妖精にお伝えください。
深淵を覗く者は、また深淵に見られているのだと・・・ 善意の第三者より」」
「いやーーー!ユ、ユキナ!ホーリーブレスよ!ホーリーブレスで浄化するのよ!」
「ねぇウェンディどうしたの?その手紙の人がそんなに怖いの?」
錯乱状態のウェンディを心配するノーミー。しかし、ウェンディが勝手に誤解しているだけだ。
っていうかエルザさんは絶対面白がっているぞ。
「ノーミー大丈夫だ。いつものことだ」
「エルザさんは優しい人だよ」
「ワタル・・・今・・・ノーミーっていったか?」
・・・・・・・・・
「お姿が見えた時から予想はしておりましたが、あなた様は伝説の妖精ノーミー様ですか?」
ベアフがすぐに跪き、ノーミーに頭を下げた。ノーミーが喋りだした時点で姿が見えてるようになったようだ。
「伝説?私はそんな風に言われているのか・・・頭をあげてベアフ。確かに私はザリオンと契約を結んだ古い妖精よ。」
「お会いできて光栄です。」
「私は頭を下げられるほど立派な妖精じゃないの・・・むしろ国を捨てた裏切り者なのよ」
「いえ、私にとっては国を救った英雄様です」
「国を救ったのはザリオンだけどね・・・今はワタル達と一緒に旅をすることにしたの」
「なんと・・・それではワタルと・・・」
ノーミーの言葉に驚くベアフ。
「違う違う!!契約はしてないよ。理由は知ってるでしょ?ただ面白そうだから一緒に行くだけ」
「そうでしたか・・・ワタルよ・・・ノーミー様をよろしく頼む」
「あ、ああ・・・むしろ俺のほうが助けてもらうと思うけど・・・」
色々あったけど明日はユキナを村に出してみよう・・・そんな事を思いながら夜はふけていった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
面白い、続きが気になるという方はいいねや感想を頂ければ嬉しいです♪
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説


幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。


平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します
湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。
そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。
しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。
そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。
この死亡は神様の手違いによるものだった!?
神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。
せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!!
※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる