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第三章 悩める剣士との出会い
第38話 木の精霊 ドリュアス
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「あのね!全然!全く!一ミリも誤魔化せてないわよ!」
「「なぜ!?」」
ここは辺境の村トカリに住む、木こりのベアフ邸前。
静かでのどかな村にウェンディの叫び声がこだまする。
それを俺とユキナは体育座りで聞いていた。
妖精のウェンディの姿や声は普通の人には分からないので、傍から見たら二人で何も無い空間に向けて喋っているように見えるだろう。
シュールな光景の中、ウェンディの説教は続く。
「まず人族の間でお手軽な治癒魔法なんてありません」
「そ、そうなの?」
「・・・ビックリ」
意外な事実に驚きを隠せない。
「治癒魔法は経験を積んだ神職者や貴重な白の幼霊に愛された人族や白竜族しか使えないの!」
「白の幼霊は私の友達」
「それじゃ俺も癒やしのブレスを吐けるのか?やったぞ!」
早速、白の幼霊を集めようとした時
「おバカ!あなたのバカ魔力で癒やしの魔法を使ったら、大変なことになるでしょ!癒やしの魔法は制御が難しいの!やるんじゃないわよワタル!」
「お、おう・・・やめとく」
改めて考えると魔力任せで癒やしの魔法なんか使ったら、人間どうなるか分からない。不老不死にしてしまったら洒落にならん。
「それに人族が使う癒やしの魔法は、瀕死の人間を治すほど強力じゃないの!何度も魔法をかけて治していくものなの!」
「それじゃユキナの癒やしのブレスってヤバイんじゃ・・・」
「私の癒やしのブレスはすごいってお兄様たちが言ってた。ヤバいくらいに威力があるって」
ユキナの話によると、白竜族、特に王族のブレスは強力らしい。ちなみに二人の兄は凍結と白炎を得意としているらしい。
聞いた時は、「なにそれ!カッコいい」と連発してしまった。
「その通り!だからリリはユキナを伝説の聖女様と間違えたのよ」
ビシッっとユキナを指さして宣言した。
「ハッ!・・・やってしまった・・・」
「ま、まぁ。リリを治せたし、わざとやったわけじゃないし良かったじゃないかウェンディ!」
口に手を当て青い顔をしているユキナを必死にフォローする。
「そ、そうだ!実はお忍びで聖女様がトカリの村に来て、リリに慈悲をお与えになった事にすればいい!完璧だ!」
「バカなのワタル!聖女様は100年前の人で、人族の間ではとっくに神様扱いなのよ!そんな人物がお忍びで来たら、国中から人が押し寄せるわよ!」
「なんだと・・・それじゃ・・・」
「ユキナは白竜になって隠れてもらいます」
「ガーーン」
ユキナは両手をつき、うなだれた。
ユキナの為の「遠くの国からやってきた僧侶様が人族の村でのんびりライフ作戦」は村に入って30分で終了したのであった。
作戦名から想像するよりハードモード設定だったようだ。
・・・・・・・・・
「と、とりあえずベアフの家を訪ねよう。何か知恵をくれるかもしれない」
「そんなに落ち込まないのユキナ。もしかしたら、リリの勘違いって事になっているかもしれないし・・・」
「いやそれは無理があるかもしれない・・・」
俺たちは肩を落としフヨフヨ飛んでいるユキナを励ましながらベアフの家の扉をノックした。
トントン
「誰もいないのかな?」
「留守みたいね・・・まだ森の家かしら?」
ガチャ
「あれ?開いてるぞ。おーい!ベアフーいるかー。森でお世話になったワタ・・・」
「遅い・・・家の前で何やってるの?」
「・・・・・・ッ!」
バタン!!
「何で閉めるのよ!」
「いた!なんかいた!」
家の扉を開けて中を覗くと、正面の椅子に座った女性と目があってしまった。
白や黄色の花の装飾を散りばめた緑色のドレスに、腰くらいまで伸ばした緑色の髪。
その髪にも花が咲き乱れ、前髪で隠れた顔は微笑んでいるように見えた。
その女性の周りにはフヨフヨと木の幼霊が浮かんでいた。
「はぁ?ここはベアフの家でしょ?ベアフじゃないの?」
「ち、違う。なんか緑の服を着た女の人」
「女の人?」
「これはあれだ。ベアフの奥さんだよ。びっくりして思わず閉めちゃった」
顔中ヒゲモジャで身長2メートルほどのベアフ。見たまんま熊男だけれども結婚していないとは聞いてない。
俺は勝手に独身と思っていたが、奥さんがいたようだ。
・・・・・・・・・
俺は再び家の扉を開ける
「さ、先程は失礼しました・・・てっきりベアフがいるものだと。ベアフの奥さま」
「奥さま?」
「いやーベアフも言ってくれればいいものを・・・こんなキレイな奥さまがいるなんて聞いてなかったもので。私は妖魔の森でベアフにお世話になった七星ワタルといいます」
「「・・・・・・」」
チラリとウェンディとユキナを見ると白竜ライダー形態で口を全開に開けて固まっている。
そりゃこんなキレイな奥さまがいれば驚くよな。
それにしてもこの世界ではベアフの様なワイルド系がモテるのだろうか?地球では彼女一人いなかった俺でもヒゲを生やして、イカツイ態度で過ごせばあるいはワンチャンあるかもしれない。
「そこの妖精達は変なことしてるわね。妖精が妖精に乗っている」
「え?ああ、あなたにも妖精が分かるのですね。でも、ベアフの奥様だったら納得です」
奥様はユキナに乗っているウェンディの事を言ってるようだ。
「風の妖精ウェンディと白竜族のユキナです。成り行きで契約してしてます。ほら、二人共ご挨拶して」
「あ、あなたは本当にバカなの?」
「お兄ちゃん謝ったほうが良いよ。殺されるかも・・・」
やっと口を開いた二人は変なことを言い出した。挨拶は基本だろうに。これは教育しなければ・・・
「いやーすいません。まだ、人の生活に慣れていないもので」
「ウフフ・・・面白い・・・聞いていた通り・・・」
「ハハハ・・・聞いていた通り?」
「はじめましてワタル。私は木の精霊ドリュアス・・・ガンテツの奥様」
「は?」
どうやら俺はとんでもない勘違いをしていたようだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
面白い、続きが気になるという方はいいねや感想を頂ければ嬉しいです♪
「「なぜ!?」」
ここは辺境の村トカリに住む、木こりのベアフ邸前。
静かでのどかな村にウェンディの叫び声がこだまする。
それを俺とユキナは体育座りで聞いていた。
妖精のウェンディの姿や声は普通の人には分からないので、傍から見たら二人で何も無い空間に向けて喋っているように見えるだろう。
シュールな光景の中、ウェンディの説教は続く。
「まず人族の間でお手軽な治癒魔法なんてありません」
「そ、そうなの?」
「・・・ビックリ」
意外な事実に驚きを隠せない。
「治癒魔法は経験を積んだ神職者や貴重な白の幼霊に愛された人族や白竜族しか使えないの!」
「白の幼霊は私の友達」
「それじゃ俺も癒やしのブレスを吐けるのか?やったぞ!」
早速、白の幼霊を集めようとした時
「おバカ!あなたのバカ魔力で癒やしの魔法を使ったら、大変なことになるでしょ!癒やしの魔法は制御が難しいの!やるんじゃないわよワタル!」
「お、おう・・・やめとく」
改めて考えると魔力任せで癒やしの魔法なんか使ったら、人間どうなるか分からない。不老不死にしてしまったら洒落にならん。
「それに人族が使う癒やしの魔法は、瀕死の人間を治すほど強力じゃないの!何度も魔法をかけて治していくものなの!」
「それじゃユキナの癒やしのブレスってヤバイんじゃ・・・」
「私の癒やしのブレスはすごいってお兄様たちが言ってた。ヤバいくらいに威力があるって」
ユキナの話によると、白竜族、特に王族のブレスは強力らしい。ちなみに二人の兄は凍結と白炎を得意としているらしい。
聞いた時は、「なにそれ!カッコいい」と連発してしまった。
「その通り!だからリリはユキナを伝説の聖女様と間違えたのよ」
ビシッっとユキナを指さして宣言した。
「ハッ!・・・やってしまった・・・」
「ま、まぁ。リリを治せたし、わざとやったわけじゃないし良かったじゃないかウェンディ!」
口に手を当て青い顔をしているユキナを必死にフォローする。
「そ、そうだ!実はお忍びで聖女様がトカリの村に来て、リリに慈悲をお与えになった事にすればいい!完璧だ!」
「バカなのワタル!聖女様は100年前の人で、人族の間ではとっくに神様扱いなのよ!そんな人物がお忍びで来たら、国中から人が押し寄せるわよ!」
「なんだと・・・それじゃ・・・」
「ユキナは白竜になって隠れてもらいます」
「ガーーン」
ユキナは両手をつき、うなだれた。
ユキナの為の「遠くの国からやってきた僧侶様が人族の村でのんびりライフ作戦」は村に入って30分で終了したのであった。
作戦名から想像するよりハードモード設定だったようだ。
・・・・・・・・・
「と、とりあえずベアフの家を訪ねよう。何か知恵をくれるかもしれない」
「そんなに落ち込まないのユキナ。もしかしたら、リリの勘違いって事になっているかもしれないし・・・」
「いやそれは無理があるかもしれない・・・」
俺たちは肩を落としフヨフヨ飛んでいるユキナを励ましながらベアフの家の扉をノックした。
トントン
「誰もいないのかな?」
「留守みたいね・・・まだ森の家かしら?」
ガチャ
「あれ?開いてるぞ。おーい!ベアフーいるかー。森でお世話になったワタ・・・」
「遅い・・・家の前で何やってるの?」
「・・・・・・ッ!」
バタン!!
「何で閉めるのよ!」
「いた!なんかいた!」
家の扉を開けて中を覗くと、正面の椅子に座った女性と目があってしまった。
白や黄色の花の装飾を散りばめた緑色のドレスに、腰くらいまで伸ばした緑色の髪。
その髪にも花が咲き乱れ、前髪で隠れた顔は微笑んでいるように見えた。
その女性の周りにはフヨフヨと木の幼霊が浮かんでいた。
「はぁ?ここはベアフの家でしょ?ベアフじゃないの?」
「ち、違う。なんか緑の服を着た女の人」
「女の人?」
「これはあれだ。ベアフの奥さんだよ。びっくりして思わず閉めちゃった」
顔中ヒゲモジャで身長2メートルほどのベアフ。見たまんま熊男だけれども結婚していないとは聞いてない。
俺は勝手に独身と思っていたが、奥さんがいたようだ。
・・・・・・・・・
俺は再び家の扉を開ける
「さ、先程は失礼しました・・・てっきりベアフがいるものだと。ベアフの奥さま」
「奥さま?」
「いやーベアフも言ってくれればいいものを・・・こんなキレイな奥さまがいるなんて聞いてなかったもので。私は妖魔の森でベアフにお世話になった七星ワタルといいます」
「「・・・・・・」」
チラリとウェンディとユキナを見ると白竜ライダー形態で口を全開に開けて固まっている。
そりゃこんなキレイな奥さまがいれば驚くよな。
それにしてもこの世界ではベアフの様なワイルド系がモテるのだろうか?地球では彼女一人いなかった俺でもヒゲを生やして、イカツイ態度で過ごせばあるいはワンチャンあるかもしれない。
「そこの妖精達は変なことしてるわね。妖精が妖精に乗っている」
「え?ああ、あなたにも妖精が分かるのですね。でも、ベアフの奥様だったら納得です」
奥様はユキナに乗っているウェンディの事を言ってるようだ。
「風の妖精ウェンディと白竜族のユキナです。成り行きで契約してしてます。ほら、二人共ご挨拶して」
「あ、あなたは本当にバカなの?」
「お兄ちゃん謝ったほうが良いよ。殺されるかも・・・」
やっと口を開いた二人は変なことを言い出した。挨拶は基本だろうに。これは教育しなければ・・・
「いやーすいません。まだ、人の生活に慣れていないもので」
「ウフフ・・・面白い・・・聞いていた通り・・・」
「ハハハ・・・聞いていた通り?」
「はじめましてワタル。私は木の精霊ドリュアス・・・ガンテツの奥様」
「は?」
どうやら俺はとんでもない勘違いをしていたようだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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