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第三章 悩める剣士との出会い
第35話 満点の星空
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「さぁ刮目せよ!草津や湯布院もびっくりな風呂を見せてやろうではないか」
「おお・・・なんだが分からないけど、お兄ちゃんカッコいい・・・」
「ユキナ見てなさい。絶対失敗するわよ」
ああ、やっぱり分かってくれるのは妹かもしれない。チンチクリンな妖精はどうでもいい。
「さぁ土の幼霊よ。我の元に集まるが良い」
両手、両足を広げ、いつものポーズをする俺。
次々と集まってくる黄色っぽい土の幼霊が俺の体に纏わりつく。
イメージ・・・イメージ・・・
「これだ!露天風呂!」
ドドドッドーン!!!
そこに現れたのは巨大な露天風呂。お湯は張っていないが、見事な露天風呂が現れるはずだった・・・
「巨大な落とし穴ね・・・」
「露天風呂って落とし穴の事なのお兄ちゃん?」
「・・・・・・あー・・・えーと・・・予行練習は終わりだ」
俺は巨大な穴を前に、呟いた。
これでお湯を張ったら見事な水濠になってしまう。
・・・・・・・・・
「あ~~~ヤバい・・・溶ける・・・」
巨大な落とし穴を作ってから約1時間ほど、俺はようやく風呂を作り上げた。
巨大な露天風呂とは程遠い縦横3メートル、高さ1メートルほどの土の壁を作り上げ水を貯めた。
それから火の幼霊にお湯になるようにお願いするも、沸騰し、それを冷ますために水の幼霊に頼むと冷水となった。
繰り返すこと十数回。ようやく適温なった時には汗だくのドロドロだ。
上半身裸になり、出来上がった風呂を眺めることしばし・・・いよいよ入浴である。
ウェンディとユキナは飽きてしまったのか精霊馬に入ってしまっている。
まぁいい。一番風呂は風呂を作り上げた人間の特権なのだ。
・・・・・・・・・
ああ、これぞ風呂。
自然と声が出てしまうのも仕方がない。
久しく忘れていたジャパニーズ感を実感する。
バリバリに固まった髪をお湯につけ、湯船に沈むといろいろな汚れが溶けていく感覚と共に疲れが抜けていった。
そりゃいきなり異世界に連れてこられて、緊張の日々を過ごせば、疲れもするはずだ。
「おお!見事な星空!まさしく露天風呂」
いつの間にか夜になっていたようだ。
俺はどんだけ頑張ったんだ?空を見上げると、満点の星空が広がっている。
排ガスやビルの明かりなんて関係ないこの世界ではこれが普通なのだろうが、俺にとってはまるで山の上で天体観測をしているようだ。
・・・・・・・・・
「・・・・・なちさーい!ユキナ!」
チャポン
「ん?なんだ?」
いつの間にか目を閉じて眠ってしまった俺はウェンディの声に目を開ける。
「ワタルお兄ちゃん。私も入った・・・」
「どわーーー!!!な、なんでー!」
目の前にユキナが突然現れたので素っ頓狂な声を上げてしまった。
何故か白竜の姿ではなく、人間の姿だ。
「だって、私もお兄様と入っていたから」
「で、でもお姫様とはまずいだろ?」
「今はお姫様じゃない・・・それにね」
バシャ
「ユキナ!立ち上がっちゃ駄目ー!」
「うわっ!顔にへばりつくなウェンディ!」
「今からワタルの目を潰すから、服着なさいユキナ!」
「フフフ・・・平気だよウェンディお姉ちゃん。服なら着てるよ」
ユキナは薄い着物のような服を身に着けていた。湯浴みっていうやつかな?
「これなら一緒に入れるでしょ?」
・・・・・・・・・
「確かに気持ち良いわね~でかしたわワタル」
ウェンディはベアフからもらった木の深皿にお湯を貯めクルクル回っている。
目○の親父かお前は!!
俺が心のなかでウェンディに突っ込むと
グスッ・・・エグッ・・・
「・・・・・・ごめんね。ワタルお兄ちゃん・・・私はずるい子なの・・・」
ユキナは泣きながら謝り始めたではないか。それまでののんびりした空気が変わった。
「どうしたユキナ!何で泣いているんだ?」
「グスッ・・・私ね・・・初めてワタルお兄ちゃんとあった時に魔力を覗いたの」
グレートデビルウルフの死骸を見て俺に抱きついて来た時かな。
「お兄ちゃんの魔力は誰かを守っている感覚がしたの・・・多分お兄ちゃんの妹でしょ?」
「・・・そうか。・・・ああ、多分妹のハルカだ」
「あの時は助かりたくて、妹らしく演じれば助けてくれると思った・・・だからずるい子なの・・・こんな子供嫌でしょ?」
そんな事を考えていたのか・・・
極限状態な中、子供なりに助かる手段を一生懸命考えたのだろう。
俺の魔力の中に一筋の光を見つけたのかもしれない。
「ユキナはずるい子なんかじゃないよ。嫌いになんかなるもんか」
「でも・・・ワタルお兄ちゃんを利用した・・・」
俺はユキナの白銀の髪に手をおいて答える。
「・・・なぁユキナ。俺と契約して後悔したかい?」
「してない!してないよ!むしろ前よりも楽しい!ウェンディお姉ちゃんと仲良くもなれた!」
俯いていたユキナは金色の目をキラキラして答える。
「子供があの状況で何かに縋り付くのは当然だ。大人だって助けてもらいたいと思うぞ」
「そうなの?」
「そうだ。俺だったら誰かに全力で縋り付く!」
「フフフッ。そうかも」
「俺とウェンディはユキナを妹にしたいと思った。ユキナは俺達をお兄ちゃんとお姉ちゃんにしたいと思った」
「うん」
「それが全てだ・・・だから泣くなよ。子供なんだから難しいこと考えないで堂々と妹になれ」
「・・・うん・・・妹になる」
笑顔になったユキナの後ろには瞳と同じ色の満点の星空が輝いている。
たくさんある星の中から一つを見つけ、縁を結ぶ。
運命なんか信じていないけど、ユキナとの出会いは奇跡かもしれないと思った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
面白い、続きが気になるという方はいいねや感想を頂ければ嬉しいです♪
「おお・・・なんだが分からないけど、お兄ちゃんカッコいい・・・」
「ユキナ見てなさい。絶対失敗するわよ」
ああ、やっぱり分かってくれるのは妹かもしれない。チンチクリンな妖精はどうでもいい。
「さぁ土の幼霊よ。我の元に集まるが良い」
両手、両足を広げ、いつものポーズをする俺。
次々と集まってくる黄色っぽい土の幼霊が俺の体に纏わりつく。
イメージ・・・イメージ・・・
「これだ!露天風呂!」
ドドドッドーン!!!
そこに現れたのは巨大な露天風呂。お湯は張っていないが、見事な露天風呂が現れるはずだった・・・
「巨大な落とし穴ね・・・」
「露天風呂って落とし穴の事なのお兄ちゃん?」
「・・・・・・あー・・・えーと・・・予行練習は終わりだ」
俺は巨大な穴を前に、呟いた。
これでお湯を張ったら見事な水濠になってしまう。
・・・・・・・・・
「あ~~~ヤバい・・・溶ける・・・」
巨大な落とし穴を作ってから約1時間ほど、俺はようやく風呂を作り上げた。
巨大な露天風呂とは程遠い縦横3メートル、高さ1メートルほどの土の壁を作り上げ水を貯めた。
それから火の幼霊にお湯になるようにお願いするも、沸騰し、それを冷ますために水の幼霊に頼むと冷水となった。
繰り返すこと十数回。ようやく適温なった時には汗だくのドロドロだ。
上半身裸になり、出来上がった風呂を眺めることしばし・・・いよいよ入浴である。
ウェンディとユキナは飽きてしまったのか精霊馬に入ってしまっている。
まぁいい。一番風呂は風呂を作り上げた人間の特権なのだ。
・・・・・・・・・
ああ、これぞ風呂。
自然と声が出てしまうのも仕方がない。
久しく忘れていたジャパニーズ感を実感する。
バリバリに固まった髪をお湯につけ、湯船に沈むといろいろな汚れが溶けていく感覚と共に疲れが抜けていった。
そりゃいきなり異世界に連れてこられて、緊張の日々を過ごせば、疲れもするはずだ。
「おお!見事な星空!まさしく露天風呂」
いつの間にか夜になっていたようだ。
俺はどんだけ頑張ったんだ?空を見上げると、満点の星空が広がっている。
排ガスやビルの明かりなんて関係ないこの世界ではこれが普通なのだろうが、俺にとってはまるで山の上で天体観測をしているようだ。
・・・・・・・・・
「・・・・・なちさーい!ユキナ!」
チャポン
「ん?なんだ?」
いつの間にか目を閉じて眠ってしまった俺はウェンディの声に目を開ける。
「ワタルお兄ちゃん。私も入った・・・」
「どわーーー!!!な、なんでー!」
目の前にユキナが突然現れたので素っ頓狂な声を上げてしまった。
何故か白竜の姿ではなく、人間の姿だ。
「だって、私もお兄様と入っていたから」
「で、でもお姫様とはまずいだろ?」
「今はお姫様じゃない・・・それにね」
バシャ
「ユキナ!立ち上がっちゃ駄目ー!」
「うわっ!顔にへばりつくなウェンディ!」
「今からワタルの目を潰すから、服着なさいユキナ!」
「フフフ・・・平気だよウェンディお姉ちゃん。服なら着てるよ」
ユキナは薄い着物のような服を身に着けていた。湯浴みっていうやつかな?
「これなら一緒に入れるでしょ?」
・・・・・・・・・
「確かに気持ち良いわね~でかしたわワタル」
ウェンディはベアフからもらった木の深皿にお湯を貯めクルクル回っている。
目○の親父かお前は!!
俺が心のなかでウェンディに突っ込むと
グスッ・・・エグッ・・・
「・・・・・・ごめんね。ワタルお兄ちゃん・・・私はずるい子なの・・・」
ユキナは泣きながら謝り始めたではないか。それまでののんびりした空気が変わった。
「どうしたユキナ!何で泣いているんだ?」
「グスッ・・・私ね・・・初めてワタルお兄ちゃんとあった時に魔力を覗いたの」
グレートデビルウルフの死骸を見て俺に抱きついて来た時かな。
「お兄ちゃんの魔力は誰かを守っている感覚がしたの・・・多分お兄ちゃんの妹でしょ?」
「・・・そうか。・・・ああ、多分妹のハルカだ」
「あの時は助かりたくて、妹らしく演じれば助けてくれると思った・・・だからずるい子なの・・・こんな子供嫌でしょ?」
そんな事を考えていたのか・・・
極限状態な中、子供なりに助かる手段を一生懸命考えたのだろう。
俺の魔力の中に一筋の光を見つけたのかもしれない。
「ユキナはずるい子なんかじゃないよ。嫌いになんかなるもんか」
「でも・・・ワタルお兄ちゃんを利用した・・・」
俺はユキナの白銀の髪に手をおいて答える。
「・・・なぁユキナ。俺と契約して後悔したかい?」
「してない!してないよ!むしろ前よりも楽しい!ウェンディお姉ちゃんと仲良くもなれた!」
俯いていたユキナは金色の目をキラキラして答える。
「子供があの状況で何かに縋り付くのは当然だ。大人だって助けてもらいたいと思うぞ」
「そうなの?」
「そうだ。俺だったら誰かに全力で縋り付く!」
「フフフッ。そうかも」
「俺とウェンディはユキナを妹にしたいと思った。ユキナは俺達をお兄ちゃんとお姉ちゃんにしたいと思った」
「うん」
「それが全てだ・・・だから泣くなよ。子供なんだから難しいこと考えないで堂々と妹になれ」
「・・・うん・・・妹になる」
笑顔になったユキナの後ろには瞳と同じ色の満点の星空が輝いている。
たくさんある星の中から一つを見つけ、縁を結ぶ。
運命なんか信じていないけど、ユキナとの出会いは奇跡かもしれないと思った。
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