異世界街道爆走中〜転生したのでやりたい仕事を探します。

yuimao

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第二章 小さな白竜との出会い

第27話 小さな白竜

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「これは・・・やっちまったのか?」
「私は知らない・・・私は知らない・・・」

 ウェンディは取調室で刑事に罪を咎められている犯人のような台詞を繰り返している。
 もう自供しているようなものだ。

 落ち着け。こんな時はどうするんだったか?
 少し前に見た自動車の免許更新の時に見たビデオを思い出す。

「酔っていた運転手は危険運転致死傷罪が適応され、禁錮○年の刑が確定しました」

 ニュース映像が放送された事が思い出されて青くなる俺。

「違う!違う!そうじゃない。まずは落ち着けウェンディ!!」
「・・・ハッ!・・・あなたも落ち着きなさいワタル」
「ま、まずは人命救助だ!俺は救急車を呼ぶから、ウェンディはLEDじゃないAEDを準備してくれ!」
「ごめん何言ってるのか分からないわ」

 ・・・そうだここは異世界だ。救急車もAEDも存在しない。

「ふぅ~そうだな・・・まずは人口呼吸だな・・・」
「は?」

 まずはあごを持ち上げて気道を確保して、鼻をつまみ、口に空気を送るだったかな?

「あ、あなた何をするの?」
「何って人命救助だ。ウェンディは周囲の安全確認よろしく」

 俺は倒れている少女のあごを持ち上げて、鼻をつまみ、息を吸い込んだ。
「よし!スゥ~~~」
「この変態!!!」

 ヘブッ!

 ウェンディは人口呼吸の体制に入った俺に体当たりをかました。

「なにするんだ!邪魔するなウェンディ!」
「あなたこそ何女の子にキスしようとしてるのよ!」
「バカ!!これは人命救助だ!」
「バカはあなたよ!この子生きてるわよ」
「へ?」
「さっき鼻つまんだ時に動いたでしょ?」
「・・・・・・あ。確かにそうだ」

 さっき鼻をつまんだ時にピクッて動いた気がした。良く見れば胸が規則的に動いている。

「なんだそうか・・・良かったなウェンディ」
「あなたが小さな女の子を見るとキスをすることが分かってよかったわ」
「ちょ!待て待て大きな誤解が存在するぞ!」
「やっぱりエアロ様に報告して裁いてもらうわ」
「だ~やめて!」

 必死に説明すること小一時間。
 すべてのボキャブラリーを駆使してウェンディを納得させた。・・・疲れた。

 ・・・・・・・・・

「とりあえずこの子の様子を見てみるか」
「あなたがキスしないか監視してるわね」
「だから違うって」

 俺はウェンディ監視の元、改めてこの子の様子を確認する。

 歳の頃は10歳くらいかかな?小学生高学年ほどだ。
 髪の色は銀髪に近い白。閉じた目には長いまつ毛がある。
 ん?首にチョーカーのようなものをしている。首飾りのようなだな。青白い肌なので酷く目立つ。

 服はボロボロの麻状のワンピースを着ており、あちこちホツレが目立つ。
 足は裸足で、傷だらけで痛々しい。

 そう言えば俺もデビルウルフに肩口をやられたが、いつの間にか痛みがない。

「お、おい。大丈夫か?」
 少女の肩を軽く揺すってみる。
 ウェンディがピクッとしたが気にしない。

「・・・・・・ん」
「起きたみたいだな。大丈夫か?。怪我してないか?」
「・・・あなた誰?・・・悪い人なの?」

 少女は金色の大きな瞳を開けてじっと俺を見つめている。

「俺は七星ワタル。馬車で旅をしているんだ。悪い人じゃないよ」
「そっちの妖精さんも悪い人じゃないの?」
「えっ!君にウェンディが見えるのかい?」
「やっぱりあなたは私が見えるのね」
「ん?どういう事だ?」

 知り合いか?

「この子は妖精よ。しかもとびきり希少な」
「妖精?・・・えっとこの妖精は悪い人じゃないよ。君を食べたりしないから安心して」
「なんですって!いつから私が人食い妖精になったのよ!」
「ナッシー食ってただろ?共食いじゃねーか」
「あれは果物なの!!妖精がくれた果物なの!!」

 ギャーギャー!

「ふふ・・・ふたりとも仲がいい」
「ごめんごめん。つい熱くなってしまった」
「ふーワタルは色々教えないといけないわね」

 小さな女の子を前に騒ぎすぎた。俺は大人なので怯えさせてはいけない。
 でも、俺たちのやりとりで笑ってくれた。少し落ち着いたかな。

「もうあの黒い魔獣はいないの?」
「黒い魔獣ってあれのことか?」
「ヒッ!!」

 俺がグレートデビルウルフの死骸を指差し、少女が目線を向けると、悲鳴を上げて俺に抱きついてきた。

「おうっ!?大丈夫か?」
「わ、私・・・あの黒い魔獣に食べられそうになって・・・怖くて・・・もう死ぬかもって・・・ヒグッ・・・エグッ」
「・・・うん・・・うん。そうか・・・怖かったんだな。でもあいつはもう動かないから大丈夫だ」
 これは少し時間を置いたほうが良さそうだな。

 ・・・・・・・・・

「ワタルは小さな女の子の扱いが上手いわね」
「ああ。幼い頃ハルカが泣いていた時に慰めていたからな」
「そうなのね。変態ロリコン男じゃなくて良かったわ」
「お前な~」
 俺はそんな奴ではないぞ。

「さっきこの子が妖精だって言ってなかったか?しかも希少な」
「この子はね・・・白竜族の精霊の子供よ」
「・・・白竜族」

 俺の腕の中でスヤスヤと眠る少女に呟いた。













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