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第二章 小さな白竜との出会い
第26話 これはやっちまったのか?
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精霊馬車は俺たちの願いを無視して森の中へ突っ込んで行った。
バキバキバキッ!!
バリバリバリバリ!!
「いやーー!!!」
「うぉーー!停まってくれーー!」
迫りくる木々などお構いなしになぎ倒し、ドンドン進んでいく精霊馬。
バリアのようなもので俺とウェンディに直接木が当たることはないが、生い茂る草や木のせいで前が全く見えない。
後ろを振り向くと、荷台がピカピカ光っており、なんともシュールな状況だ。
日本のアトラクションでは味わえない本当の死を予感させるジェットコースターに俺は叫び続けた。
「あは、あはは・・・馬が歌いながら爆走してる・・・はははは」
「まずい!ウェンディが壊れた」
あまりの異常な状況にウェンディの精神は限界に達してしまったようだ。
このままではまずいと思った時
急に視界が開けた。
森の中にぽっかり空いた場所に突っ込んで行く精霊馬は全く止まる気配がない。
《ほう。俺の前に立ち塞がるとはその心意気だけでも評価してやろう》
「デビルウルフが出たー!しかもデカイ!!」
精霊馬の声でに前を見ると、今までのデビルウルフの5倍近いヤツが姿を現した。
まるで小さな黒山のようだ。
グレートデビルウルフ・・・デビルウルフのボス。非常に凶暴で人を襲う。グレートデビルウルフが倒されると他は逃げ出す。
そいつは、箱のような物に噛みついてる。
あれは檻なのか?
「ッ!?グルルル!!」
グレートデビルウルフはこちらに気づくとすぐに威嚇の唸り声を上げ始める。すでに敵認識されているようだ。
《ほう?逃げないのか。しかし、雑魚は雑魚。終わりだ小童》
「・・・うそ?あれに突っ込むの?」
「あははは。おもしろーい♪」
・・・ウェンディはだめかもしれない。
《邪魔だ。俺の前に立った事を後悔するがいい》
怯むどころか、さらにスピードを上げる精霊馬。黒い山がグングン近づいてきた。
「だ、駄目だ・・・あのサイズはさすがにヤバイ・・・」
《いざゆかん!異世界の彼方へ!》
「止まれー!!!ウワァー!!」
「あはははー!!!」
ドォーーーーン!!!
俺が覚えているのでそこまでだった。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「ねぇねぇ起きて!」
「ああハルカ・・・もう少し寝かせてくれ。」
やはり家が一番だな。ハルカに起こされるのは久しぶりな感じがする。
パシパシッ
ハルカは俺のオデコをパシパシ叩いてきた。なんだか起こし方が激しめになったな。結婚して変わったのかな?
「ねぇねぇ」
「俺さ・・・変な夢を見たんだよ。チンチクリンな口うるさい妖精と喋る馬と一緒にジェットコースターに乗ったんだ」
「ッ!?」
「そしたら、妖精が笑って現実逃避してやんの。ウケるだろ?」
ヘブっ!!
俺が夢の内容を語った瞬間、ハルカが腹の辺りにボディプレスを食らわせてきた。
「これは流石にお兄ちゃんもキツイ・・・」
「いい加減に起きなさいワタル!」
「ハッ!!」
ここはどこだ?なんでこんな所で寝ているんだ?
辺りをゆっくり見回してみる。
少し離れた所に見える森。
ワサワサと生えている草。
チラチラ光る幼霊。
フヨフヨ浮かんでいるウェンディ。
「・・・やぁおはよう。ウェンディ」
「アナタが私のことをどう思っているのか良く分かったわ」
「あ・・・いや・・・あれはだな・・・夢の中の事で・・・決してウェンディの事を」
「誰がチンチクリンで口うるさいですって!?」
「き、きっと俺たちの間には意見の相違があると思うんだ・・・」
「うるさい!ウィンドカッター!!」
「お、お前殺す気か~!」
逃げ惑うことしばし・・・
俺達は一体何をやっているのだろうか・・・
・・・・・・・
さて、改めて状況を整理してみよう。
俺達の周りには、荷台と大きな黒い塊、そして壊れた檻らしきものがある。
精霊馬は、どこかに行ってしまったらしく、ポツンと荷台だけ残されている。
「暴走モード」
保有する全魔力を使い、馬車が暴走します。魔力が尽きるまで暴れまわり、すべてをなぎ倒す。
暴走モードはその説明の通り、無敵の馬がすべての敵をなぎ倒し進んで行くものだった。
ピカピカ光る装飾と歌う馬は謎だが、そのへんは親父の趣味かもしれない。
全く意味がわからない機能だしな。
まぁお陰でデビルウルフの襲撃から抜け出したことは良かった。
この世界に来て初めて命の危険を感じたから、とりあえずは安心だ。
しかし、「暴走モード」は本当に最後の手段だ。状況をよく考えないと非常に危険である。
人が密集しているよう場所では絶対に使えないだろう。ウェンディもおかしくなるし。
俺が気を失ってしまったのは、魔力を使い切ったせいだな。体全体が気だるいのはそのせいかもしれない。
「精霊馬はどこに行ったんだ?」
「あのバカ馬ならあなたの腕輪の中じゃないの」
ウェンディに言われて右腕をみてみると、いつの間にか銀の腕輪がある。馬は契約精霊なのでなんとなくそこにいる気がする。
「バカ馬って・・・一応俺たちを助けてくれたんだから」
「私のこと嬢ちゃんって言うし、おかしな歌を歌うし・・・あんなのバカ馬で十分よ!」
「怒るのそこかよ」
「なぁあれは死んでいるんだよな?」
目の前にいる気になる存在の黒い塊・・・グレードデビルウルフを指差した。
「ええ、あのバカ馬が突撃して死んだわ。もう動かないわよ」
「そ、そうか。良かった。さすがは精霊馬だ・・・あとは荷台だな」
「よくあの暴走に耐えられたわね。傷一つ無いないなんて・・・えっ?」
「ん?どうしたウェンディ?」
荷台の様子を見に行ったウェンディが固まっている。
「ワ、ワタル・・・もしかして・・・」
「何だよ?何かあるの・・・か?・・・うぉ!」
「わ、私は何も知らないわ・・・私は何も知らないわ・・・」
「・・・これはやっちまったのか?」
荷台の中に横たわる少女の死体を見て俺は呟いた。
バキバキバキッ!!
バリバリバリバリ!!
「いやーー!!!」
「うぉーー!停まってくれーー!」
迫りくる木々などお構いなしになぎ倒し、ドンドン進んでいく精霊馬。
バリアのようなもので俺とウェンディに直接木が当たることはないが、生い茂る草や木のせいで前が全く見えない。
後ろを振り向くと、荷台がピカピカ光っており、なんともシュールな状況だ。
日本のアトラクションでは味わえない本当の死を予感させるジェットコースターに俺は叫び続けた。
「あは、あはは・・・馬が歌いながら爆走してる・・・はははは」
「まずい!ウェンディが壊れた」
あまりの異常な状況にウェンディの精神は限界に達してしまったようだ。
このままではまずいと思った時
急に視界が開けた。
森の中にぽっかり空いた場所に突っ込んで行く精霊馬は全く止まる気配がない。
《ほう。俺の前に立ち塞がるとはその心意気だけでも評価してやろう》
「デビルウルフが出たー!しかもデカイ!!」
精霊馬の声でに前を見ると、今までのデビルウルフの5倍近いヤツが姿を現した。
まるで小さな黒山のようだ。
グレートデビルウルフ・・・デビルウルフのボス。非常に凶暴で人を襲う。グレートデビルウルフが倒されると他は逃げ出す。
そいつは、箱のような物に噛みついてる。
あれは檻なのか?
「ッ!?グルルル!!」
グレートデビルウルフはこちらに気づくとすぐに威嚇の唸り声を上げ始める。すでに敵認識されているようだ。
《ほう?逃げないのか。しかし、雑魚は雑魚。終わりだ小童》
「・・・うそ?あれに突っ込むの?」
「あははは。おもしろーい♪」
・・・ウェンディはだめかもしれない。
《邪魔だ。俺の前に立った事を後悔するがいい》
怯むどころか、さらにスピードを上げる精霊馬。黒い山がグングン近づいてきた。
「だ、駄目だ・・・あのサイズはさすがにヤバイ・・・」
《いざゆかん!異世界の彼方へ!》
「止まれー!!!ウワァー!!」
「あはははー!!!」
ドォーーーーン!!!
俺が覚えているのでそこまでだった。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「ねぇねぇ起きて!」
「ああハルカ・・・もう少し寝かせてくれ。」
やはり家が一番だな。ハルカに起こされるのは久しぶりな感じがする。
パシパシッ
ハルカは俺のオデコをパシパシ叩いてきた。なんだか起こし方が激しめになったな。結婚して変わったのかな?
「ねぇねぇ」
「俺さ・・・変な夢を見たんだよ。チンチクリンな口うるさい妖精と喋る馬と一緒にジェットコースターに乗ったんだ」
「ッ!?」
「そしたら、妖精が笑って現実逃避してやんの。ウケるだろ?」
ヘブっ!!
俺が夢の内容を語った瞬間、ハルカが腹の辺りにボディプレスを食らわせてきた。
「これは流石にお兄ちゃんもキツイ・・・」
「いい加減に起きなさいワタル!」
「ハッ!!」
ここはどこだ?なんでこんな所で寝ているんだ?
辺りをゆっくり見回してみる。
少し離れた所に見える森。
ワサワサと生えている草。
チラチラ光る幼霊。
フヨフヨ浮かんでいるウェンディ。
「・・・やぁおはよう。ウェンディ」
「アナタが私のことをどう思っているのか良く分かったわ」
「あ・・・いや・・・あれはだな・・・夢の中の事で・・・決してウェンディの事を」
「誰がチンチクリンで口うるさいですって!?」
「き、きっと俺たちの間には意見の相違があると思うんだ・・・」
「うるさい!ウィンドカッター!!」
「お、お前殺す気か~!」
逃げ惑うことしばし・・・
俺達は一体何をやっているのだろうか・・・
・・・・・・・
さて、改めて状況を整理してみよう。
俺達の周りには、荷台と大きな黒い塊、そして壊れた檻らしきものがある。
精霊馬は、どこかに行ってしまったらしく、ポツンと荷台だけ残されている。
「暴走モード」
保有する全魔力を使い、馬車が暴走します。魔力が尽きるまで暴れまわり、すべてをなぎ倒す。
暴走モードはその説明の通り、無敵の馬がすべての敵をなぎ倒し進んで行くものだった。
ピカピカ光る装飾と歌う馬は謎だが、そのへんは親父の趣味かもしれない。
全く意味がわからない機能だしな。
まぁお陰でデビルウルフの襲撃から抜け出したことは良かった。
この世界に来て初めて命の危険を感じたから、とりあえずは安心だ。
しかし、「暴走モード」は本当に最後の手段だ。状況をよく考えないと非常に危険である。
人が密集しているよう場所では絶対に使えないだろう。ウェンディもおかしくなるし。
俺が気を失ってしまったのは、魔力を使い切ったせいだな。体全体が気だるいのはそのせいかもしれない。
「精霊馬はどこに行ったんだ?」
「あのバカ馬ならあなたの腕輪の中じゃないの」
ウェンディに言われて右腕をみてみると、いつの間にか銀の腕輪がある。馬は契約精霊なのでなんとなくそこにいる気がする。
「バカ馬って・・・一応俺たちを助けてくれたんだから」
「私のこと嬢ちゃんって言うし、おかしな歌を歌うし・・・あんなのバカ馬で十分よ!」
「怒るのそこかよ」
「なぁあれは死んでいるんだよな?」
目の前にいる気になる存在の黒い塊・・・グレードデビルウルフを指差した。
「ええ、あのバカ馬が突撃して死んだわ。もう動かないわよ」
「そ、そうか。良かった。さすがは精霊馬だ・・・あとは荷台だな」
「よくあの暴走に耐えられたわね。傷一つ無いないなんて・・・えっ?」
「ん?どうしたウェンディ?」
荷台の様子を見に行ったウェンディが固まっている。
「ワ、ワタル・・・もしかして・・・」
「何だよ?何かあるの・・・か?・・・うぉ!」
「わ、私は何も知らないわ・・・私は何も知らないわ・・・」
「・・・これはやっちまったのか?」
荷台の中に横たわる少女の死体を見て俺は呟いた。
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