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第一章 妹との別れ、妖精との出会い
第1話 神様にドロップキック
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目を覚ますと白い世界にいた。壁や天井はなくただ白い世界。
こんな所は来たことがない。
訳が分からない・・・
「ようやく目を覚ましましたね」
「「よー元気そう・・・」」バシッ!!
「あなたは黙っていてください!!」
女性の声に続いて、どこか懐かしいような野太い声が聞こえたが、女性に突っ込まれたようだ。
何をやってるんだ?
ますますわけが分からない。
だんだん目の焦点が合っていき、目の前の人物の姿がわかるようになってきた。
装飾の付いた真っ白いローブのような服を着て、手に本を持っている女性がはじめに俺に声を掛けた人のようだ。
銀縁メガネがよく似合っている。
その隣に頭を抱えてうずくまっている大柄の男性らしき人物。
女性と同じように装飾の付いた真っ白い服を着ているが、こちらはフードを被っており顔がよく見えない。
「あの~・・・ここは・・・」
「ここは狭間の世界です。人によってはあの世と呼ばれているところです」
「はっ?ということは俺って死んだんですか?!」
「う~ん。正確には違いますが、あなたの肉体は地球に、魂がここに来ている状態です」
「・・・・・・」
俺は死んでいるかもしれない。
もしかしたら、ここは死んだら閻魔大王に色々聞かれて、天国か地獄かを決定される裁判所みたいなとこかな?
地獄は嫌だな。そんなに悪いことはしてないはず。
「ところでそこで頭を抱えている人は誰ですか?閻魔大王的な人なのかな?」
「誰が閻魔大王だー!」バシッ!
「だから少し黙っていて下さい!気持ちはわかりますが話がややこしくなります!」
「いってっー・・・エルザは最近暴力的になって来たぞ。やっぱり彼氏とうまく行ってな・・・」
キッ!
「なんです?」
エルザさんは銀縁眼鏡を手に掛け、男性をみた。
無表情なのが怖い。
どうやら彼氏とうまく行ってないようだ。
「なんでもないです。ゴメンナサイ」
「いいですか?あなただけでワタルさんに説明すると絶対に揉めるから、あの方に私が説明をお願いされたんです!お願いだから大人しくして下さい」
「分かった。分かった。黙るから怒るなよ」
「まったく・・・お願いしますよ」
このやり取りを見ると男性よりもエルザと呼ばれている女性が立場が上のようだ。
それにしても男性の声はどこかで聞いたような気がする。
「ゴホンッ!失礼しました。説明を続けます」
「はい。お願いします。」
なぜだか俺も素直に返事してしまった。
「私はエルザ。この狭間の世界を管理している者です。」
「って言うことは神様的な偉い人?」
「違います。事務職です。」
「そうなんですね」
「ちなみにこの人の部下です。」
「・・・おう。そうですか」
狭間の世界は地球と違って、部下は上司にツッコミを入れても良いらしい。
俺のいた会社では、飲み会の席で上司が「今日は無礼講だから本音を言え!」と言われても無礼講にはならない。
社会人経験が浅い若手が、上司に頭を叩いたり、本音を言おうものなら、次の転勤候補になる。
それも誰も行きたがらない僻地へだ。
「先ほども言いましたが、七星ワタルさんは魂がこちらに来ている状態、つまり死にかけです」
「はぁそうですか。」
「今は病院のベッドで生死の境を彷徨っています」
思い返してみると、俺は妹のハルカの結婚式に参加した後、帰り道の途中から覚えていない。
つまり、その時に事故か病気かになったのだろう。通り魔的な事件ということもあるかもしれない。
「俺は・・・このまま死ぬんですか?」
「何もしなければこのまま死にます」
「何もしなければ?」
エルザが不思議なことを言い出した。まるで死を回避できる方法があるみたいでないか。
そんな疑問を持っていると・・・。
「ここでワタルさんに2つの選択肢があります。非常に難しい選択ですが選んで下さい」
「・・・それはなんですか?」
「一つ目は、このまま死を受け入れて、死後の世界に旅立つ」エルザが人差し指を立てた。
「二つ目は意識が戻らないですが、少しの間地球にいることができる。」
「二つ目の選択をした場合、サービスで僅かの時間ですが妹さんとお話できます」と中指を立てながらエルザは話した。
「・・・えっと・・・2つ目のやつは、どのくらい妹と話ができることは出来ますか?」
「もし、2つ目を選んた場合は今から数分程度話せます。ちなみワタルさん自身はあと一年ほどで死んでしまいます。」
「一年か・・・」
さて、どうしたものか?
この急展開に俺は腕組みをして考えてみる。やっぱり一番は妹のことだ。
もう一度、妹に話してみたいことは沢山ある
「ちゃんと飯食えよ」妹は少食だ。健康に気をつけてほしい。
「自分の意見はしっかり言うんだぞ」妹は引っ込み思案で自分を抑え込みやすい。
「幸せになるんだぞ」あーこれは結婚式の時に言ったか。
その他にも、俺自身がやり残したこと、これからやりたいことは沢山ある。
などなど・・・
結局あれこれ考えた結果、俺の出した結論は・・・
「あの、エルザさん。俺はこのまま死を受け入れます。」
「宜しいのですか?理由を聞かせてもらっても良いですか?」
エルザさんは俺の目を見て言った。金色に近い黄色い目を見つめ返し俺は答える。
「確かにハルカに会って色々伝えたいことはあります。でもハルカの事だから、生き延びる選択をしたら、必死になって俺の看病をすることでしょう。せっかく結婚して幸せになったんだ、そんなことに時間をかけて欲しくない。」
「二度と妹さんには会えなくなりますよ。それでもですか?」
「それでもです。」
「・・・わかりました。あなたの選択を尊重します。辛い質問をしてしまい申し訳ございませんでした」
きっとこれで良かったんだ。
「だ、そうです。」
「よーく分かった!良く決心したなワタル!やっぱりお前は優しいやつだ!」
エルザに振られた男は威勢よく答え、フードをめくる。
「久しぶりだなワタル。さぁこの胸に飛び込んでこい!」
あーやっぱりだ。間違いない。
俺はダッシュをして
「今までどこに行っていたんだクソ親父!!!」
俺は気色悪い笑みを浮かべる親父にドロップキックをかました。
こんな所は来たことがない。
訳が分からない・・・
「ようやく目を覚ましましたね」
「「よー元気そう・・・」」バシッ!!
「あなたは黙っていてください!!」
女性の声に続いて、どこか懐かしいような野太い声が聞こえたが、女性に突っ込まれたようだ。
何をやってるんだ?
ますますわけが分からない。
だんだん目の焦点が合っていき、目の前の人物の姿がわかるようになってきた。
装飾の付いた真っ白いローブのような服を着て、手に本を持っている女性がはじめに俺に声を掛けた人のようだ。
銀縁メガネがよく似合っている。
その隣に頭を抱えてうずくまっている大柄の男性らしき人物。
女性と同じように装飾の付いた真っ白い服を着ているが、こちらはフードを被っており顔がよく見えない。
「あの~・・・ここは・・・」
「ここは狭間の世界です。人によってはあの世と呼ばれているところです」
「はっ?ということは俺って死んだんですか?!」
「う~ん。正確には違いますが、あなたの肉体は地球に、魂がここに来ている状態です」
「・・・・・・」
俺は死んでいるかもしれない。
もしかしたら、ここは死んだら閻魔大王に色々聞かれて、天国か地獄かを決定される裁判所みたいなとこかな?
地獄は嫌だな。そんなに悪いことはしてないはず。
「ところでそこで頭を抱えている人は誰ですか?閻魔大王的な人なのかな?」
「誰が閻魔大王だー!」バシッ!
「だから少し黙っていて下さい!気持ちはわかりますが話がややこしくなります!」
「いってっー・・・エルザは最近暴力的になって来たぞ。やっぱり彼氏とうまく行ってな・・・」
キッ!
「なんです?」
エルザさんは銀縁眼鏡を手に掛け、男性をみた。
無表情なのが怖い。
どうやら彼氏とうまく行ってないようだ。
「なんでもないです。ゴメンナサイ」
「いいですか?あなただけでワタルさんに説明すると絶対に揉めるから、あの方に私が説明をお願いされたんです!お願いだから大人しくして下さい」
「分かった。分かった。黙るから怒るなよ」
「まったく・・・お願いしますよ」
このやり取りを見ると男性よりもエルザと呼ばれている女性が立場が上のようだ。
それにしても男性の声はどこかで聞いたような気がする。
「ゴホンッ!失礼しました。説明を続けます」
「はい。お願いします。」
なぜだか俺も素直に返事してしまった。
「私はエルザ。この狭間の世界を管理している者です。」
「って言うことは神様的な偉い人?」
「違います。事務職です。」
「そうなんですね」
「ちなみにこの人の部下です。」
「・・・おう。そうですか」
狭間の世界は地球と違って、部下は上司にツッコミを入れても良いらしい。
俺のいた会社では、飲み会の席で上司が「今日は無礼講だから本音を言え!」と言われても無礼講にはならない。
社会人経験が浅い若手が、上司に頭を叩いたり、本音を言おうものなら、次の転勤候補になる。
それも誰も行きたがらない僻地へだ。
「先ほども言いましたが、七星ワタルさんは魂がこちらに来ている状態、つまり死にかけです」
「はぁそうですか。」
「今は病院のベッドで生死の境を彷徨っています」
思い返してみると、俺は妹のハルカの結婚式に参加した後、帰り道の途中から覚えていない。
つまり、その時に事故か病気かになったのだろう。通り魔的な事件ということもあるかもしれない。
「俺は・・・このまま死ぬんですか?」
「何もしなければこのまま死にます」
「何もしなければ?」
エルザが不思議なことを言い出した。まるで死を回避できる方法があるみたいでないか。
そんな疑問を持っていると・・・。
「ここでワタルさんに2つの選択肢があります。非常に難しい選択ですが選んで下さい」
「・・・それはなんですか?」
「一つ目は、このまま死を受け入れて、死後の世界に旅立つ」エルザが人差し指を立てた。
「二つ目は意識が戻らないですが、少しの間地球にいることができる。」
「二つ目の選択をした場合、サービスで僅かの時間ですが妹さんとお話できます」と中指を立てながらエルザは話した。
「・・・えっと・・・2つ目のやつは、どのくらい妹と話ができることは出来ますか?」
「もし、2つ目を選んた場合は今から数分程度話せます。ちなみワタルさん自身はあと一年ほどで死んでしまいます。」
「一年か・・・」
さて、どうしたものか?
この急展開に俺は腕組みをして考えてみる。やっぱり一番は妹のことだ。
もう一度、妹に話してみたいことは沢山ある
「ちゃんと飯食えよ」妹は少食だ。健康に気をつけてほしい。
「自分の意見はしっかり言うんだぞ」妹は引っ込み思案で自分を抑え込みやすい。
「幸せになるんだぞ」あーこれは結婚式の時に言ったか。
その他にも、俺自身がやり残したこと、これからやりたいことは沢山ある。
などなど・・・
結局あれこれ考えた結果、俺の出した結論は・・・
「あの、エルザさん。俺はこのまま死を受け入れます。」
「宜しいのですか?理由を聞かせてもらっても良いですか?」
エルザさんは俺の目を見て言った。金色に近い黄色い目を見つめ返し俺は答える。
「確かにハルカに会って色々伝えたいことはあります。でもハルカの事だから、生き延びる選択をしたら、必死になって俺の看病をすることでしょう。せっかく結婚して幸せになったんだ、そんなことに時間をかけて欲しくない。」
「二度と妹さんには会えなくなりますよ。それでもですか?」
「それでもです。」
「・・・わかりました。あなたの選択を尊重します。辛い質問をしてしまい申し訳ございませんでした」
きっとこれで良かったんだ。
「だ、そうです。」
「よーく分かった!良く決心したなワタル!やっぱりお前は優しいやつだ!」
エルザに振られた男は威勢よく答え、フードをめくる。
「久しぶりだなワタル。さぁこの胸に飛び込んでこい!」
あーやっぱりだ。間違いない。
俺はダッシュをして
「今までどこに行っていたんだクソ親父!!!」
俺は気色悪い笑みを浮かべる親父にドロップキックをかました。
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