255 / 255
64-9 これからが本当のハーレム展開?
しおりを挟む土曜日、俺は都内のとある場所に来ていた。
例の約束を実行しなければならないからである。
覚えているだろうか? 俺はあいつと、あの西園寺茜と週末に会う約束をしていた。
勿論その条件には二人きりという制約が付く。
美月が家に来て最初の休日、当然二人は俺が出かけると言えばついて来る事になるだろう……俺にプライベート無いのか?
どうやって一人で出掛けるか悩んでいたところ、偶然にも家にレディースの服やら雑貨やらのバーゲンセールのチラシが舞い込んだ。
美月の荷物は週明けとなるがとりあえず服や日用品を買いに行こうとなり、店がレディース専門店と言うこともあって俺に気を使ったのか今朝栞と二人で出掛けて行った。
「ふふん、本当に一人で来たのね」
「……まあ、そういう約束だし……って言うか……」
そして今、俺はシャンデリアが煌めく豪華な内装、地方に住む人でも知っているだろう都内の某有名高級ホテルのロビーにいた。
そこが今回茜に指定された待ち合わせ場所だった。
茜は紫色ベースの高級そうなドレスを纏い、髪をアップにして黒い花を横に付けていた。
「ちょっと待て……なんだその格好は」
そんな姿でエレベーターから降りてきた茜、ロビーいた人が一斉に注目する……なんだ? 結婚式にでも出席していたのか?
「普段着よ……」
嘘をつけ…………え? ホントに?
なんちゃってテヘペロという返事を待つも茜は真顔で黙って俺を見つめていた。
ドレスが普段着とかどんな世界だよ……。
「じゃあ行きましょう」
「ちょっと……どこへ」
「デートと言ったら食事でしょ?」
「……デート……なのか……これ」
言われるがままに茜の後を着いていく、茜はエレベーターに乗る、俺も一緒に乗った……押した階は最上階……エレベーターの内装まで高級感溢れていた。そのエレベーターはとんでもないスピードで揺れもなく最上階に到着する。
茜は俺に目もくれずにエレベーターを降りた。
エレベーターを降りるとワンフロワー丸々の豪華なレストランがあった。
高級そうな扉の前には黒服姿の店員が立っていた。
その黒服は茜の後ろの俺を見ると、何か言おうと扉の前からこっちに向かって歩いてくる。
「私の連れよ……」
「……畏まりました」
茜がそう言うと黒服は頭を下げ扉の前に戻りそのまま扉を開いた。
扉を開くと豪華絢爛と呼ぶに相応しいレストランがあった。奥の大きな窓から東京一望出来る。
「いらっしゃいませ、こちらでございます」
予約も名前も聞かずに綺麗な女性が俺達を案内する。
通されたのは10人位入れる大きな個室、大きな窓の外は都内が一望出来、遠くにスカイツリーが見える。
椅子を引いてもらい席につくと、すぐに飲み物が運ばれて来る。
ワイングラスに入った飲み物……まさかお酒じゃあ無いよな……。
「ふふふ、ただのジュースよ……今日は来てくれてありがとう、乾杯しましょ」
茜はそう言うとワイングラスを持ち上げグラスに口をつける。
見るからにワイン……しかし一流ホテル、お酒は出さないだろうと俺もグラスを持ち上げると一口飲んだ。
「ブドウジュース……か」
「フランス産ドメーヌのブドウジュースよ、美味しいでしょ」
「あ、ああ」
日本の果汁100パーセントのブドウジュースよりも渋みがある……でもべったりした甘さが無く美味しい……。
そしてそれを皮切りに前菜が次々に運ばれて来る……恐らくフランス料理なんだろうけど、ウエイターさんの説明や料理名が全くわからない……。
俺はありったけのテーブルマナーの知識を振り絞ってそれを食べた。
「……美味い……」
「そ……良かった」
俺がそう言うと茜は目を細め嬉しそうに笑った。今日はいつもとは違う表情の彼女……その仕草その笑顔に俺はドキッとしてしまう。
「こ、こういう所って確か服とかうるさいんじゃ無かったっけ」
デニムにシャツとセーターで来ていた俺はさっき入口で何か言おうと近付いて来た黒服の事を思いだし、茜に聞いた。
「そうね……ここのドレスコードは最低ネクタイにスーツ着用よ」
「マジか……言ってくれよ」
言ってくれればそれくらいの格好はしてきたのに……。
「ふふふ……気にしなくていいわ……ここは私のプライベートルームみたいな物だから」
「プライベートルーム……」
「そしてダーリン……貴方のプライベートルームでもあるのよ」
「いや……だから」
「とりあえず食べましょう、もうすぐメインよ」
「……あ、ああ……うん」
一体なんなんだ? なぜここまで俺に……スキー場でちょっと教えた程度の俺にここまで……当初はからかわれていると思っていた、金持ちの道楽……しかし……それにしても転校までして俺を追いかけてくる意味は?
「牛肉のロッシーニ風でございます」
メイン料理が運ばれて来る……どこかで聞いた事のある名前の料理、柔らかそうな厚切り肉の上には大きなフォアグラとトリュフらしき物が乗せてある……正直今まで味なんてしなかった……こんな場所俺に場違いだ……。
茜と結婚? あり得ない……俺には大切な人がいる……一生護らなければ行けない人がいる……。
茜は言っていた……欲しい物はなんでも手に入れると……俺がその欲しい物と言う事なのか? そしてその意図は……俺は茜の本質、本心を考えていた。
0
Twitterやってます。https://twitter.com/niinaamesyou
お気に入りに追加
257
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(4件)
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
果たして、阿宮は見知らぬ世界でどう生きていくのか————。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

貞操観念逆転世界におけるニートの日常
猫丸
恋愛
男女比1:100。
女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。
夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。
ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。
しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく……
『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』
『ないでしょw』
『ないと思うけど……え、マジ?』
これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。
貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。
昼寝部
キャラ文芸
天才子役として活躍した俺、夏目凛は、母親の死によって芸能界を引退した。
その数年後。俺は『読者モデル』の代役をお願いされ、妹のために今回だけ引き受けることにした。
すると発売された『読者モデル』の表紙が俺の写真だった。
「………え?なんで俺が『読モ』の表紙を飾ってんだ?」
これは、色々あって芸能界に復帰することになった俺が、世の女性たちを虜にする物語。
※『小説家になろう』にてリメイク版を投稿しております。そちらも読んでいただけると嬉しいです。

先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件
桜 偉村
恋愛
別にいいんじゃないんですか? 上手くならなくても——。
後輩マネージャーのその一言が、彼の人生を変えた。
全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。
練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。
武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。
だから、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。
そうすれば、香奈は自分のモノになると思っていたから。
武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。
しかし、そこに香奈が現れる。
成り行きで香奈を家に上げた巧だが、なぜか彼女はその後も彼の家を訪れるようになって——。
「これは警告だよ」
「勘違いしないんでしょ?」
「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」
「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」
甘酸っぱくて、爽やかで、焦れったくて、クスッと笑えて……
オレンジジュース(のような青春)が好きな人必見の現代ラブコメ、ここに開幕!
※これより下では今後のストーリーの大まかな流れについて記載しています。
「話のなんとなくの流れや雰囲気を抑えておきたい」「ざまぁ展開がいつになるのか知りたい!」という方のみご一読ください。
【今後の大まかな流れ】
第1話、第2話でざまぁの伏線が作られます。
第1話はざまぁへの伏線というよりはラブコメ要素が強いので、「早くざまぁ展開見たい!」という方はサラッと読んでいただいて構いません!
本格的なざまぁが行われるのは第15話前後を予定しています。どうかお楽しみに!
また、特に第4話からは基本的にラブコメ展開が続きます。シリアス展開はないので、ほっこりしつつ甘さも補充できます!
※最初のざまぁが行われた後も基本はラブコメしつつ、ちょくちょくざまぁ要素も入れていこうかなと思っています。
少しでも「面白いな」「続きが気になる」と思った方は、ざっと内容を把握しつつ第20話、いえ第2話くらいまでお読みいただけると嬉しいです!
※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。
※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
作者様はロリと…把握しました(`・ω・´)ゝ
ほのぼのしていて疲れきった体にいい薬です
感想ありがとうございます、そして……ろ、ロリじゃないもん!
美月が好きなだけだもん!!(笑)
何かに芽生えそうです。やっぱり小説はいいですね(`・ω・´)ゝ
BANは………運営さんと頑張ってください。
これからも更新頑張ってください
感想ありがとうございます。
とりあえずBANは大丈夫そうです(笑)
もっと色々なものに芽生えて頂ける様に頑張ります。( `・ω・´)ノ ヨロシクー
妹! これぞ妹好きの辿り着く境地ですな……! 可愛いです〜!
ありがとうございます!
自称妹作家です! 逆に妹物しか書けません、引き続き我慢強く読んで頂ければ幸いです。(笑)