上 下
242 / 255

63-2 悪夢の転校生

しおりを挟む

 進学校でもない我が校は、新学期開始日の授業はない……なんかごろがラップだな、チェケラ♪

 と言うわけで、早々に教室を後にしようとしたが先生に呼び止められる。

「えっと……頼むわね~~」
 その一言で全てを悟俺と栞……転校生西園寺 茜を押し付けらた……

「えっとじゃあ、茜さん」

「あなただけ、呼び捨てでいいわよ、ダーリン」

「ダーリンって……じゃあ、茜、学校の案内を」

「えーーー二人きりでは無いの?」

「あ、いや、妹も……栞も一緒に頼まれているから」

「じゃあ仕方ないわね、小姑さんとは仲良くしないとね」

「いや、えっと……ああああ、えっととにかく学校の案内を」
 栞の目の色が変わる、怒りのオーラが……ヤバい……

「一ヶ所だけ、他は必要ないわ」

「一ヶ所?」

「生徒会室に連れていって頂戴」
 そう言って茜が笑う……相変わらず目は全く笑っていないんだが……栞俺の腕を握り潰すのは止めてくれ……


####


「えっと……どちら様」
 
 生徒会室に入ると俺と栞以外のメンバーは既に集まっていた。

「貴女が生徒会長の那珂川 葵、隣が副会長の渡ヶ瀬 美智瑠、書記の酒々井 麻紗美と初瀬川 雫、セシリーマクミランね」
 茜はそれぞれの顔を見ながら順番に名前を言っていく。

「ぜ、全員の顔と名前を覚えているのか?」
 俺が驚きの顔で茜を見ると、茜は俺を睨みながら言った。

「ふふふ……ええ、勿論旦那様の愛人を調べておくのは妻の務めですから」

「あ、愛人!?」

「ええ、裕様はこの学校で選りすぐりの美女を集めて長谷川ハーレムを築きあげているとか、高校1年でその甲斐性……さすが私の旦那様ですわ」

「そんな集団はいない! だ、誰がそんな、って言うか、どこから!」

「──えっと……裕くん? そちらは一体?」
 
「あ、ああ、えっと……うちのクラスの転校生です……」

「その転校生が何故ここに?」

「ここに連れていけって言われたんで……」

「突然失礼致します、初めまして生徒会の皆さん、私、裕様の婚約者、西園寺 茜と申します、正妻としてご挨拶に参りました」

「「…………えーーーーーーーーーーーー!」」
 
「──はあ……またか」
 麻紗美と俺と栞を除く3人が茜の言葉に絶叫する。

「こ! 婚約! こんやく、こんにゃくは、こんこん」

「あんちゃんがこんにゃく?!」

「こんにゃくってぇなんで固まるかぁ謎ってぇ言ってたねぇ~~」

「こんにゃくと言えば、なんでも切れる刀が唯一切れないで有名な奴でっしゃろ?」

 それぞれが勝手なな事を言い始める……教室でも生徒会でも一緒か……
 
「えっと……ご丁寧な挨拶ありがとうございます、でも大変申し訳ありませんが、今から会議を致しますので部外者の方はお引き取り下さい」

「……生徒会長、那珂川 葵……ロイヤルファミリーの一員、そちらのセシリーマクミランもお母様は大使でいらっしゃるようですし……裕さん、随分と素晴らしいハーレムを築いていらっしゃいますね…………成る程これなら早々に手は出せないと言う事ですね……あいつも…………まあ、そんな怖いお顔をしなくても、今日は挨拶に来ただけなのでこれで失礼しますわ」
 
 そう言うと茜はもう一度全員を見回し、最後に栞を見る。栞は俺の隣で俺の腕を掴みながら黙って茜を睨んでいる。
 茜は栞を数秒睨み付け、最後に栞が掴んでいる俺の腕を見ると「ふん」と小さく鼻で笑い、そのまま生徒会室を出ていった。

 茜が出ていった途端に生徒会の空気が弛緩する、そして……

「ゆゆゆゆゆゆ、裕!! な、なんだあいつは!! こ、こんにゃく、こんにゃくってなんだ? 味噌は無いぞ!」

「落ち着け美智瑠、こんにゃくじゃない、婚約だ」

「本当にぃ婚約したのぉ?」

「してない! そもそもあいつとは1度しか会ってない」

「あんちゃん……会ってるんだ……」
 
「雫! そんな最低って目で見るんじゃない! 冬休みにスキー場でちょっとスノボを教えただけだ!」

「Oh、手取り胸取り教えたデスか」

「なんだ胸取りって手取り足取りだろ、いや、手取り足取りもしてない、いててててて栞! 腕をつねるな」

「でも……何故あの人、茜さんは私達の事を知っているのでしょう?」
 生徒会長が某司令官の様に顔の前で手を組みながらそう言う……

「…………そう言えば……そもそも俺……何も教えて無いぞ、住所も電話番号も」

「じゃあ、なんでこの学校に転校してきたんだ!? あいつは僕の名前も知ってたじゃないか!」

「私の母の事も知ってたデース」

「私の家族の事も……」

「あいつ……本当に何者なんだ?」
 
 俺達は暫く何も言わずに茜が出ていった扉を黙って見つめていた。

 
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

処理中です...