妹に突然告白されたんだが妹と付き合ってどうするんだ?

新名天生

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63-1 悪夢の転校生

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 「栞……栞……待ってくれ……俺が、俺が好きなのは……行かないでくれ……違うんだ、俺が好きなのは……栞……お前なんだ、しおり、しおりいいいいいいいいいい!」」

 いくら手を伸ばしても届かない、栞は俺に軽蔑のまなざしを向け、そのまま家を出て行ってしまう。
 最近毎日の様に見る悪夢、俺に彼女が出来て、栞が俺から身を引いていく夢……
「はあ、はあ、はあ、はあ、はああああああああああ」
 
 今日から新学期、また同じ夢で目が覚める……一体どうしたんだろうか……
 栞が俺に愛想を尽かす……なくはない、こんな中途半端な事を続けていれば。
 
「兄妹……じゃなかったら……」
 多分……相手にもされなかっただろう……出会えたかどうかもわからない……そんな意味の無い考えが浮かぶ、頭から離れない……ただの、たられば……

 俺はもう一度頭から布団をかぶり数時間の眠りについた。今度は良い夢を見る為に……



◈◈◈



 新学期教室に入るとなにやらざわついていた。そしてすぐに栞の周りに人が集まる。一体何事か……俺はすでに登校し隣の席に座っている麻紗美に何があったか訪ねた。

「う~~~~ん、私もぉさっきぃ来たからぁよくわからないけどぉ、なんかぁ転校生が来るとかぁ」

「転校生?」

「うん」

「ふーーーん」
 まあ、新学期だし居なくはないが、クラスがざわつくってなんだろう?
 
「皆おはよう~~~」
 そう思っていると始業開始ちょっと前に先生が教室に入ってくる……凄い美人の少女と…………あれ? あの娘どこかで見た様な気が……

その少女は教室に入ると鋭い目付きでクラスを見回していた。そして俺と目が合うと笑顔に変わる……え? 何?

「えっと、こちらは西園寺 茜さん、今日から……」
 先生が説明を始めるとその少女は先生を遮る様に一歩前に出た。突然自分の前に立ちはだかるその少女に思わず先生は言葉を飲む。

「ごきげんよう、自己紹介は特に致しません。名前も覚えて貰わなくて結構です。私はこの学校に友達を作りに来たわけでも勉強をしに来たわけでもありませんので」
 茜という少女は突然そんなとんでもない事を言い始めた。
 その少女の言葉にクラス一同ポカンとしている。一人を覗いて……そう栞だ栞は俺の方を向いてなにやら言いたげな目で見ている。

 どこかで見たし、どこかで聞いた名前……栗毛のロングで毛先はウエーブがかかっていて、目付きは少々キツいがお嬢様を思わせる……ってこの言葉もどこかで言った様な気が……

 そんな事を考えながら茜という少女を見つめていると、その少女と再び目が合う。
 そして、一呼吸置いて、その少女は口を開いた。その言葉にクラスは騒然となる。

「私はそこにいる私の旦那様の元に来ただけです、未来の旦那様と共に居たいと思い転校して参りました。 裕さまと、長谷見 裕さま、彼が私の……未来の旦那様です!」


「「ええええええええええええええええええええええ」」
「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
 声をあげるクラスメイト、そして一番驚いているのは先生、まあそりゃ驚くよね……
 そして俺はようやくその少女の事を思い出す。あの傲慢な態度、生意気そうな顔、自分勝手な言動……あいつだ……あのスキー旅行の時の……でも……何故? 

「そんな事聞いてないですけど! 勝ってな事言わないで下さい!!」
 騒然としている教室、いち早く立ち上がりそう叫ぶのは、俺の事になるとある意味傲慢で自分勝手な行動をするご存知俺の妹である栞……栞は席を立ち机を何度か叩きながら茜にそう叫んだ。

「あら、栞さんも同じクラスだったんですね、あなたとだけは仲良くしないとね、教室で嫁と小姑の争いなんて醜いだけですから」
 茜そう言うと高らかに笑った。栞を小馬鹿にするように……

「こ、こ、小姑!?」

「ええ、貴女は私の旦那様の妹なんですから、私の妹でしょ?」

「あ、あ、あなたの、あなたの妹になった覚えはありません!!」

「あら、でも貴女のお兄様が私と正式に結婚すれば、自動的に貴女は私の義理の妹になるわけでしょ?」

「け! 結婚! 結婚なんて、そ、そんなの、そんなの認めないもん!」

「貴女のお兄様、旦那様と私が将来結婚するのは紛れもない事実ですからね、そんなわがままを言われてもねえ」

「な、何を、どこにそんな未来が」

「だって……私生まれてから今日まで欲しい物はなんでも手に入ったの、私の希望が叶わなかった事はないの、だから貴女のお兄様と私が結婚するのはもう決まっている事なの」

 茜はそう言うとニッコリと笑う、いや……目は全く笑っていない……今や俺を全く見ずに栞に対して敵対心剥き出しにている。

「お兄ちゃんも私もそんな事は絶対に認めません!」
 栞はそう言うと茜から目を離さずにゆっくりと席に座る。
 刀をを抜いたがお互いに切り会うにはまだ早い、戦うのば今ではないと判断したのか? 武芸の達人が刀を納める様に、相手から目を離さず、隙を見せずにゆっくりと席に着いた。
 それでも二人は見つめあったままでいた。視線が交差しそこから火花が散っているのが…………まあ、アニメじゃあるまいし実際にそんな物は見えないのだが。

 しかしまた俺の日常に波乱が訪れたのは間違いのない事実だ……本当になんなんだろう俺の高校生活って……

 て言うか、おい麻紗美、また一人で現実逃避するんじゃない、頼む、今回は俺も連れてってくれえええ~~

 

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