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61-9 明けまして……おめでとう

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 大晦日、父さんと母さんは1日から仕事があるって事で名古屋に帰っていった。
 そして今日は開けてお正月、明けましておめでとうさん。

 昨夜は父さんと母さんを交えて家族皆で宴会、父さんとも母さんも婆ちゃんの友人達の宴会からずっと付き合わされフラフラになって帰っていったけど……本当大丈夫か?

 まあ今はそんな事を気にしている場合じゃないんだけど……

 そう、とりあえず俺の症状は収まった。栞の顔を見れる様になった。これが何か、俺のこの気持ちが何かわかってしまえば、理解してしまえばなんて事は無い……無いんだけど……

「まずい……まずいよなぁ……」
 生まれて初めて好きって気持ちに気がついた……俺の初恋って先生だと思っていたが……今こうなるとあれは恋じゃないって事がわかる。

「まさかの初恋が妹って……マジか」
 確か栞も俺の事が初恋だって…………ヤバい顔が熱くなる、身体がホテルいや、火照る。相思相愛で相思相初恋……似た者同士、似た者兄妹……兄妹……

「いやいやいやいや、まてまて、何喜んでるんだ俺は、駄目だろ駄目だよ駄目だって」
 妹に恋しちゃうとか駄目だって、駄目だよ駄目駄目……いや冗談言ってる場合じゃばい。
 とりあえず栞にバレない様にしないと、まずい、まずいだろ? だって今俺と栞は二人きりで暮らしているんだぞ? それなのに、そんな状態で相思相愛だなんて栞にバレたら……バレたら………………ん?

「特に問題無い……かな?」
 いやだって、俺がどう思っていても、栞が俺に対して取る態度が変わるとは思えない。
 今だって隙あれば俺のベットに潜り込む、部屋を漁る、風呂を覗く、あ、ちなみに黙っていたけど妹俺の風呂を覗いている事は知っている。

「変態妹……そしてその妹に恋する変態兄……か」
 俺は文字通り頭を抱えた……まさかこんな事になろうとは……

 その時リビングの扉が開いた、振り向くと美月が

「お、にいいいいいちゃまあああああああああああ」
 美月が俺に駆け寄って来る、綺麗な赤の晴れ着を着て……

「どう? お兄ちゃま! 似合う? 可愛い?」

「ああ、滅茶苦茶可愛いぞ、さすがは俺の美月だ」
 美月はピンク基調の華やかな晴れ着を着ていた。満開のサクラの中に絵巻の様な図柄、おそらく源氏物語の絵だろうか……源氏物語……えっと……紫の上は姪だから違うよ違う、美月はいとこ、たまたま偶然だよね、何も意図してないよね……多分用意したのは婆ちゃんだけど、なんの意味もないよね、えっと紫の上の年齢は確か8才……ほら美月は9才だからこれも関係ないない……だから……いいよね。

 俺は晴れ着が崩れないようにそっと美月を抱き締めた。可愛い可愛い俺の美月……と、その時もう一人リビングに入ってくる、今度は赤い晴れ着を着た美少女が……

「お兄ちゃん……どうかな?」

「…………」

「……駄目かな?」

「…………」

「…………お兄ちゃん?」

「あ、いや、…………うん、似合う似合う」

「ほんと?」

「うん……」
 言葉が出なかった……美しい過ぎる、可愛すぎる、この世の物とは思えない物がそこにあった。
 浮世絵、絵画、宝石、世の中に美とされるあらゆる物の中でも恐らくここまで美しくそして可愛い物は無いだろう……栞の晴れ着姿……
 赤を基調とした花柄の晴れ着、色とりどりの花の中に松竹梅が散りばめられていて大変縁起がいい、改めてまして明けましておめでとう!

 それにしても……今思うと、栞のウエディングドレスも美しかった。あまりの美しさに俺は栞が誰かの元に嫁ぐ事を考えてしまった。俺に「お兄ちゃん今までありがとう」って三ツ指を付いて頭を下げる姿を想像してしまった。でもそれは、栞と離ればなれになる事に対する悲しみではない、父親が思う様な悲しみではない……栞が他の奴に取られる、誰かの腕の中に収まる事を想像した苦しみ……そんな想像をしてしまった……それが悲しくて苦しくて切なくて涙してしまった。

「えへへへへ、髪もおばさまにやって貰ったの、可愛いでしょ」
 くるりと一回りし俺に見せつける栞、美しい黒髪をアップにしかんざしで飾り付けをしている……いや……本当に綺麗だ。

「うん……綺麗……だよ……」

「えへへへへへ」

「あーーーーもうお兄ちゃま、美月ももっと誉めて!」

「ああ、可愛い、可愛いぞ! よし! じゃあ皆で初詣に行こうか!」

「はーーーい」


 ####


 美月と俺と栞の3人、両手に花で近所のお寺へ初詣に出かける。いや、それにしても、通る人通る人皆が揃って振り返る。そりゃウルトラ級の美少女が二人綺麗な晴れ着を着てこんな田舎歩いていれば皆驚くよなぁ、っていうかむしろ田舎で良かった。いつぞやの美智瑠との着物デートでも人だかりが出来たんだ、この二人と都内なんて歩いた日には……考えただけでも恐ろしい……


「お兄ちゃま、リンゴ飴食べていい?」

「エエよエエよなんでも買うたる」
 お寺に付くと何件かの屋台が出ていた。田舎の寺とはいえ、やはり地元で一番大きなお寺だけに多くの人で賑わっていた。

「お兄ちゃん、私はタコ焼き食べたい」

「エエよエエよなんでも買うたる」
 ああ、もう可愛い過ぎだよ俺のいとこと妹……二人だよ二人とも、変な勘繰りするなよ、今はただただ可愛い二人を……

「はいお兄ちゃま、あーーーーん」

「お! おお、あーーーん」
 甘い、甘いなあ、甘いよ……美月が食べさせてくれるからいつもの3倍甘いよ。

「あああああ、お、お兄ちゃん私もあーーーーーん」

「お、おお、あーーーーーーーん」
 ああ、栞……いつもと違ってやっぱり好きな人からあーーんして貰うと一味ちが………………

「ふがああああああああああああああ」
 熱いいいいいいいいいいいいいいいい!

「あああああ、お兄ちゃんだ、大丈夫?」
「お兄ちゃま! 今飲み物を!!」

 熱い、熱いよ……俺の初恋の味は…………熱かった……







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