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61-4 明けまして……おめでとう

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「おめでとうって……美月ちゃん、さっきから何を言っているの?!」

「お姉ちゃまはやったんだよ、遂にお兄ちゃまの一番になったの……美月はお姉ちゃまに負けちゃったの……」

「負けたって……美月ちゃん、ちゃんと言って! 昨日お兄ちゃんとなんの話をしたの?! 何があったの?!」

 美月ちゃんの部屋、床に正座で向き合い美月ちゃんに昨日のお風呂場での事を問いただす。美月ちゃんが何を言っているのかさっぱりわからない、お兄ちゃんの一番って……一体どういう事なの?!


「美月ね……昨日お兄ちゃまに……プロポーズしたの」

「ぷ! ええええええええええええええええええええええええええ!」

「勿論まだまだ結婚出来る年齢じゃないから婚約って事だけど」


「ここここここ、こ、こんにゃく!」

「落ち着いてお姉ちゃま、婚約ね、だってお姉ちゃまが美月よりも先に告白してるんだもん、それ以上の告白しなきゃインパクト無いし、あの鈍感お兄ちゃまには、はっきり言わないとわからないでしょ?」
 少し困り顔でそう言う美月ちゃん……てか……婚約って、でも……それで今のあのお兄ちゃんの態度……私から目をそらして美月ちゃんとイチャイチャしてるって事は……まさかお兄ちゃん受けるって事?!

「そ、それで! お、お、お兄ちゃんは美月ちゃんに、なんて言ったの!!」

「美月の事が大好きだって、凄く大事だって」

「や、ややややや、やっぱりお兄ちゃん……ロリコンだったんだああああああああうわああああああああああああああああああああん」

「いや、あの……お姉ちゃまも結構ロリだと思うけど……あのねお姉ちゃま、まだ続きがあるんだから落ち着いて、その前に言われたの、美月は妹なんだって、妹とは結婚出来ないって」

「い、妹?」

「そ、お姉ちゃま以上にお兄ちゃまにとって美月は妹なんだってさ」
 少し怒ったような、でも少し嬉しいような微妙な顔でわたしを見つめる美月ちゃん……妹……結婚出来ない……

「でもでも……じゃあ、なんでお兄ちゃんは私に対してあんな態度を取ってるの?! 話したのはそれだけ?!」

「ここからが本題だよ……お姉ちゃま、お兄ちゃまが泣いた学園祭最終日の事覚えてる?」

「え?」

「お姉ちゃまがウエディングドレス姿を見せた途端お兄ちゃまは泣き出した……あの時の話をしたの」

「私のウエディングドレス姿?」
 泣いた、お兄ちゃんは確かに泣いた。つられて私も泣いた。皆の前で……思い出すだけで恥ずかしい。…………でもなんで泣いたのか私にはわからなかった、あの後理由も聞けなかった………


「そ、だからお兄ちゃまに、お兄ちゃま自身わかっていない事を教えてあげたの」

「お兄ちゃんがわかっていない事……」

 さっきから一体何が言いたいのか、私には美月ちゃんの考えがさっぱりわからなかった。でも、これが重要な話、私とお兄ちゃんにとって大切な話と言うことだけはわかる。

「だからお姉ちゃまにおめでとうって言ったの……」

「おめでとう……教えて美月ちゃん、お兄ちゃんはなんで泣いたの? それが今の態度と関係あるの?」

「…………お兄ちゃまは……お姉ちゃまの事が好き、お姉ちゃまを離したくない、自分の物にしたいって思ったんだよ、だからウエディングドレス姿のお姉ちゃまを見て、誰かの物になってしまうと思って泣いたの……自分では正式に着せられないから……お姉ちゃまとお兄ちゃんまは、結婚出来ないから」

「!!」

「おめでとうお姉ちゃま……」

「お、お兄ちゃん……お兄ちゃん、お兄ちゃん!!」
 私は立ち上がり、扉に向かう、お兄ちゃんに会いたい、会って話がしたい

「ちょっとお姉ちゃまどこに行くの」

「どこって、お兄ちゃんの所に」

「駄目、まだ話は終わってないよ」

「だ、だって」

「お姉ちゃま、お兄ちゃまの今の状態ってね、小学生が初めて恋に目覚めた時と同じ状態なんだよ」

「恋に……」
 恋に目覚めた……お兄ちゃんが恋……相手は……わ、た、し……えへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ

「あーーーもう、やっぱりこうなった、お姉ちゃま! ここからが大事な話なんだから戻って来て!」

「あ、う、うん」
 美月ちゃんそう言われ天にも昇る気持ちを抑えた。ああ、でも……嬉しい、嬉しすぎる。お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん!

「あのねお姉ちゃま、お兄ちゃまは今まで恋なんてした事無かったの、だから皆からの好意を受け止められなかったの、今ようやく目覚めたんだけど……その相手が実の妹なんだよ? わかるこの意味」

「えっと…………幸せって事以外はわからないけど」

「あーーーもう、あのね、ここで失敗したら今の気持ちが恋ってわからないままって事になりかねない、お兄ちゃまはもう一生今抱いている気持ちが恋って思わなくなるって事なんだよ? 今お兄ちゃまは妹に恋なんてするわけないって、今の気持ちは恋じゃないって思っているんだよ」

「…………あ」

「お兄ちゃまの初恋が実の妹、しかも高校生なってからって……」

「で、でも……お兄ちゃんの初恋って、先生じゃ……」
 前にそう聞いてた。

「子供が年上に抱く思いは恋じゃなく殆どが憧れだよ、お兄ちゃまはそれが恋と勘違いしていたんだね……そもそも初恋なんて麻疹と同じなんだから、小さい頃の経験しておけばなんて事ないんだけど、大人になってから発症すると大変な事になるかも知れないから気を付けないと……」

「そ、そうなの?」
 どうでも良いけど、美月ちゃんって小学生よね……その小学生に子供扱いされているお兄ちゃんって一体……

「お姉ちゃま、ここが肝心だからね! お兄ちゃまの、あの恋に、人を好きになる、好かれる事に超鈍感なお兄ちゃまの一生が掛かっているんだからね」

「一生って…………でも……う、うん……そうかも……」
 さっきまで天にも昇る気持ちが一気に冷め私の心に緊張が走る。

「ここにいる間、お正月の間迄に、お兄ちゃまがお姉ちゃまの事を好きだって自覚して貰わないと」

「うん、で、でも……良いの? 美月ちゃん」
 
「うん……悔しいけど、今のお姉ちゃまの立場が美月なら最高なんだけど、こればかりは仕方ないから。でも諦めたわけじゃないよ、今のお兄ちゃまよりも、恋に目覚めたお兄ちゃまの方がチャンスあるしね、お姉ちゃまだってそうでしょ? そんな簡単に諦められるならとっくに諦めてるでしょ?」

「うん!」

「だから今はお姉ちゃまに協力するよ、でも今だけだからね、後で必ずお姉ちゃまから奪うから覚悟しておいてね」

「……うん、でも絶対に渡さない、お兄ちゃんは美月ちゃんにも誰にも渡さない」

 そう言って私は美月ちゃんを見つめた。美月ちゃんも真剣な顔で目をそらさずに私を見つめ返していた。
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