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60-1 スキー旅行
しおりを挟む「おにいいいちゃまあああああああああああ!」
「みつきいいいいいい!」
俺がそう呼ぶと美月が物凄い勢いで俺に向かって来る! 純白の斜面、純白のスキーウェア、まるでウサギが雪の上を飛び跳ねるが如く斜面を滑り降りる美月。そして途中のコブを利用してジャンプ、空中を横に2回転しながらそのまま膝を曲げボードを持つ、いわゆるグローブを入れると言う奴だ。
そのままの勢いで俺の目の前迄見事なカービングターンを披露、そして最後は華麗にターンをしつつスピードを落とし俺にダイブっておいおい!
美月に飛びつかれ、ゲレンデの端で見ていた俺は美月と共に新雪の上に倒れ込む。
「どうどう? 上手くなったでしょ!おにいちゃま!」
「ああ、前から凄く上手かったけど、またレベルが……」
オリンピックで見る様な技に度肝を抜かれる。やっぱり凄いな美月は、俺の美月♡
「うん、でも弥生ちゃまには、まだまだ敵わないの」
「あーーまあ、ばあちゃんはな、レベルが……そういえば今どこ滑ってる?」
なんか凄い装備で先に出てったけど……
「今日はハーフパイプだって~~、あ、ほらあそこ」
美月が指差す先には巨大な半円状の雪のパイプ、いわゆるハーフパイプという物があり、そこで左右にジャンプしながら滑り降り更にくるくると回転している人物がってあれが?……うわ……ばーちゃんだよ……ばーちゃん……やっぱ半端無いって……
「お兄ちゃん……いつまで美月ちゃんと抱き合ってるの?」
俺の隣にいた、ピンクのスキーウェア姿の栞が、雪女の如く冷めた目で俺を見つめる……や、ヤバい……
栞が俺に、精神干渉系系統外魔法コキ○ートスを唱え俺の精神が凍らされる前に美月をどかさないと!
「え? ああ、そうだな、えっと美月そろそろ」
「いやああああ、久しぶりなんだからあああ、お兄ちゃま、お兄ちゃま、おにいいいちゃまあああああああああああ!」
良くなついた猫の様に俺の胸に顔を埋める。ああ可愛いやっぱり飼いたいなこの生き物、いや、駄目だ、栞の顔が雪女ではなく、○雪の様になってきた。美月、早く退かないと、栞が俺をお兄様と呼ぶ前に!
お分かりの通り俺たちは今スキー場に来ている……そういえばスノボばかりなのにいつまでスキー場って言うんだろう?
クリスマスパーティーの翌日帰って来るなり、「実家に行く」と言い出した母さん……いや、あの……家族のクリスマスパーティーは?
まあいい加減な母さん、こういう事はいつもの事。でも一緒に行くと思いきや、父さんと母さんは実家に直で、俺達はいつも通りスキーに行けと言い出す。
去年は受験だったので行かなかったが、冬は毎年恒例美月一家とうちの家族でスキー旅行をしているんだが、今年は母さんと父さんは名古屋に転勤中、しかも正月仕事で休みが5日しか無いらしい。
なので実家でゆっくりしたいらしく行かないと言い出す……そしてまあ、父さんは母さんにべったりなので……
と言うわけで、今回のスキー旅行は俺と栞、美月とばーちゃんの4人で来ていた。
ちなみに俺と栞はスキー、美月とばーちゃんはスノボ、まあ美月もばーちゃんもスキーもプロ級なんだけど、飽きたらしく最近はスノボばかりらしい。
「お兄様……」
「うわああああああ!! ヤバい! 栞が限界だ! お願い美月早く退いてえええ」
####
2泊3日のスキー旅行、とりあえず初日は軽く滑って終わりにしようと言っていたが、あれで軽く? と言うくらいガッツリ滑る3人、あ、ちなみに妹もプロ級、相変わらず美月と張り合って滑っていた。
おれ? 俺はまあ滑れるよ、普通にね……普通……に、普通万歳……
夕方まで滑った後ホテルに預けてある荷物を持ってチェックインしようとロビーに……
「あれ? ばーちゃん荷物は?」
「弥生さんだろ!! 私は帰るよ? 美月言ってなかったのかい?」
「いい忘れちゃった!」
てへぺろをする美月……いや、え? つまり……
「まあお前達はゆっくり滑ってから帰っておいで」
「あ、うん……」
「じゃあ、お金は払っておいたから」
そう言ってばーちゃんはスノボとヘルメットを担いで帰って行く……マジで?
「なんかお父さんとお母さんと飲みたいんだってさ、今日は美月ちゃんを連れて来ないとって来ただけだって」
「ああ、まあそうか……仕方ない、ばーちゃんも父さん母さんに会うの久しぶりだろうし、えっと、じゃあとりあえず部屋に……部屋……一部屋……」
栞がカードキーを2枚持っているけど、カードに書かれている番号は同じ番号……
「おにいちゃま…今日は弥生ちゃまが奮発してくれて、お部屋に温泉が付いてるんだって! 楽しみだね!」
「うんそうだね、ほんと、楽しみだねお兄ちゃん」
二人がそういい、そして美月と栞が見つめあう。ああ、なんか火花が散ってる……
マジか……またか……
いい加減ワンパターンすぎないか? この展開……
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