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59 メリークリスマス
しおりを挟む「メリークリスマス」
会長がそう言うと生徒会メンバー全員で乾杯をした。
あれからどうなったかと言うと、まあ結局美智瑠は次の日皆に謝りこうして親睦会と言う名のクリスマスパーティーをしようと言う事にあっさり決まった。
美智瑠は栞の言う通り自分のエゴを皆に押し付けようとしていたと皆に頭を下げて謝り、それを見て栞はニッコリと笑って美智瑠を抱きしめ、そして……「ごめんね」と一言謝った。
「きましたわーー」とセシリーが叫ぶかと思ったが、さすがに空気を読める外人オタク、セシリーは慈愛顔で二人を黙って見つめていた。
まあそんなこんなで、今ここは某有名カラオケ店、勿論高校生なので昼なら安いし。当初は生徒会室でやろうとしたが、とある方が嫌だとおっしゃってここに相成った。
そのとある方と言うのは……
「おい、裕……お酌しろ」
「えっと……何をかな?」
「お酒よお酒、お酌しろおおお」
「先生……えっと早くない? 今乾杯したばっかりで……」
「ああ?! すっかり私の事を忘れやがって……しかもこのパーテーも勝手に決めて……ううう、飲まなきゃやってられるか! はーーやーーくーーつーーげーーーー」
「いや、あの先生……高校生のパーティーでお酒は……」
「わーーたーーしーーはーーおーーとーーなーー、文句ある?」
「い、いえ……だから学校じゃ嫌って言ったのか」
「そうよ! 学校飲んだら首でしょ!」
「いや、結構ここで飲んでもギリギリアウトな気が」
「いいんだ、いいんだ私なんて……首になったって、私はどうせどこかのキャラのパクりだし、最初は誰も読まないって作ったけど、今は結構読まれてるって自覚しちゃってビビって出せなくなったヘタレ作家のキャラなんだから……」
「おーーい先生ーー帰ってこーーい」
「うっせええんだよおおお」
「おおキレ子」
「先生氏、わたくしもお仲間ご一緒させてよろしいでっしゃろか、わたくしもなんだかすっかり中途半端なキャラになってしもて、よよよよよよ」
「セシリーちゃん!」
「先生氏!」
二人がハグをする……セシリーって確か百合だった気が……いや言うまい……そして百合って言えば……
「まあ、好きにしてください……えっと所で、さっきから何をしているんですかあなた達は」
「何よ! こっちみんな!」
「いや、嫌でも見えるんですが、っていうか、何故いる?」
「あんたから雫を守る為よ!」
雫姉……名前なんだっけえっと……澪か!
「今あんた私の名前忘れて前の話調べてたでしょ」
「な、なんの事かな? と、とにかくそこでさっきから何を」
「私の可愛い雫にチューしてたの、文句ある?」
「いや、俺は別にいいんですが……そう言うのに慣れてなくて相変わらずパニクってる奴が一人」
「妹と……女の子同士……兄妹……姉妹……チュー、チュー、チューリップの花が」
「ああ、美智瑠がまたおかしく」
「ききききき、君、君、君達、そ、そんな人前で、チューバ君、ちゅちゅ」
「ハイハイ~~美智瑠ちゃ~~ん、何か歌ってね」
パニクってる美智瑠に栞がカラオケの端末を渡す。
「い、いや、そ、そんな場合じゃ」
「やっぱりここは副会長が盛り上げないと~~、よ! 副会長! 生徒会の要、ボランチ!」
端末を渡すと手をヒラヒラさせる栞、そして会長はマラカスをカシャカシャ鳴らす……他は皆さんイチャイチャと……なんだここは?
「そ、そうかな? あははは、いや、それほどでも、そ、そうか、うんそうだな、じゃ、じゃあえっと」
栞に乗せられ雫と澪の事は一瞬で忘れ曲を探し始める美智瑠……いや、もう何も言うまい。
「ねえぇ、美月ちゃんはぁ来ないのぉ?」
いつも通り、周りがある程度落ち着くまで我関せずで、ステルスしてる麻紗美が口を開く……お前今一人でこっそりハニトー食べやがったな……いつも通りめんどくさい事はスルーですね、スルスルスルーですね麻紗美さん……
「ああ、なんか色々忙しいらしくて」
絶対に何か企んでるな……
「ふーーん、つまんないなぁ」
「正月に行くから何か伝えておくか?」
「うん、またぁ遊ぼうってぇ」
「はいよ」
「一番美智瑠! クリスマスソング歌います!」
「いえーーーーーーーーーい」
「先生……完全に出来上がってる……」
そんなこんなで、クリスマスパーティーは終了した……え? 早い? だってもうクリスマスは終わってるし、後やるっていえばクリスマスプレゼント交換くらい? っていうかめんどくさいからパス……ちなみに美智瑠の歌ったクリスマスソングは……ジングルベル……美智瑠ェ……
あ、そう言えば雫だけ何も喋ってないや、おーーい雫~~
「い、いやん、お姉ちゃん♡」
……はいお開き~~~~!
パーティー会場を後にして、栞と家路に着く。
「ねえお兄ちゃん……今夜はせいなる夜だね」
「今なんか聖なるの聖の字が違う字に感じたんだけど……」
「え~~~なんでわかったの?」
「おい!」
「えへへへへへ、お兄ちゃんと二人きりのクリスマスイブ」
「は? ちょ、ちょっと待て、父さんと母さんは? クリスマス家族でって」
「え? クリスマスは明日だよ、だから明日帰ってくるって」
「いやいやいやいや、普通家族でクリスマスってイブの夜じゃないの?」
「毎年25日でしょ? うちのクリスマスって」
「そういえば……プレゼントも25日に貰ってた……母さんいい加減だから、いやむしろそこはいい加減じゃないのか?」
「どうだろ? ただサンタとかめんどくさいって小さい頃から言われてたけどね~~」
「めんどくさいって……そうか……今日はいないんだ」
「うん、だから今夜は性なる夜に」
「しません! はっきり文字にするな!」
「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
「えーーが長いよ!」
「だってええええ付き合って初めてのクリスマスイブだよ? 今日やらなくていつやる? 今でしょ?」
「それもう古いから、本人さえ言ってないから、あと今日はやるって言うな!」
「でもでも、私とお兄ちゃんのイチャイチャってやっぱり物凄く久しぶりだと思うの、それにもうただのイチャイチャだと飽きちゃってブクマも付かないし、ここは一つ盛大に!」
「いや、そう言うメタ発言が一番付かない理由な気が、いやいやいやいや、しないから」
「ぶううううううううう」
「ブーイングしても駄目です」
「じゃあ、イチャイチャもしない?」
「イチャイチャって…………まあ……それくらいなら」
「クリスマスイチャイチャしようねお兄ちゃん」
「なんだよクリスマスイチャイチャって」
「えーーーケーキ食べてえ、チキン食べてえ、プレゼント交換してえ、二人でイチャイチャって」
「え? プレゼント?」
「うん!」
「あ、ご、ごめん……俺準備してない」
「大丈夫大丈夫、お兄ちゃんでいいから」
「は?」
「お兄ちゃんが私にとって一番のプレゼント~~~~♪」
「おい!」
「そして私のプレゼントは、わ、た、し」
「いらん!」
「えーーーーーーーーひどいいいい」
「酷くない、なんだびっくりした、プレゼント用意してたかと……」
「はい! お兄ちゃん」
「え!」
栞はそう言って持っていたバックからマフラーを取り出し俺の首にフワッと掛ける……ええええええ!
「これ……栞が編んだのか?」
「うん!」
「いつの間に?」
「お兄ちゃんが美智瑠ちゃんとイチャイチャしてる間に」
「くっ……イチャイチャしてないけど、えっと、あ、ありがとう」
マフラーにsiori♡oniicyanって書いてある……何故お兄ちゃん?
「えへへへ」
「ごめん……俺プレゼントは」
「だからお兄ちゃんで!」
「いやいや…………そうだな……じゃあ、出来る限りで今日は栞の言う事を聞くよ」
「!」
「いや出来る限りだからな、変な事は駄目だぞ!」
BANされちゃうからな!
「うん! えへへへへへへへ」
今夜は栞と二人でクリスマスイブ……そして明日は父さんと母さんが帰ってくる。なんかいいな……家族って……いいな……これが幸せなんだろうな……
夕方になってだいぶ冷え込んで来た。でも首もとが暖かい、マフラーの暖かさ以上の何か感じる……言うのは恥ずかしいけど、栞の愛情なんだろうか? 嬉しそうに、楽しそうに歩く栞、俺の隣にいるときはいつもそうだ。
そこにあって当たり前、そこに居て当たり前になっているこの日常、こういう特別な日には逆に感じる……無くなったらって事を……
俺は栞の手を取ると自分の手と一緒にコートのポケットに入れた。
栞はちょっとびっくりして俺を見ると、満面な蕩けるような笑顔になる。
この暖かさ、栞がくれた暖かさを少しでも返そうと、そして失いたくない……失わないようにと……栞の手をコートのポケットの中でしっかりと握った。
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