妹に突然告白されたんだが妹と付き合ってどうするんだ?

新名天生

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58-3 生徒会活動再び

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「駄目だ絶対に何か良いことをするんだ!」

「嫌! クリスマスは楽しみたいの!」

「皆の笑顔が見られれば楽しいだろ!」

「そんなの楽しくない!!」

「君がそんなに身勝手な人だとは思わなかった」

「美智瑠ちゃんがそんなに外面を気にする人だと思わなかった」

「我が儘!」

「偽善者!」

「バーーカ」

「バカっていった方がバカなんですううう、バーーカ」



 生徒会によるクリスマス企画は暗礁に乗り上げていた。

 なぜなら会議の度に、栞と美智瑠がこんな風に言い争いを始めるからだ。

 もうずっとこんな感じが続いている。
 最初は止めてたんだけど、また直ぐに言い争いが始まるので、最近は止めない事にして好きなだけ言わせている。
 
 最終的にどちらかが折れるのを期待しているが、両者とも全く折れない、毎度同じ事の繰り返し。
 
 なまじ頭が良い二人、もう出るわ出るわお互いの欠点が……両者ともに看破出来ないので、最終的に子供の喧嘩になる。
 
 ちなみにセシリーは家庭の事情でお休み、麻紗美はまた意識を失っている……何か問題があるといつもこれだ。
 そう言えば先生どこ行った?


「お兄ちゃん~~美智瑠ちゃんがああああ」

「うわ矛先こっちに来た」

「裕! まさか君も内輪だけでなんて思って無いだろうな!」

「あーーーー、まあそっちの方が」

「なんだって!」

「お兄ちゃん!」
 美智瑠の目が怒気を孕んだ怒りの目に変わり、栞の目がハートに変わる。
 いやアニメじゃ無いんだから本当にハートになった分けじゃないけど……

「会長はどうなんですか?」

「え? 私? まあ私はどっちでも」
 すっかり牙を抜かれた獣になってしまった会長、ああ、あの頃の会長が懐かしい。

「ほらーー、だから多数決で決めようって言ったじゃない」

「だ、駄目だ、多数決は数の暴力だ! 暴力反対!」

「そんな事ないよ、私がこうしたいって思ったら殆どの皆賛成してくれるし」

「き、君はそうだろうな! でも僕は反対なんだ!」
  美智瑠はとにかく頑なに外でのイベントをやりたいと言っている。
 一体なんなんだろうか? 俺はその事をストレートに聞いてみた。

「美智瑠、何でそんなにイベントをやりたいんだ? 何かあるのか?」

「そ、それは……」

「言ってくれない皆協力出来ないぞ?」
 俺がそう言うと美智瑠は俺を見つめ、そして一度目を伏せてから思いの丈を述べ始めた。

「裕……僕ね……カッコつけているって言われるかも知れないけど、やっぱり何か人の為になる事をしたいんだ。せっかくこういう立場になって、最初にやる事がそんな自分達の欲だけでなんて……世の中には恵まれていない人が沢山いる。だからそんな人の為に、特に……そんな可哀想な子供達の為に何かしたいって……偽善だって言われるかも知れないけど僕は……」

 俺はそれを聞いて少し美智瑠の事を見直した、日頃は残念な所が多いけど、美智瑠はとにかく真っ直ぐなんだ。日頃はそれが空回りしているけど……

 俺は栞を見る。栞が首を縦に振れば決まりだ。
 他のメンバーもどちらでも良いという考えだ。栞が折れれば美智瑠の案で決まり、後はどこで何をするかを決めるだけ。

 栞は俺を見つめると、栞は目で俺に『分かったよお兄ちゃん』って言ってきた。多分……


「うん、分かったよ美智瑠ちゃん」
 そうか、やはり栞が折れたか。

「栞君」
 美智瑠の表情がパッと明るくなった。ようやく分かってくれたのかと言っているかのように……しかしその後の栞の言葉に俺たちは耳を疑った。


「美智瑠ちゃんは、やっぱり……バカなんだね」

「ーーは?」

「うん、バカで偽善者。人の為に善い事をする者と書いて偽善者。情けは人の為ならずって言葉知ってる?」

「な、な、何を……」

「知ってる?」

「君は何か、困ってる人に情けをかけるなって事か! 君の兄さん、裕はいつだって困ってる人を助けてるじゃないか、それは……裕を批判しているって事でもあるんだぞ!」

「はあ……だから美智瑠ちゃんはバカだって言ってるの。国語の成績が私より低いのはそのせいだね」

「え?」
 美智瑠は学年トップクラスだが、唯一国語の成績があまり良くない。そう言えば前に子供の頃から外で遊ぶのが好きで、家で本を読んだりはしなかったって言ってたっけ?

「情けは人の為ならず、情けは自分の為にやるって言う意味。誰かの為にとか、何か見返りが欲しくてって言うのは偽善って事。お兄ちゃんの凄い所は困ってる人を助けるけど、それは人の為じゃない……ましてや見返りが欲しいわけじゃない。自分の為なの、そんな姿を見るのが嫌だから」

「そんな……ぼ、僕だって」

「美智瑠ちゃんは立場になったからとか、困ってる人の為にとか、それはお兄ちゃんとは違う。お兄ちゃんは目を背ける自分が嫌なの、だから自分の為に人を助けるの」

「ぼ、僕は……」
 美智瑠は下を向く、栞に何か言いたい。でも言えないもどかしさの為か拳を強く握りしめていた。

「あのね、私クリスマスだからとかお正月だからとかって好きになれない。確かにその時は嬉しいけど、365日でたった1日しか来てくれない、優しくしてくれないサンタさんなんて私は嫌。364日良い子にしてないとプレゼントをあげないなんて……残酷だよ」

「そ、それは……」

「夏に生徒会でボランティアをやったよね? あの時協力してくれた子達の一部はボランティア期間が終わった後も幼稚園に行って手伝いとかしてるの。それは将来幼稚園の先生を目指してるからで、皆自分の為にやってるんだよ。美智瑠ちゃんもボランティア行ってくれたよね? あれから何かした?」

「……」

「私も行って無いから人の事は言えない、偽善って言って何もしないっていうのも違う、確かに人の為にって言うのは悪い事じゃない、それを否定する事はしない、でもね……私が美智瑠ちゃんに言いたい事は一つだけ」

 栞は美智瑠を見つめている、美智瑠は顔を上げ栞を見つめ返す。

「美智瑠ちゃん、人を可哀想って思った瞬間それは人を差別する事だよ、可哀想って思った瞬間に人を下に見ているって事だよ、私は……美智瑠ちゃんにそんな人間になってほしく……ないな」
 美智瑠を見つめニッコリ笑う栞……

「……」

 美智瑠は栞から目を反らした。真っ直ぐな美智瑠がその真っ直ぐな栞の言葉から……目を反らした……美智瑠は何も言い返せなかった。

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